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日常の大切さは終わった時に気づくもの  作者: KINOKO
第4章 国立神対策高等学校
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神高受験 前日譚

 七聖剣保持者の定例会議、そして世界一の刑務所 極獄刑務所に収監されている千葉神対策局の一人でもあり七聖剣保持者でもある神吸影時との出会いから、1ヶ月ほど経ち、明日はいよいよ一月二十五日、そう神校の受験日である。

 その間、俺たち受験組は外出はしなかった。午前中は勉強、そして午後からは坂田や先輩達が稽古をつけてくれた。 

 そういえば、氷華が凄かったんだっけ? 確か、あれはクリスマス少し前の事だったっけ………………………





―――――――時は少し遡り、十二月二十日、氷華が初めて契約起動した場面に移り変わる。


「そういえば、氷華はまだ契約起動した事がなかったな。千葉神対策局にも二台しかないが仮想現実カプセルがある。試しに、そこで契約起動してみたらどうだ?」


 俺たち四人が、大広間で勉強していると坂田が顔を出した。そういえば、氷華が契約起動したのは見たことないな。昨日から、坂田達が戦闘訓練してくれてるけども、氷華は見学だけで、俺とミツレ、流風しかしていない。


「私ですか? んー、そうですねぇ………………………」


 氷華は、ペンを止めて右手を顎に触れる。どうやら、少し悩んでいるようだ。まぁ、契約起動は戦うためのものだから怖いことは十分分かる。


「氷華、してみたらどう? 仮想現実だから痛みもないから大丈夫。」


 悩んでいる氷華に、流風が優しい声で話しかける。俺には、こんな優しい声で話しかけてくれないんだよなコイツは………………………


「流風がそう言うなら……………… 坂田さん、私やってみます!」


「そう言うと思ってたぞ。準備はできている、こっちだ。お前達も休憩がてら少し来い。」


 俺たち四人は、坂田の後ろをついて行く。例のカプセルは地下室にある。地下室といってもそんなに大きくはなく、正方形の一辺5メートルほどのこの小さな部屋だ。 

 地下室は、ガラスで二分されており、ガラスの向こう側にカプセルがある。そして、こちら側には横幅1メートルほどの大きなテレビが壁に掛けられている。そのテレビを通じて、仮想現実の映像を見る事ができると言うわけだ。


「よし、氷華はそこのカプセルに入ってくれ。そして、()()()()と悠真達みたいに唱えてくれ。とりあえず、リザードを三体ほど出しておこう。」


「わ、分かりました……………………」


 氷華は、緊張しているのか少しビクビクしながらカプセルの中に入る。


「氷華、大丈夫でしょうか………………」


 ミツレは心配している。まあ、無理もないな。俺も、正直な話やらなくても良いのでは?と思ってしまう。

 だが、氷華は神校を目指しているのだから、いずれしなければならない事でもある。


「氷華は、私たちが思うよりも遥かに可能性に満ち溢れている。あの子のソウルの量は凄いから。」


 流風は、氷華の事を信じているのか、その瞳は自信に満ち溢れている。


「ソウルの量? ミツレは、相手がどれぐらいソウルを持っているのか分かるんじゃなかったのか?」


「いえ、神崎さん、私が得意なことは魔力を感知する事です。契約起動していない人間からは魔力はゼロなので私には氷華がどれぐらいの力を持っているのかは分からないのです。」


 なるほど、ミツレは魔力探知は得意だが、ソウルを探知するのは苦手なのか。

 そういえば、坂田もソウルと魔力は似て非なる物って言ってたな。確か、ソウルが器で魔力は液体とか言ってたような………………


「そう、ミツレは魔力探知は一級だけども、流風の方がソウル探知は得意。今、氷華の力をネタバラシするのは面白くないから言わないけど、契約起動した氷華を見たらビックリするはず。」


 ミツレは、流風から得意と言われて少しむすっとしている。それにしても、氷華の力はどれほどなのか?


「シンクロっ!!」


 地下室に、氷華の声が響く。どうやら、仮想現実に飛んだらしい。テレビ画面に、氷華の姿が写っている。ステージは、シンプルな海上だ。障害物も何もない。


「どうやら、無事に転送できたようだな。よし、氷華! とりあえず契約起動してみろ! そうしないと、お前がどんな契約魔力を持っているのかや、魔力量が分からないからな。」


 ガラスの向こう側にいる坂田は、マイクに向かって氷華に言う。どうやら、あそこから仮想現実にいる氷華に声が聞こえるらしい。


「分かりました! 契約起動!」


 氷華は、眩しい光に一瞬包み込まれ、契約起動した姿があらわになる。

 契約起動した氷華の見た目は、まるで魔女のようで、黒色の膝下のワンピースを着て、硬そうな茶色のブーツを履いている。

 そして、魔女と言えばの先が尖って折り曲がっている黒い帽子を被っている。


「ん!? な、なんですか! この魔力は!」


「だから言ったでしょ、あの子は()()()()()()()()()。」


「コイツは、驚いたな………………」


 ミツレと、坂田は目をまん丸にして驚いている。そして、流風はドヤ顔で氷華を見ている。

 

 それにしても、俺は二人が何に対してこんなに驚いているのかが分からない。


「キャアアアアアアア!!」


 地下室に再び氷華の声が響く。だが、今回の声は悲鳴だ。


「落ち着け、氷華! お前ならできる!」

 

 召喚されたリザードが氷華に向かって襲いかかる。その距離、実に3メートルほど。坂田の声は氷華には届いていないのか、氷華の腰はガクガクと震えている。

 

「こ、来ないでぇぇ!!」


 氷華は、腰をガクガクと震わせながら、嗚咽混じりの声で叫ぶ。


「え」


「は」


「だから、言ったでしょ? ()()()()()()()()()()()()()って。」


 半泣きになって氷華は、リザードに向かって右手を向ける。

 すると、氷華の前方は凍りついたのだ。だが、驚いたのはそれが理由では無い。()()が大きすぎるのだ。

 仮想現実のほぼ全面が凍りつき、一瞬にしてリザードは消える。


「この魔力は下手したら()()()()()()()()()ですよ!? こんな人間がいたなんて信じられません…………………………」


 ミツレは、氷華に向かって指を指しているが、その指はカタカタと震えている。だが、無理もない。


「あ、ああ。魔力感知やソウル感知が苦手な俺でも分かる。これは、強すぎるだろ!?」


「それにしても驚いたな。魔力量だけで言ったら瑠紫よりも多いぞ。」


 坂田は、カプセルの中から氷華を出して、こちら側に戻ってきていた。氷華は、頬を少し赤らめて照れている。


「でも、私、まだこの力をコントロールできてないんだよね。さっきも、無我夢中でやったから…………………」


 どうやら、強力な攻撃を繰り出すことはできるが、まだコントロールはできないらしい。

 だが、これは充分に強すぎる武器と言っても過言ではない。


「いや、大丈夫だよ。俺だって、まだ自分の契約魔力の事をよくわからないからさ。一緒に強くなろうぜ?」


 心配している様子の氷華に俺は手を差し伸べる。


「悠真君……………… うん! そうだね!」


 氷華は、ニコッと笑うと俺と握手をする。やっぱり、俺は女耐性が弱いのか少しニヤッとしてしまう。


「鼻の下伸ばして気持ち悪いです、神崎さん。」


「ああ、それはミツレに同感。」


 ミツレと流風は、俺をまるで汚物のようかのように見てくる。おいおい! それは、酷すぎるだろ!


「ま、まぁまぁ二人とも落ち着いて。」


 氷華が、必死になだめるがミツレと流風は俺を変な目で見てたままだ。




――――――――――そして、時は加速して現代に戻る。

 お風呂から上がった俺は、大広間でボーッと外を眺めていた。

 明日は、いよいよ神高の受験だ。絶対に合格して、神を殺す力を身につけてやる……………!


「神崎さん、何を外をボーッと眺めてるんですか? まるで、物語の主人公みたいで少し気持ち悪いです。」


「おわっ!? ミツレ!? ビックリしたぁ………………」


 ミツレは、外を眺めている俺の耳元で囁く。だから、俺は女耐性が低いからドキッとするんだよ。


「明日は、朝早いです。湯冷めする前に早く寝ましょう。」


 髪を拭きながらミツレは部屋に向かう。少し濡れた髪は艶があり、妙に色気がある。


「そうだな、もう寝よう。」


 ミツレの隣に俺は小走りで移動して、上の階にある部屋に戻る。


「じゃ、神崎さん。おやすみなさい。明日はお互い頑張りましょう!」


「ミツレ!」


 部屋に入ろうとした、ミツレを俺は呼び止める。ミツレは、キョトンとしている。


「ど、どうしたんですか? ビックリしました。」


 ミツレはビックリしたのか、胸元を撫で下ろす。


「いや、そのなんて言うか……………」


 俺は、なぜミツレを呼び止めたのだ? いや、言うんだろ俺!


「その、ありがとうな! 俺は、お前がいなかったらここまで来れなかった。感謝しきれないよ。」


 今、俺はどんな顔をしているだろうか。絶対に見たくないぐらい酷い顔をしているだろう。


「ふふふ、かしこまってたから何を言われるのかと思ったらそんな事ですか。私だって、神崎さんに感謝しているのですから、そんな事言わなくても良いですよ。では、おやすみなさい。」


 ミツレは、俺に向かってニコッと静かに笑うと、部屋に姿を消す。


「よし、俺も寝るか。明日は頑張るぞ!」


 俺は、部屋に入ってすぐに布団に直行する。明日は、神高受験、俺の人生の大きな分かれ目の一つでもあるんだ。絶対に、合格してやるぞ!



 この時の神崎悠真は気付いていなかった。神高の受験がどのようなものなのかを、そして、四頂家の恐ろしさを…………………


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