リトと私とジーク 上
私が静かになったからか、お父様と宰相が何やら仕事の話をし始める。
そこからそろりと後ずさり、離れていけば、私の手を握るジークも一緒についてきて、なぜだかリトも面白そうについてくる。
「サーレ?」
お母様の驚いた顔を見て思いっきり笑って誤魔化しながら今度こそ走り出す。
「ごめんなさい! まだ見たいところがあるの!」
お母様がいつも怒れば私はすぐにそのことをやめた。きっとお母様は今回もそうだと思っていたんだろう。
だからこそ私から少し目を離していた。
私の声に宰相とお父様も私を見て…というより宰相はリトをお父様は私を見て目を見開く。
「リト?」
「お父様、少し遊んできます」
「サーレ!ジーク!」
「後でねお父様!」
「行ってきます」
大人達が私達に呆れたような、けれど温かな視線を向けてくる気がして、擽ったく、そして後ろめたい気持ちになった。
それでも必要なことだから。
この薄紫の目を持つ子供を、私は絶対守るんだ。
魔力を見る力。それでリトは実行犯を見る。
私はジークを守るためにリトを守る。ジークを守るためにこの国の王子を守る。
私は自分の力を使うことを悪いとは思わない。この女神の目はその為に持って生まれたのだと思いたいから。
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走り去ると、楽しそうなリトの笑い声が聞こえる。
「みた?あのお父様の驚いた顔!」
悪戯っ子のような笑い声にたしかに面白い顔してたわねと私も笑う。元々リトの母親とは年の差婚だったからシワの目立つ宰相の目が思い切り見開かれた顔は、思い出してみるとしてやったりの気持ちにはなる。
でも意外にもリトがそれを面白がっているのが何より面白かった。
「で?今度は何するの?」
笑う私たちと困惑顔のジークに周りの人は唖然としている。
珍しい色ばっかだもんね。
薄紫に、赤色に、女神の色って言われている緑色。
特別な子と言われる私たちと忌み子と言われるジークがいるのはとても変に見えるだろう。
まぁ注目しても、攻撃してこないのならどうだっていい事だけど。
「リトでいいかしら?」
「もちろんいいよ、サーレ」
「そう、こっちは私の婚約者であるジークよ」
誇らしげに繋いだ手をあげて見せればジークをリトは少し見てまた楽しそうに笑った。
「面白い魔力だね」
「面白い?」
ジークが思わずといったように口にして、すぐに口を閉じる。聞きたいんだろうけどまたキャロリアンナの時のようになるのを避けようとしているのだろう。
「リトは魔力を見れるのよ」
「ジークは知らないのか、そう、僕は魔力をはっきりと見ることが出来るんだよ、だから君が忌み子じゃないってことも分かるのさ」
ジークはその言葉を聞いて、珍しく目を見開き、数回瞬きをした。
「忌み子じゃない?」
「そうさ、忌み子ってのは神に背く子の事だろう? 君の魔力はむしろ普通の人よりも神に近い、女神の目のそばに居るからかな?」
リトにはどんな風にジークが見えているのか少し気になったが、たしかにリトからは悪い感情は感じられない。純粋に面白がっているみたいだ。




