月夜に浮かぶ緑の目《???side》
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夜の空を翔ける者がいる。大きな狼のような形をしたそれ。
月の光がその姿を闇の中に浮かび上がらせる。美しく月光を反射させる黒い毛並み、鋭さを含む目は緑。口は大きな牙が覗く。
それは、ただ一つを願う。
会いたいと、たったひとつの存在に。長い時をさまよい、それでもなお、忘れたことの無かった存在。
それが“産まれた”時の喜びは言い表せないものだった。普段山の中にこもっていたと言うのに、産まれた“感覚”がした途端に山を駆け下り、その存在を探した。
小さな、けれど、大きな存在。探して探して探して。それでも見つからなかった存在。それがやっと居場所が分かった。
産まれてから八年もたってしまったと自分を恥じ、けれど会えることが喜ばしい。ああ、早く。早く会いたい。
あの子は気づいてくれるだろうか。長い間君を探していたと告げたら思い出してくれるだろうか。
長い、長い時間がかかった。それでも諦めなかった、あの子が私の全てだ。私が生まれた理由だ。
はやく。
はやく。
「私の名を呼んで。」
そうすれば君の元にもっと早く行けるのに。私の足がもっと早ければ傍にもっと早く行けるのに。
ああ、愛しい子。
君の名を私に聞かせて欲しい。君の名を覚えたい、その為なら何だってしよう。
君がもう悲しまなくていいように人間を滅ぼしたっていい。君がもう苦しむことのないようずっと側にいよう。
だから、報われない“愛”は忘れて。あの場所に帰ろう。あの場所なら君が傷つくことは無いんだから。
あの方が君を守ってくれる。私と共に君を探してくれていたあの方が、君の帰りをずっと待っている。
はやく、はやく。
君の側に行きたい。
また人間に傷つけられてないかな。
また人間のせいで泣いてないかな。
傷つけられていたなら私がそれらを滅ぼそう。泣いていたならその甘美な涙を舐めとってその寂しさを悲しみを私で埋めてしまおう。
「…はやく」
君の側に。
行かなくては。




