ジーク・ルーテン・モナール
「息子に…してくれ」
ジークはアルの言葉に私の手を強く握り返して目を伏せて言う。長い睫毛まで震えていて、可哀想になってくるけど…私の手をとる覚悟をしてくれたことは喜ばしい。
「俺は強さしか興味無いぞ」
「…強く、なる」
「きっときついぞ、それでもか」
「サーレと…居れるなら、居させてくれるなら…何だって…!」
アルの問いかけに答えて最後は大きくのめり出してジークは答える。お母様はそんな二人を見て微笑んでいてお父様はこの世の終わりのように顔を青くしていた。
「なら、私から言うことはございません。思い合う同士婚約も許します」
「た、ターニャ!」
「レルム?あなたもしっかりしてください。あなたはサーレが自分で相手を選べないような不出来な娘だと仰りたいの?」
ニッコリと婚約を阻止しようとするお父様をお母様は窘めて丸まってしまったその背中を優しく撫で始めた。
「サーレもあと一週間で六歳ですわ。婚約者がいて早すぎるという年齢でもないのですし。少し落ち着いてあちらで話しましょうレルム。」
「あ、ああ…サーレが…サーレが」
ダメージ大きそうですね、お父様。ごめんなさい、前世からの想い人なんですジークは。
お母様がドアをメイドに開けてもらいお父様を支えて部屋から出ようして、一時停止した。そして私の方へ首を向けて口パクでメッセージとウインクを頂く。美人のウインク…さすがお母様あざといです。
にしても…“頑張ってね”って、お母様。
思わず涙が出そうになる。ありがとう、ありがとうございますお母様。ジークと私の背中を押してくれて。人からの視線を恐れる私たちを守る選択をしてくれて。
「じゃあ、ジーク、君の名前は今日からジーク・ルーテン・モナール。子爵家アルヴァルド・ルーテン・モナールの息子だ」
「…ああ」
「強くなることを怠ればいつでも俺はお前との縁を切り、モナールの名を名乗らせることも許さなければお嬢様との結婚も許さない。心しておけ」
アルは私に見せないような怖い顔でジークに告げてドアを開けて出ていく。最後に私の顔を一目見て深く礼をして「では、お嬢様。息子をよろしくお願いしますね」と軽く微笑んで去っていく。
…アルって脳筋の割に私に優しいわよね。強さが好きって感じなのに何でかしら。
「サーレ」
ふとジークに名を呼ばれて隣に目をやる。そしたら赤い目が私を見つめていてとても真剣さを帯びさせていた。私はその目に微笑み返す。
「なーに」
「俺、つよく…なるから」
「うん」
「だから、そばに居たい」
「うん!私もいてほしい!」
にっこり笑ってジークに抱きつく。大好き、絶対に私が守るからね。独りになんてさせないよ。




