木の上のお姫様は
キャロリアンナ・クワイン・ライリー。ライリー侯爵家の次女でレヴェルの兄であるグランシアノ王子の婚約者である。
はちみつ色の髪はふわふわで、深い青色の目はちょっとつり目で可愛らしく。そして、何より特出するのは。
魔力の多さと、才能と、ドジっ子であること。
そう、彼女は天才だった。幼いころから魔法式を見れる魔眼を使いこなし、類まれなる魔量を生かして研究を続ける。
彼女が研究を始めたのは七歳の頃、そして彼女が転移魔法を成功させたのは──九歳の頃である。
一言加えるなら、彼女はヒロインの二つ上であり。
まどろっこしい事抜きで言うなら、現在彼女は転移魔法を研究しているはずなのだ。
そんな彼女がここにいる。しかも木の上で下着丸出しで。本当ならグランシアノの元へ転移するはずだった彼女が。
「あ…うぁ」
可愛らしい深い青の目から涙がポロポロとこぼれ落ち、白い頬は真っ赤に染め上がる。恥ずかしさに思わず顔を隠してしまう彼女はきっと忘れてる。
「っきゃあ!」
自分が木の枝に“しがみついていた”ことを。
「“風よ、包め!”」
慌てて簡潔詠唱をする。想像を魔力で補ったせいでゴッソリと魔力を抜かれた感覚と疲労がくる。
ふわりと、速度を落とし、キャロリアンナは地面に座り込む。顔は真っ青できょろきょろと周りを見回して見慣れない場所だとわかると顔を真っ白にさせる。
「な、なんてこと。」
「大丈夫ですか…?」
挙動不審な彼女に恐る恐る声をかければ青い目が私を射抜き、潤み、崩壊した。
「ここどこぉおおおお!」
うあーん!と泣きじゃくるキャロリアンナを宥めようとしてあわあわしてればジークがお母様を伴って戻ってくる。
天の助けだ!とばかりにお母様に事情を説明し巻き込んだ。…これで不敬罪とかにはならない…よね?
「これは…キャロリアンナ様?」
「うっ…ひっく…その声はターニャ様ですの?」
決壊してしまった涙を止めようとごしごし目を擦り始めたキャロリアンナにハンカチを差し出して宥める。
「はい、ターニャですわ。 キャロリアンナ様は何故ここに…」
「…部屋で転移魔法の実験をしていたんですの。なにか目標をたてようと思いましてシアン王子の事を思い浮かべたはずですのに…何故かこんな場所で…あられもない姿で木の上に…っ」
思い出したのか余計に涙を浮かべる彼女にあっと思う。確かグランシアノの容姿は薄い銀に近い金髪に深緑の目だったはず。私の容姿と良く似ていて魔力の質も似てた気がするのよね。
もしかして、誤作動起こしたのって私が王都の近くに来たから? 転移範囲内に私が木の下にきたことで入って、丁度のタイミングで転移魔法の実験しちゃったキャロリアンナが、こっちに来ちゃったってこと?
ジークがいたから、私はここに来たわけで。つまり、シナリオと別になってしまったのは私のせいだから…。
…このことは墓場まで持っていこうと思います。私からいうことではないから。うん、別になんか罪に問われそうだから嫌とか…そんなんじゃないから。
とりあえず…なんかごめんなさい。




