マザーの真実
「な、何が起こってるんだ…………………? エキドナはどうして自分からわざと攻撃をくらうような真似をしたんだ?」
ミツレと流風は背中から倒れて宙を見ているエキドナに駆け寄る。危険だ! 近寄るな!と言いたいところだが、言ったところで二人は聞かないだろうし、エキドナのあの澄んだ目は嘘ではない。奴にも心境の変化があったのか?
「イテテテ…………… 俺もアイツらのとこに行かなくてはな。」
俺は痛みで軋む体を起こして、腰から日本刀を鞘ごと引き抜いて杖のようにしてミツレたちの方へ歩く。
幸いにもエキドナが倒れた位置はここからそんなに遠くないので後少しで着く。
「マザー! どうしてわざと攻撃を食らったんですか? あなたは私たちを殺すつもりではなかったのですか?」
ミツレはエキドナの肩を持ち起き上がらせる。切断された腕の断面をエキドナは押さえながら、ゆっくりと口を開く。
「…………………解放してあげたかった。」
そう言ったエキドナの口調は震えていた。痛みでなのかそれとも悲しみのせいなのか震えている。
「どう言う事? マザー!」
流風がエキドナの肩を両手で掴む。しかし、エキドナは喋らない。
「ゆっくりはしていられない。離れて……………作業に移る…………」
エキドナの離れてと言った静かだが迫力あるオーラのせいで俺らはエキドナから二歩下がる。
「我が心の臓を一つ犠牲にして…………………」
そう言うとエキドナは自分の右腕を思いっきり胸に突き刺す。そして、ゆっくりと右腕を引き抜くとそこにはドクドクと激しく波打つ心臓が出てくる。
「な、何してるんですか!? 」
ミツレの忠告をエキドナは無視して、プルプルと震える手で手のひらに乗った心臓に力を込める。
「神の位を放棄する!!」
そう叫ぶとエキドナは右手で自分の心臓を潰す。グチャァだと言う肉塊が潰れたような、ハンバーグの挽肉を思いっきり潰したような音が響き渡る。
自らの心臓を潰したエキドナの顔色は悪い。
「マザー!? 一体どうしたの!? 神の力を失ったらその傷は再生できないんだよ!?」
流風はエキドナに再び駆け寄り、胸元の傷口に自分のチャイナ服の布を噛み切り当てる。
「これで、神の連中はしばらくは私を追尾することはできない。ハァハァ………………… やっと本当の事を言えるわ。いや、まだ先にやらなくては………………」
そう言うとエキドナは傷口を抑えてくれてた流風の手をそっと離し、今度は立ち上がる。その足取りはおぼつかない。
「まだ、私はやらなくてはならない。ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」
エキドナはもう一度傷口に右手を突っ込む。そして、グチャグチャと泥沼を探るように傷口に右手を入れる。
「マザー!! もうやめてください!」
「そうだよ! 何でこんな事するの!? 意味がわからない!」
ミツレと流風の声に聞く耳も持たず、エキドナは先ほどと同じように二つ目の心臓を取り出す。そう言えば神には三つの命があると言われていたが、心臓の事だったのか。心臓が命の個数を表していると言うことか。
「我が心の臓を一つ犠牲にして、全ての命にもう一度命の息吹を!!」
そう言うとエキドナは激しく吐血する。無理もない、今のエキドナの体は妖獣と一緒で再生することができないのだ。胸にポッカリと大穴が開いていて平然にできるのは神だけだ。
「どういう事ですか? マザーはどうしたんですか!!」
ミツレは半端怒りながら、マザーの肩を揺さぶる。すると、エキドナは墜落したヘリの方を指差す。
「ゴホッ!………………今まで私が奪った命を全て復活させる。もちろん、傷つけた命もね。」
指差されたヘリの方向に一つの光の筋が天から降っている。一つだけでない、青色の巨人がいた場所には三つの光の筋が、そして更に向こう側には肉片となってしまった日本帝国軍の人たちのところにいくつもの光の筋が降っている。
「あれはなんだ!? ええ!? 俺の体も光ってる!?」
「流風の体もだ!」
「わ、私もです!」
俺とミツレ、そして流風の3人も天から降ってきた光の筋に触れていて体がほのかに光っている。
「あなた達も傷つけたからね。勿論、回復するわ。殺してしまった命を復活させるにはあと2時間ほどかかるけども、待っていれば万全の状態で復活するわ。」
「一体どうしてですか!? ついさっきまでマザーは敵でした! なのに、自らの命を犠牲にしてまで人間や妖獣を助けた! 何故ですか!?」
ミツレが取り乱すのも分かる。エキドナは攻撃をわざと喰らうと、次に自らの命を二つも犠牲にして敵であるはずの妖獣と人間を助けた。訳がわからない。
「確かに今は訳がわかないかもしれない。でも、これだけは言わせて私はキュウビ、いやミツレ! あなたを助けようとしているの。」
エキドナは二回も胸に突き刺して真っ赤になった右手をミツレの肩に置く。
「私を助けるため……………? ますます意味が分かりません!」
「あなたを救うにはあなたから私に向けられる憎しみの力が必要不可欠だったの。」
憎しみ……………? つまり、エキドナはミツレを何かから救うために気が遠くなるほど長い間、敵にわざとなっていたということか?
ミツレを救うためだけに母親としては絶対にしたくない嫌われ役を……………!!
「憎しみ? まさか私を何かから救うためにずっとですか!? どうして………………!」
ミツレはポツリポツリと涙を流す。
「なんであなたが泣くのよ。それよりも早くするわよ。今からミツレにする事は……………………え?」
エキドナが何かを言おうとした瞬間、エキドナの胸を光線のようなものが貫く。それと同時にエキドナの心臓が破裂する音が聞こえた。
「ったく、手間取らせんなや、ギリシャの裏切り者。」
エキドナを貫いた声の主の方を振り返る。20メートル先に立っているその男は歪だった。何故、歪なのかと言うと顔が犬なのだ。真っ黒なドーベルマンのような細長い顔立ちの犬顔だ。
小麦色の肌をしており、上裸で腰にはギラギラとした装飾品を巻き付けたタオルのような物を身につけている。
アイツはなんなんだ!?
下手くそです!
アドバイスお願いします!!




