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日常の大切さは終わった時に気づくもの  作者: KINOKO
第3章 母なる者
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二人の覚悟とあと残り

「やっと、戦いの目になったわね二人とも! いいわ、私も本気で行く。」


エキドナはそう言うと、さっきまでは一つしか出していなかった紫の炎で出来た大鎌をもう一つ生み出し、両手に一本ずつ構える。

さらに、エキドナの周りには自らが作り出した陽炎が宙を舞う。


「これがエキドナの本気…………………!」


ミツレの手足は小刻みに震えている。そりゃそうだ、距離が離れている俺でも全身の震えが止まらない。距離が近い流風とミツレが震えないはずがない。


「はっ! ミツレ、ビビってるの? エキドナはここで討つ。それが流風達に出来る最善のこと。ミツレでもそれは分かるだろ?」


そう言う流風だったが、流風も身体の身震いが止まらない。手足がガクガク震えている。


「…………………まさか、武者震いってやつですよ。流風! ここからが本番です。行きますよっ!!」


「仕方ないな! この借りはでかいよ!!」


そう言うとミツレは身体の周りに陽炎を浮かべさせ、エキドナに突っ込む。

流風はミツレに向かって次々と飛んでくるエキドナの陽炎を風牙で打ち消し後方支援に徹する。


「孤児院で混ぜるな危険と言われた二人がここまでの連携を見せるとはね。それでこそ倒しがいがあるってものね! でも、まだ()()()()!」


エキドナは自らに攻撃を仕掛けようとするミツレを陽炎で足止めしつつ、後方支援として陽炎を打ち消している流風を攻撃しようとしているが、ミツレはその隙を与えない。


「「今! ここで! 決着をつける!」」


ミツレと流風は同時にそう叫ぶと、攻撃の勢いをあげる。エキドナとミツレの距離がドンドン縮まる。


「ハアアアアアアアアアアアアア!!」


エキドナも負けじと陽炎の本数を増やして、更に速度も上げる。だが、ミツレの勢いを止める事は出来ない。距離が更に縮む。


「…………………ッ! これで終わりです! ハアアアアア!!」


エキドナの紫色の陽炎の嵐から生まれた一瞬の隙間、そこ目掛けてミツレは陽炎を放つ。放たれた陽炎は流風の風を纏い、速さと威力が上がる。

勢いよく放たれた陽炎はエキドナの右肩を貫通し、右肩より下の腕がボトリと落ちる。


「アアアアアアアアアアア!? まだ……………足りない…………」


エキドナは絶叫すると右肩を押さえながら膝から崩れ落ちる。ドクドクと鮮血が勢いよく右肩から溢れる。地に落ちた右腕をエキドナは拾おうと、フラフラした足取りで落ちている場所に向かう。


「…………………霊炎 火柱。」


ミツレがエキドナが拾おうとした右腕を火柱で完全に破壊する。火柱が完全に消えた後に残ったのは何もない。

エキドナはあと少しで手に入れるはずだった自分の腕があった場所に、また膝から崩れ落ちる。


「最後に言い残す事はありますか?」


ミツレは膝から崩れ落ちで動かなくて下を俯いているエキドナに歩み寄る。その手には陽炎が握られている。


「ミツレ……………… それ以上話したら流風とミツレが悲しくなるのは分かってるだろ? もう………………」


ミツレの肩は小刻みに震え、今にも泣きそうだ。ミツレにそう言った流風の声音も震えている。

そりゃそうだ、今からミツレと流風は育ての親を自らの手で殺めようとしているのだ。その正体が神だったとしても親を殺めるなんて口で言っても不可能だ。


「分かってますよ! でも! 私には()()()を殺すなんて出来ません!」


さっきまでマザーとは言わずにエキドナと言っていてミツレだったが、遂にマザーに戻ってしまった。やはり親を殺すなんて無理な話なんだ……………


「ミツレ…………! 流風だって()()()を殺したくなんてない! 」


流風もエキドナ呼びからマザーに戻ってしまう。流風もミツレと同じようで育ての親を自らの手で殺めるなんて出来ないようだ。


「だ、大丈夫か君たち!?」


震えるミツレと流風の上空に軍隊のヘリコプターがやってきた。どうやら俺たちを助けに来たらしい。

だが、この状態で救援に来たのは最悪だ………………! ミツレと流風はプレッシャーのせいか、声が震えているのか声が上手く出せない。


「クソっ!! おい! 操縦士さん! ダメだ! 今来たらアンタも殺される! 早く逃げてくれ!!」


俺は身体中が痛くて立ち上がる事も出来ないが、体の奥底から声を振り絞って叫ぶ。だが、ヘリコプターのプロペラから発する轟音と操縦士の俺たちに対する呼びかけで俺の叫び声はかき消される。


「このヘリコプターには僕一人しかいないが今から助ける! さぁ、ロープを下ろすから一人ずつ捕まってくれ!」


どうやらヘリコプターには操縦士一人しか乗っておらず、機体からロープが下された。

今まで黙っていたエキドナだったが、ヘリコプターに左手を向ける。


「甘い…………! その甘さが自らや仲間を滅ぼす事を知らずに! 呪炎 陽炎!!」


エキドナが叫んだ時にはもう遅かった。それに気づいたミツレと流風は二人同時にエキドナを封じ込めようと近距離で攻撃を仕掛けるが、ミツレはエキドナの尻尾で橋の左脇の柱に吹き飛ばされ、流風は左手で首を掴まれ、ミツレとは逆の橋の右脇の柱に激しく打ち付けられる。


二人が吹き飛ばされた瞬間に、エキドナは数十本の陽炎をヘリコプターに向けて放つ。


「うわあああああああああ!? 熱い熱い熱い熱い熱いいいいい!!」


上空で炎上したヘリコプターから操縦士の断末魔がほんの一瞬だけ聞こえたが、あっという間にヘリコプターは地面に墜落する。俺が膝立ちしている位置から少し放たれたとこにあるヘリコプターは激しく燃え上がっている。


「嘘だろ…………………」


ヘリコプターを操縦していた男は無事ではないだろう。半壊した燃え盛るヘリコプターに乗っていて無事な人間なんていない。


「九尾と白虎が私を殺しておけば、あの男は死なずに済んだ。お前たち二人が! 命のやりとりの時にさえ慈悲の心をかけたあまりにあの男は死んだ! あの男を殺したのはお前たちと言っても過言ではない!」


エキドナが言っている事は無茶苦茶だ。だが、育ての親を自らの手で殺すか殺さないかで深く悩み、プレッシャーをかけられていた二人に対して、この言葉は深く心に突き刺さる。


「私のせいで…………………… また関係の無い人が死んでしまった…………」


「やだ……………… そんな嘘だ…………… 流風のせいで………………」


二人はゆるりと立ち上がるが、足腰がガタガタ震え、声音も激しく震えている。


「ダメだ! エキドナが言っている事は無茶苦茶だ! 操縦士さんを殺したのはエキドナだ! ミツレと流風じゃない!!」


俺が必死に叫ぶも二人には届かない。二人とも何かブツブツと言っていて震えている。


「私のせいで…………………… うわああああああああああああ!!」


ミツレの今まで一度も聞いたことのないような悲痛な叫びがあたり一帯に響き渡る。

あけましておめでとうございます! 今年も下手くそな筆者ですが、何卒宜しくお願いします!

皆さんの良い一年になりますように!

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