リトと私とジーク 下
「俺が忌み子じゃない…そう言ってくれるのはマーシャル家とうちの親父だけだと思ってた」
「そうかい? でも考えれば気づく者もいると思うけどね? 凝り固まった頭の人は受け入れられないだろうけど」
気にすることないよと何でもないようにくすくす笑うリトにリトがリトで良かったと思う。
リトとジークは歳が近い、リトをうまく守りきればジークの初めての男友達になってくれるだろうと確信できる。
「ね、リト…貴方はその目で魔力を見れる、それはどれくらい確実?」
唐突な私の質問にリトは首を傾げると目を細める。
「一人一人魔力の形や色や匂いは違う、見間違うことはないとはっきり言えるよ」
「色?」
「属性とかかな?それの割合が人によって変わるのさ、風と水の属性持ちでも風の方が勝ってたり水の方が勝ってたり、本人が気付かないだけで少しだけ土を持ってたり…力にならなくても属性をいくつか持っている人は珍しくないよ、逆に一つの属性しか持ってない人の方が珍しい」
つまり、リトは魔力を見ればどれだけ変装してても分かるし、見間違えず、なおかつ属性が分かる。
───思わず唖然とした。
「感情が揺らげば顔に出なくても魔力は揺らぐ、僕は生まれた時からその世界を見てきたからね」
困ったように笑う顔にふと頭をよぎるのはリトの母親だ。
リトの目は母親譲り、なら、彼女もその力を持っていたのか。ならその死は───いや、止めておこう。今はそっちじゃない。
「リト、私とお友達になる気は無い?」
「友達?」
「ジークともよ」
ぱちぱちと瞬きをして嬉しそうに目を細めた。
「気持ち悪くないのかい?僕の目が」
「素晴らしい目だわ」
「人の感情すら当てられるんだよ?」
「私にはその力がいるのよ、ジークを守るために」
ジークを守るという台詞にジークが反応する。どういうことなんだと目で問いかけてくるのをスルーしてリトを見る。
「そして、リト…この誘いは貴方を守るためでもあるの」
「……最初から思っていたけど君の魔力は本当に素直で凄まじいね」
荒々しい嵐のような。そして凪いだ海風のようなそんな魔力だよ、と告げてから複雑そうな目を伏せたリトを、しばらく待つ。
やがて神秘的な薄紫色の目がジークを見た。
「ジーク、君は? 僕と友達になってくれるのかい?」
「…………それがサーレの願いなら」
「君自身の感情を聞いているんだよ、ジーク」
戸惑う赤い目が私じゃなくリトに向けられる。そして深く息をつく。
「お前は変なやつだな」
「君も大概だよ、この子を良く娶る気になるよね」
「どういう意味だ?」
「こっちが喰われそうになるっていみさ、それほどまでに彼女の力は凄まじい」
子供らしくない会話に本当にこの二人は子供なのだろうかと首をかしげたくなった。
「面白いことを言うなお前」
「宰相の息子をお前と呼べる君も大概面白いと思うよ…ジーク」
「似たもの同士ということか、リト」
おや、なにか通じ合えたみたいだ。明らかに距離の近くなったふたりを見て思わず私は笑顔を浮かべる。
「よかった、ところで二人共ちょっと私と約束してくれない?」
約束?と首を傾げる正反対なのに似ている二人に私は真剣な目を向けた。




