世界一の刑務所 極獄刑務所
「さ、坂田さん!? 今から刑務所に行くんですか?」
なんか、このままだと行く理由を知らないままになりそうなので、俺は聞いてみた。
すると、坂田はタバコの灰を灰皿に落として、俺のほうに振り向く。
「ああ、それも世界中から極悪な犯罪者が集まる刑務所だ。そこに、用がある。」
坂田の顔は、どことなく暗い顔だった。
「なんで、そんなとこに行くんですか?」
坂田は、チラッと運転手の方を見て、再び俺の方を見る。
「それは、着いたから話そう。ほら、もう見えてきたぞ。」
どうやら、運転手には聞かれたくない話のようだ。そして、俺たちを乗せたタクシーは錆びれた港に着いた。
「私が案内できるのはここまでです。」
運転手の顔色は悪く、俺たちにまるで早く降りてくれと言わんばかりの表情をしている。
「ああ、ありがとう。支払いはカードで頼む。」
そう言うと、坂田は財布からブラックカードを取り出して、タクシー代を支払う。
坂田がタクシーを降りたので、俺も後に続きサッと降りる。
「あのー、坂田さん、刑務所ってどこですか………………」
俺たちが着いたのは、人っ子一人いない錆びれた港。港と言ってもそれは過去のことのようで、船は一隻も無く人の気配を感じない。
「ここで間違いない。俺は、少し前にも来たからな。」
坂田は、蹲み込んで地面を触っている。まるで、何かを探しているようだ。
「よし、あった。悠真、こっちだ。」
俺は、坂田から手招きされたので坂田が蹲み込んでいる場所に行く。
「これは………………」
そこにあったのは、マンホールのようなものだった。だが、中央には長方形の溝があり、何かをはめる為に出来ているものみたいだ。
「ここに、これをはめると……………ほら、来るぞ。」
「ええ!? ちょっ!? 地面が揺れてる!?」
坂田が、紫色の金属製のカードのようなものを、マンホールのようなものにはめると、地面が揺れ始めた。
「よし、来たぞ。」
「な、なんじゃこりゃあ〜!?」
俺の目の前に広がる海の中から、幅が5メートルほどある道が迫り上がってきたのだ。
そして、その道は海底に続いており、周りの海水はまるでモーセが海を割った時のような状態になっている。
「ついて来い。早く行かないと閉まってしまうからな。」
ポカーンとしている俺を置いて、坂田は歩みを進める。
「は、はい!」
俺は、坂田の後を追う。そして、海底に続く坂道に足を進めた。
十分ほど歩くと、何やら扉のようなものが見えた。そして、それと同時に海底に着いたらしく、坂道から平坦な道に変わっていた。
「坂田です。神吸との面会に来ました。」
坂田は、扉に付いているインターホンのようなものに語りかける。
「お待ちしておりました。扉を開けますので、開きましたら速やかにお入りください。」
機械音声が返ってくると、扉が勢いよく開かれる。
「悠真、早く入れ。20秒以内に入らないと海水が迫ってくるからな。」
「え!? マジですか!? 今、行きます!」
先に扉の向こう側に行った坂田が、恐ろしい事を言ったので小走りで坂田の方に行く。
俺が入った瞬間に、扉は勢いよく閉まり、海水が元通りになる音が響いた。
「おお、お待ちしておりましたぞ坂田殿。」
刑務所の中に入ると、坂田の隣に誰かいる。白い研究服のようなものを見に纏い、髪の毛は無く、スキンヘッドの男がいた。そして、何よりもつぎはぎだらけの顔がとても目立つ。
「所長、少し前にも訪ねたのにすいません。」
「いえいえ、大丈夫ですぞ。」
つぎはぎだらけの男はニヤリと笑う。口元が裂けており、笑うと顔がしわくちゃになる。
「おや、そちらの青年は?」
俺と目があった男は、坂田に尋ねる。
「彼の名前は、神崎悠真です。神によって両親を失い、行き場を無くしていたので私が保護しました。そして、今は神高に向けて受験対策をしています。」
俺が言う事を坂田が全部言ってくれたので、俺は無言で頷く。それを見た所長は、俺のほうに歩み寄る。
「よろしくお願いしますね、神崎殿。私の名前は、裂田 獣鄒、世界中から集められた極悪人が収監される世界一の刑務所 極獄刑務所の所長をやらせてもらっています。以後、お見知り置きを。」
裂田が握手を求めてきたので俺は握手をする。ヒンヤリとした手は、まるで生者ではないかのようだ。
「では、行きましょうか、神吸君の元に。」
「はい、よろしく頼みます。」
裂田が先頭を歩き、その後ろに俺と坂田が横一列になって歩く。
「では、エレベーターにお乗りください。」
胸ポケットから金色のカードを取り出した裂田は、エレベーターの横についている読み取る機械にカードをスラッシュさせる。
すると、エレベーターの電気が付いて、稼働し始める。どうやら、このカードが無いとエレベーターを使うことはできないようだ。
「神吸君は、ここの刑務所でもトップクラスの重罪人ですね。なんせ、あの四頂家の四川家の当主の腕を斬り落としたのですから。」
エレベーターに全員乗ったのを確認すると、裂田がポツリと言葉を放った。四頂家の当主の腕を斬り落とした!? とんでもない奴と会おうとしてるんじゃ……………………
ん? 今、四川家って言ったような………………発音は若干違うけど、死川さんと一緒の名前だ。
「…………………………所長、時間が無いので急いでもらってよろしいでしょうか?」
坂田の雰囲気が一変した。この雰囲気はツクヨミの時と似ている。
「ッ…………………!? これはこれは失礼しました。では、犯罪レベルが最も高い囚人が収監されている、最下層の十五階層に向かいましょう。」
一瞬にして変わった坂田の雰囲気を察知したのか、裂田は指を震わせながら地下十五階層のボタンを押す。
それにしても、海の中にある刑務所なんて聞いた事ないな。そんなとこの海底よりもさらに深い地下に収監されるのんて脱獄は不可能だろうな。
エレベーターは音を立てることもなく無音で地下に進む。この無音がどことなく不気味だ。そして、エレベーターの扉がゆっくりと開かれた。
「私はエレベーターの前で待っております。面談時間は十分です。」
裂田は、エレベーターの開くボタンを押して俺たちを先に下ろすとそう言った。それに対して坂田は、無言で一礼するとコンクリート打ちっぱなしの無機質な空間に足を進める。
両脇に部屋のようなものが敷き詰められている。だが、外側からは何も見えず音も聞こえない。そして、各部屋の入り口前には、がたいの良い刑務所の職員が仁王立ちで立っている。
坂田は、一番奥の部屋の前に足を止めると、そこに立っていた職員に、海を割る前に、マンホールのようなものにかざしていたカードを渡す。
「面談時間は十分です。会話は録音、撮影しますが問題ありませんか?」
カードを渡された職員は、坂田と俺の顔をじっくりと見る。
「ああ、大丈夫だ。それと、これをヤツに渡しても問題ないか?」
坂田はそう言うと、手に持っていた鞄の中から茶色い紙袋を取り出して、職員に渡す。
「確認します。これは、ハンバーガーですか? であれば、特に問題はないです。」
紙袋の中から、ハンバーガーが包まれている包装紙を四つ取り出した職員は坂田を見る。
「そうか、よかった。では、入ってもいいか?」
「はい、中にいる職員の隣に椅子を二つ用意させています。そちらにおかけになってください。」
そう言うと、職員は扉に付いているスイッチをカチリと押す。すると、頑丈そうな扉がゆっくりと開く。
「行くぞ、悠真。気を強く持てよ。」
それだけ言うと、坂田は紙袋を片手に部屋に入っていく。そして、俺もその後に続いて部屋に入る。
「へ〜、その子が新しい仲間デスカ? 坂田サン。」
部屋に入った瞬間、強化ガラスの向こう側にいる椅子に座っている男から指で刺された。
男の髪は真っ白で、それに伴い肌も雪のように白い。片目が隠れた髪型なので両眼は見えないが、片眼は血のように真っ赤だ。
なんだ? こいつからは神と似たような雰囲気を感じる………………………
実は、このキャラクターは連載する前から考えていたんですよね。
私のお気に入りのキャラクターがついに本編に出れて嬉しいです。
下手くそなのでアドバイスお願いします!




