試験始まる
眩い閃光が終わり、地面に足を付けている事だけは感触で分かった。
「う……………まったく、眩しかった……………は?」
ゆっくりと目を開けると、そこは何処かの街だった。
大きなビルが立ち並んでおり、俺たち受験生は巨大なスクランブル交差点の中心に茫然と立っていた。だが、400人いたはずだが、ここにいるのはせいぜい50人ほどだ。
「ここは、どこだ?」
「私たちも分かりません。どうやら周りを見渡す限り、皆さんも混乱しているようですね。」
横を見ると、ミツレと氷華、そして流風がいた。良かった、離れ離れにはならなかったようだ。
突然、見たこともない所に飛ばされた受験生達は混乱し、騒ぎ出す者や怒り散らす者など様々だ。
「あ! 見て! あそこのモニターにあのおじさんがいる!」
氷華が指差した一際大きなビルに付いているモニターに俺は視線が映る。
氷華が指差すとほぼ同時に、受験生達の視線はモニターに映る須防に釘付けになる。
「レディースアーンド、ジェントルメェン!! 荒っぽい事をしたことをここで謝罪しておこう。だが、これも試験のうちの一つだと思ってくれ。」
須防の甲高い声が街に響く。モニター越しと言えども、特徴的な声だな。
「ゴホンッ!! 今から君たちには模擬演習を行ってもらう。まずは、君たちの視界の右上にある体力バーを確認してくれたまえ。」
ザワザワとしている受験生を咳払いで掻き消した須防は、自身の右目を押さえる仕草を取る。
「体力バー……………? これか!」
俺の視界の右上に、一本の緑色の線がある事を確認できた。
これは、瑠紫達と東京神対策局で演習をした時にも見たやつとほぼ同じだ。つまり、ここは現実ではない仮想空間というやつか?
「ふむ、特に問題はないようなので次の話に行こう! 君たちには、この仮想街にいる敵を倒してもらう。その敵はもしかしたら君たちの中には見た事がある子がいるかもしれないね。」
仮想街と言う事は、やはりここは現実ではないという事で間違いなさそうだ。
「この試験のルールを説明するために、君たちにはドレスアップをしてもらおうかな。」
モニターの中にいる須防は、指パッチンをする。すると、俺を含めてこの場にいる受験生約50人は姿が一瞬にして変わる。
「この姿は……………! 俺は、契約起動とは言ってないはずだぞ!?」
そう、俺たち受験生は一瞬にして契約起動後の姿に変貌したのだ。
「こんな事ができるなんて………………」
ミツレも首を傾げている。そりゃそうだ、普通は契約起動は本人の意思がないとできないはずだからだ。
「よーし! 全員ドレスアップはできたみたいだね。では、ルール説明といこうか!」
須防がそう言うと、視界いっぱいにマップのようなものが表示される。
「これが、今君たちがいる仮想街のマップだ。400人の受験生を50人ずつに分けて、街の隅に配置させてもらったよ。」
どうやら仮想街は、思っていたよりも広いらしく、円状のマップの端々に青色の点が八つある。
そして、点滅している点が俺たちがいる場所なのだろう。
「まぁ、ルールは至極簡単だ。もう少ししたら現れる敵を倒すだけ! そして、敵には様々な種類があって倒すのが難しい敵ほどポイントが高い!」
確かに、シンプルでバカでも分かりそうなルールだな。だが、どうやって合否を決めるんだ?
「制限時間は1時間! その間にたくさんポイントを稼ぐのみ! そして、上位200名までが次の試験に行けるよ!」
「は、はぁ!? 上位200名!? それって半分じゃねーか!」
「初っ端から、ここまで人数を切るとは思いませんでしたね……………」
おいおい、半分の人が1時間後には不合格って厳しすぎないか?
………………いや、やるしかないんだ。俺は、神高に入学して一刻も早く神を殺す術を学ばなくてはならないんだ!
「ではでは! さぁ、始めようか! 今からよ〜い、スタァート!!」
モニターの画面は真っ暗になる。それと同時に、空一面に魔法陣のようなものが展開される。その中央には模と描かれている。
「始まったか……………!」
そして、その魔法陣からはリザードやフロッグ、更には全身をローブで覆って顔が見えない人のようなのも降臨する。
「行きましょう、神崎さん。まさか、震えてるんですか?」
周りにいた受験生達は、風に煽られた埃のように様々な場所に散って行く。
「まさか! 武者震いってやつだよ! さぁ、行こう!!」
神高に入学してから俺の復讐の物語は始まるんだ。こんなところで躓いてたまるかよ!




