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日常の大切さは終わった時に気づくもの  作者: KINOKO
第3章 母なる者
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ミツレと流風

「かつて、私が育てた二人と命の奪い合いをするとは思わなかった。だが、キュウビを手に入れる為には仕方ないことね。」


二対一になってもエキドナは特に動揺することなく、紫色の炎で形成している大鎌を構える。


「ミツレ、今の流風達でマザーに勝てる確率はどのくらいだ?」


ヌンチャクをエキドナに構えた状態で、流風はミツレに問う。ミツレは陽炎を身の回りに浮かせていて、エキドナの方を見ていたが、その視線を流風に移す。


「0です。でも、これだけは癪なのですが私とあなたが手を合わせたら勝てない相手ではないです。」


ミツレは頭をポリポリと掻き、深いため息をつく。ミツレの言ったことに驚いたのか、流風はギョッとすると、


「流風とミツレが協力!? 嘘でしょ!? 孤児院で一番組み合わせてはいけないと言われてたのに!? 」


やはり、この二人は先程仲直り?したとはいえ、基本的に仲はあまり良くは無さそうだ。


「私だって嫌ですよ! あなたみたいなガサツな人と手を組むなんて!」


「はあ!? 流風だってアンタみたいな神経質ピリピリ女と手を組むなんてイヤだ!」


ミツレの言ったことに対して流風が反論する。やはりこの二人は犬猿の仲なのか? 本当にこの二人の魔力の適正が高くて、つい先程流風の魔力でミツレが回復したなんて信じられない。

こうなったら俺が加勢して少しでも戦力を上げないと……………

俺はゆっくりと立ち上がろうとする。しかし、足をガクガクとして立つが、立った瞬間に崩れ落ちる。


「クソっ、やはり俺はソウルが少ないから魔力形成が遅いな。これじゃ、戦線に復帰は出来ないな。」


東京神対策局で特訓した時にミツレや瑠紫からソウル値が低いと魔力回復や魔力形成が遅いと言ってたけど本当に俺はソウルが少ないらしいな。


「流風、マザーを止める為には私たち二人が手を合わせる事が必須条件です。」


「そうね、流風だけだったら火力が無くて、ミツレだけだったら速度が足りない。ミツレ、()()やる?」


流風がミツレの方をチラリと見る。ミツレは一瞬だけ気まずそうな顔をしたが、流風の方を見ると


()()()はマザーの元で1度だけ練習して、あまりにも息が合わなくて諦めたじゃないですか。でも、それしか方法がありませんね。」


「ま、お互い魔力回復も完全には出来てないし、今は普通に連携プレイでいくぞ。」


「そうですね。行きますよ流風っ!」


「アンタに合わせるのは癪だけど、今だけ協力してあげる!」


ミツレは身体の周囲に陽炎を浮かび上がらせ、エキドナと距離を詰める。

距離を詰めて確実に陽炎を当てさせようとするが、素早さではミツレよりエキドナの方が上だ。1個も当たらない。


「無駄よ! キュウビの攻撃じゃ私を捉える事は出来ない!」


その通りだ。エキドナは至近距離で繰り出される陽炎を蝶が舞うが如く避けている。


「確かに私一人だとマザーに当てることは出来ません。だけど、()()ならどうですか?」


ミツレはそう言うと、一旦エキドナから距離をとり、右手をエキドナの方に向ける。

そして、もう一度陽炎をエキドナに向かって放出する。だがしかし、エキドナの方がスピードは上なので当然の如くヒラリと避けられ、どんどん距離を詰められる。


「だから言ったでしょう? キュウビでは当たらないっ!!」


ミツレから放たれた残り1本の陽炎をエキドナが避けようてした、その瞬間、


「今です! 流風っ!!」


「分かった。マザー、少し大人しくなって。」


ミツレの後ろにいた流風が両手を陽炎に向ける。すると、ミツレが放った陽炎は白い風を纏い、先程とは数倍の速さでエキドナに向かう。

そして、ミツレと流風から放たれた風を纏いし陽炎はエキドナの左脇腹を貫通して消えた。


「グファ……………! くっ…………………」


風を纏った陽炎はエキドナの左脇腹にポッカリと大穴を開けたのだ。エキドナは地面に左足を着き、両手で貫通した左脇腹を抑える。


「私の火力と流風の速度で初めてマザーにまともな攻撃を与える事が出来ました。」


「マザー………………、最後にどうしてこんな事をしたのか、そして今まで孤児院を卒業した兄弟達をあんな姿にした理由を知りたい。」


流石の神でもこれ程のダメージは回復するのに時間がかかるのか、エキドナは地面に左足を着けたままだ。

ミツレと流風の問いには黙ったままで、下を俯いている。


「…………………理由? そんなの決まってるでしょ!? 私は高潔な神! アンタ達 妖獣を研究をして兵器に改造して私は出世したかった! 私はそれが理由で何年間も汚らしい妖獣界で偽りのマザーとして孤児院を運営していた!」


エキドナは左脇腹を押さえ込みながら立ち上がり、ミツレと流風を睨む。傷口が完璧とは言えないが少しずつ塞がっている。

エキドナの眼は母親としての眼ではなく、憎しみを持った獣の眼だ。


「そうですか………………… あの時、両親を失い、路頭に迷っていて周りからも忌み嫌われてた私を暖かい目で見てくれ、救ってくれたマザーはもういないのですね…………………」


拳を固め、ミツレは下を俯く。そして、その両目からはポツポツと涙が溢れ出す。


「ミツレ…………………! 悔しいのは流風だって一緒だ。」


流風は空を見上げ、無言で大粒の涙を頬に伝わせる。


「エキドナアアアアアアアア!! お前は母親じゃないのかよ! お前の事を慕ってくれて、お前から傷つけられてもなお、母親として信じてくれていた娘二人を泣かしたんだぞ!? どうしてこんな酷いことが出来るんだ!」


俺は咽び泣く二人を見て、思わず口から言葉が出てしまった。二人が泣いている様子を無言で見ていたエキドナは、こちらに一瞥をくれると、


「部外者は引っ込んでろ! 呪炎 陽炎!!」


紫色の陽炎を俺に向かって放つ。俺の脳天目掛けて放たれた1本の陽炎は外れ、俺の右頬に掠れる。右頬からはツゥっと血が滴る。


「そうですか、あなたはもうマザーではありませんか。」


「ミツレ、流風だって最後の最後まで信じてたけどダメだったようだ。」


ミツレと流風は涙を服の裾で吹くと、再びミツレは陽炎を、流風はヌンチャクをエキドナに向ける。


「最初から言ってたでしょう? 私はギリシャ神王国 エキドナ。あなた達の知るマザーはもういない。」


「ここから、あなたを一人の神として扱います。()()()()、最終決戦です!」


そう言い放ったミツレの眼は憎しみや憎悪ではなく、悲しみと悲痛な感情を浮かび上がらせていた。

章も完結が近ずいて来ました!

下手くそ作家ですので辛口アドバイス待ってます!!

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