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願うのは笑顔  作者:
第1章 第2節【瞳の価値】
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はじまり、はじまり


 「なんなの?これ」

 リトが不思議そうに手の甲に咲いた花を見る。

 

 「私の作った魔法、私のことを強く思い浮かべながら呼べば発動するようになってるから絶対忘れないでね?」

 「ふーん?」

 「わかった」

 

 リトは間の抜けた返事を返して、ジークはすぐに頷いた。

 

 なに間抜けな返事してるのよ?と思い咎めようとリトを見れば…リトは花が咲いた方の手を反対の手でぎゅっと握っていた。

 

 「…どうしたの?痛かった?」

 「痛くない、けど」

 「ならなに?」

 「……やっぱり何でもない」

 はっきりしない返事に少しムッとすればジークに頭を撫でられ宥められる。あー相変わらずうちの婚約者は最高です。

 

 とまあ、そんなこんなで。

 メイドが、私たちを呼びに来るまでグダグダと過ごし、パーティーが始まる前に軽食を取ることになっているのでお母様たちの元へと戻ることとなった。

 

 目的は済んだからね。

 私は大人しく従う。

 

 だけど、私は知っているから。リトを最後にチラリと見る。

 

 宰相に並んで歩くリトは少しつまらなそうで、私の視線に気づくと意地悪な顔で手を振ってきた。

 

 私も振り返して、お母様達についていく。

 

 その最中に頭でもう一度思い返す。

 

 

 リトが実行犯と出会うシーンの話を。

 

 リトが目を無くした原因と出くわすのはパーティーが始まる前。

 丁度軽食のタイミングだろうと私は予想している。

 

 そのタイミングでの目撃。攻撃され怪我を負う。宰相はリトを治そうと手を尽くすがパーティーが始まってしまい、陛下が向かってくる。

 王族の身を守るために中止にすべきだとつげに行こうとしたタイミングでリトの意識が戻り宰相は最愛の妻が残した忘れ形見から離れることが出来なかった。

 

 そして視界が暗くなり見えなくなる。

 リトを使用人に任せ慌てて彼が会場に行くと事態は最悪な方向へと転がっていく…つまり、王子襲撃だ。

 

 宰相は王によって光の魔法を使える者を連れてこいと告げられる、自分の子も助けたいというのに、彼はその命令に従うことしか出来ない。

 

 王族の命を守らねばならない。守るために最良を選ぶのが宰相だ。

 

 彼はそうして私を見つける。なぜ分かったか、それはリトが教えたのかもしれないし、違うのかもしれない。

 私が女神の瞳を持つから光魔法を使えると踏んだのかもしれない。

 

 分からないが、私は苦虫を噛み潰したような気持ちでジークの手を強く握る。

 

 

 歯がゆい。

 

 私はリトが襲われることを知っているのに、それを教えない。

 ジークを守るためにあまり物語を書き換えたくないんだ。そんな理由で、友達になろうと伝えたら嬉しそうに笑う彼を危険に晒す。

 

 痛いだろう。怖いだろう。

 

 その未来を知っている。

 

 リトの苦しみも悲しみも。

 

 それでもなお、私は口を閉じている。

 

 なんて情けない。

 

 なんて馬鹿らしい。

 

 でも、それでも私は何も言わない。

 

 ……リト、忘れないで、約束を。

 

 その証の花が貴方を守るから。

 

 

 

 

 

 

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