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願うのは笑顔  作者:
第1章 第1節【変わりゆくもの】
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響く悲鳴と倒れる王子


 

 場は混乱していた。王族が揃うこの場では安全策として結界まで張られていた。にも関わらず結界は破られた。なによりこの闇は闇魔法によるものだと本能で知る。

 

 

 闇、それは(かつ)て人と関わったことで命を落とした女神の(つかさど)る属性の一つであった。本来あったその役目が狂い、人を狂わす魔法になってしまったそれは人の恐怖の対象になる。

 

 

 その上、闇の中で聞こえた悲鳴だ。会場全体を覆ってしまうような魔力を持つものがこの場を襲おうとしている。それだけで身の毛も弥立(よだ)つ。だが、王族がいる中、出ていくことは許されない。

 

 

 犯人と疑われる為でもあり、なにより貴族は王族を盾となり守るべきとされるからだ。

 

 いつまで続くか分らない深い闇。それを晴らしたのは一人の少女の声だった。

 

 

 「お父様っ、お母様っ…どこ…!」

 

 泣き声と共にその声に呼応するように光が浮かび始める。淡い緑を帯びた光が少女から広がってゆき…会場の闇が晴れた。

 

 「サーレ!」

 父親に抱きしめられその少女は泣きじゃくる。他の子供たちも泣き始め、そしてそれは陛下と臣下の声で収まる。

 

 「グラン!」

 「グランシアノ殿下!」

 

 彼らが慌てて駆け寄るそこには肩を押さえ、浅く息をする…先ほど陛下の近くに立っていた男児だった。

 

 「ぅ、あ」

 

 じわじわと何かによって切られた肩から黒い染みが広がっていく。誰もが慌て、ふためき、陛下がそこで顔を上げた。

 

 「光を…先程闇を払った光を使った者、私の元へ!」

 

 その言葉に誰もがざわめき固まる。当然だろう。光魔法は珍しいもので、貴族であっても使える訳では無い。女児が使ったものだと誰もわからないのだ。

 

 

 誰もが光魔法の持ち主を探そうとする中もグランシアノはくぐもった悲鳴を上げて、痛みに耐えていた。

 

 「っ早くしろ!」

 「へ、陛下今回の参加者に光魔法が使えるものはおりません…」

 「いたはずだろう! ならば、先程の光の出処はどこだというのだ! 宮廷魔法師を連れてこい! テリシサス他近衛騎士は私達の護衛を…グランは私が抱えてゆく」

 

 グッタリとしたグランシアノを抱き上げて陛下が急ぎ足にその場を離れる。その後を他の王族達も追って行く。

 その中にはレヴェルの姿もあった。

 混乱する会場で宰相が声を上げる。

 

 「皆のものは此処で待機せよ!」


 犯人もわからない会場は騒がしく、そして恐怖が場を包む。

 

 光魔法を無意識に使った彼女や他の子供たちだけがわからず困惑し、その両親は揃って顔を青くした。

 

 「お父様…どうしたの?」

 

 心配そうに彼女に問いかけられ父親である男は震える妻と分かっていない娘を抱きしめる。

 

 「二人は私が守るから…大丈夫だ。」

 

 そんな父親を見て彼女が声を掛けようとした時──三人の前に一人のシワの目立つ初老の男が立っていた。その男とはこの会場から出ないようにと告げた宰相だった。

 

 「マーシェル伯爵家当主レルム・ヴァド・マーシェル。並びにターニャ夫人と娘のサーレ。陛下がお呼びだ。」

 

 

 不安に晒されたレルムとターニャはその声にゆっくりと頷き、サーレの手を取ったまま宰相の後に続いた──。

 

 

 それが、グランシアノ王子の事件で、神緑の巫女姫というゲームの始まりだった。

 

 

 

 

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