魔眼《リトside》
真っ暗な視界には何も映らない。でも匂いでわかる。ずっと昔からそばにあった魔力の匂いなら。
「リト!」
「おとう、さま」
焦ってるんだろうな、心配してくれてるんだろう。
でもそれは僕のことなのかな、僕の目だけじゃないのかなとさっき囁いて消えた悪魔のような存在の言葉がチクチクと胸を刺す。
「坊ちゃん…ごめんなさい、ごめんなさいっ」
「ユミル、は悪くないよ」
近くで泣いているんだろうユミルだろう人の手を握っていうけど、手がぬるりと滑る。血だなとどこか他人事のような思いで考えて。
「光の魔法を使える者をすぐに!」
「バサールハ様それが彼らは魔物発生した場所に援護に向かっていて…」
「リトは光魔法でしか治療魔法が効かないのだぞ!?」
悲痛な叫びを聞いて、ああ、僕の目はもうだめなんだとやっぱり他人事のように受け入れる。治らないんだ。もう。
治療魔法は時間が経ったものには作用しない、ラインがあってそれを越えたものはどんな小さな傷も治らない。
遠くにいる人達、その人達に転移が使えない限り、もう僕の目は終わったも同然だ。
でも僕は痛みの中、ぼんやりとサーレの言葉を思い出した。
『約束して』
約束した、僕らは友達になるって、何かあったら───周りの人にどうしようもできないことが出来たら呼ぶって。
約束した。
手の甲に咲く、美しい花がその証なのだと、もう見えなくなってしまったけれど。
彼女は言った。
思い浮かべてと。
サーレ。
まだ出会ったばかりの子。綺麗な銀髪に女神の瞳を持つ選ばれた子。僕と同じで違う子。
どんなに人に紛れても彼女の魔力は埋もれない、強い強い光を持つ彼女。
「さー、れ」
彼女はどこまで知ってたんだろう。
ユミルのことも知ってたのかな。僕がこんな目にあうのは知っていたのかな。
「サーレ」
「リト?」
お父様の訝しげな声が聞こえても、僕は今度こそ大きな声で呼んだ。
「サーレ! 僕はここにいる!」
届け。
届け。
サーレ、もし君が僕が…僕達がこんな目にあうことを知っていたとしても僕は君が言っていた言葉を覚えている。
僕を守るためでもあるといった。
襲ってきたあの不気味な存在は僕だけじゃなくなると言っていた。
それは誰だ?
僕と同じ特別な目を持つ子供? それともこの場所に集まっている貴族達?
分かることは僕と同じ目に遭う人がいるかもしれないこと。
敵は、人を操れること。
人の魔力を見れば見つけられること。
僕の目があれば────犯人を捕まえることが出来る。
ユミルを傷つけた。僕の目を穢れたものだと言った。
僕だってそう思う、こんな目要らないって。ずっとそう思って生きてきた、これからもそう思うんだって思ってた。
でも違う、違うんだ。
僕にはこの目がいるんだ。ユミルをサーレをジークを……お父様を守るために。
だから、約束を果たしてよ。証の花。彼女を僕の元へ案内して。
僕はやらなきゃいけないことがあるんだ!




