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願うのは笑顔  作者:
第1章 第2節【瞳の価値】
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魔眼を持って生まれた《リトside》


 僕の目は、普通ではない。

 

 そう気づかせたというより、教えてくれたのはお母様だった。

 

 「リト、魔力が見えているでしょう?」

 

 まだ言葉がやっとまともに話せる程度の頃だったと思う。屋敷にやってきた商人の周りが赤黒くドロドロしたもので渦巻いていたのを見てしまい、僕は泣き叫んだ。

 

 僕の周りにいる人は綺麗な色と香りを(まと)っていたから、あまりの差に化物だと叫びかけた口を塞がれ、それが魔力なのだとお母様の言葉で知った。

 そしてそれがほかの人には見えることが無いものだと教えられた。

 

 ────魔眼。そう呼ばれる目はこの国でも他所の国でも知られている限り僕とお母様しかいないのだという。

 

 お母様は濃い紫の眼で、僕は薄い紫の目。お母様の家は紫の目は神に選ばれた証なのだと告げられ、その目を生まれさせるために家族同士で結婚したりもしていたらしい。

 

 よくは分からないけど、お母様は遠い国から一人で逃げてきて、お父様に出会ったのだと聞いた。

 

 僕の目には魔力が形となり、香りとなり見える。動揺すれば、それは魔力を揺らし、僕に全てをさらけ出す。

 

 ……外が怖かった。

 

 屋敷の中は綺麗な空気でいっぱいなのに外に出たらおぞましい程沢山の色と香りと感情が混ざりあっていて吐き気がした。

 

 新しい魔眼保持者として陛下に謁見(えっけん)した時も吐き気で一言も喋れなかった。

 

 怖かった、感情が、魔力が、人が、世界が。

 

 どうしてこんなに気持ち悪いのに周りの人は笑っているの?

 

 「リト、人は汚いだけじゃないのよ」

 

 お母様は僕に部屋にこもり続けるのは許さなかった。外に出して良い人とも悪い人とも関わらせた。

 

 「見たくないと思っても、見えてしまうの…ならそれと付き合っていくしかないでしょう、リト」


 綺麗な紺の髪がサラサラと風に踊って僕と同じ紫の目が遠くを見る。

 

 その目が僕は嫌いだった。

 僕が嫌いな場所に連れていくお母様が嫌いだった。

 

 魔力なんて見たくなかった、感情なんて知りたくなかった、ほかの人には見えないものを見させる自分の目が嫌いで憎くて、いっそ見えなくなればいいと目にナイフを刺そうとして止められたこともあった。

 

 

 僕は僕が嫌いだった。

 お母様と喧嘩する度、自分を傷つけようとする度、お父様に叱られた。

 

 お父様には分からないんだ。

 

 こんなに気持ち悪いものがいる世界がどれだけ恐ろしいか。

 

 だからお母様の肩を持つんだ。

 

 外なんて行きたくない、人となんて関わりたくない、僕はずっと部屋にいたい。

 

 ずっとそうやって逃げたかった。

 

 

 

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