野盗と遭遇
私は今、頭を抱えている。お父様は遠くを見ている、それは現実逃避ですか?お父様。
お母様は楽しげに馬車の外を見ていて、ジークは隣に今いません。
それというのも今馬車の外では───。
「ざけんじゃねぇ! くたばりやがれ!」
「くっそ! 後はずらかるだけだったのによぉ!」
「きゃああ!」
「レピーを離してくれええ!」
“問題発生中”です。
何故こうなったんだ。 途中まではお尻が痛いものの優雅な旅路だったでしょ!? なんで今日に限って通る山道で馬車が野盗に襲われてるの!? 確かに野盗よりも馬車が怖いって思ったけどもさ…。
まさか両方出てくるなんて神様の試練なんですか…いや、馬車は長距離を乗らなければ怖くないんだけどね。
そして、それを目撃した私とお母様は困惑、お父様は外を気にしつつもお母様と私を守ろうとしてくれているらしく馬車から降りることはしなかった。なんだなんだと野次馬の如く窓の外を見たら頭を抱えたくなったのだ。ちらりと再び外の様子を窺えば…
「さぁ! 次!」
「クソ親父! 戻ってこいって言ってんだよ!」
「ひっ、筆頭私達が相手しますから! 筆頭が相手したら野盗が死にますって!」
「筆頭おおおお、剣を収めてくださいいい!」
「レルム様ァァ! 筆頭を止めてくださいい!」
未だに混沌してました。そう。家の戦闘狂な筆頭騎士が先頭切って人質がいる中に切り込んで行ったことが全ての始まりでした。
「お父様」
「…なんだい」
「アルを止めてきてください」
「…はあ」
お父様は嫌そうにため息をこぼして馬車から降りる。もちろん腰には剣を差しているし、私も細身で短い剣を腰につけておく。万が一この馬車が襲われたりしたとき用だ。お母様を守れるのは私しかいなくなるから。
というか、アルってちゃんと騎士の仕事してるのかな? 鍛えているイメージしかないんだけど。
お母様が頬を赤らめはじめたので窓の外をちらりと窺う。お父様が斬りかかってくる野盗に手加減しながらねじ伏せて興奮しているアルの足を引っ掛けて転ばせる。
「っ!?」
「興奮してんな、アホ」
私とお母様と関わることのない冷たいお父様の表情。なるほど、これはかっこいい。隣を見ればお母様が小さくきゃーきゃーと言っていた。良かったですね、お母様…。
「レルム、様…痛いです」
「殴られたいのかお前」
お父様が深いため息を零して現状確認後に声を上げる。
「レックは私の補佐。ニースは人質持ち以外の対処。モリスは馬車に残っている人達の護衛を、アルは手伝う気がないのならターニャとサーレと馬車に乗っていろ。ジークは馬車に戻ってサーレといなさい」
「はい」
「分かりました!レルム様」
「では行ってきますね!」
「…っ俺も戦います」
「分かった。サーレといる」
きりきりと指示を出しているお父様はレックとアルを伴って女性を人質にしている野盗に向かって歩き始めた。




