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日常の大切さは終わった時に気づくもの  作者: KINOKO
第1章 悲劇の始まりと終わり
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狐と神

「よくも、僕の右腕を! い、痛い! ちくしょお!」


 オシリスが、もがいている。右腕があった場所を抑えている。さすがの神と言えど、腕が無くなる痛みには耐えられないらしい。


「痛いですか? でも、私達に与えた傷の方が痛いと思いますよ?」


 銀髪の少女は淡々と話している。オシリスに恨みでもあるのか、ゴミを見るような目つきでオシリスを見ている。

 いや、見ると言うよりは睨み付けているの方が正しいかもしれない。


「もしかして、お前は妖獣界の奴か!? 全員皆殺しにしたはずだ! 何故生きている!? お前だけ生き残ったのか!?」


 オシリスは、中々血が止まらない右腕を抑えながら、少女を睨む。


「皆殺し? 少し違いますね。妖獣のみんなは生きています。」


「何故だ! 僕たち神王国の神々が総動員で殺したはずだ!」


 俺は、やっと起き上がれた。全身が痛い。まだ、この状況を理解する事はできない。


「確かにあなた達は殺しました。でも、あなた達神に命が3つあるように私達、妖獣には命が2つあるんですよ。」


 オシリスは尻餅をついた。そして、小刻みに震えて少女を指差す。


「そんな……………… お前達は僕たちの奴隷のはずだ! お前達に命が2つあるだと!? 僕達が殺した時には死んだ真似でもしていたと言うのか!」


 少女は、コクリと頷く。この少女は何者なんだ? 一体、どこから来たんだ? 妖獣? 妖獣界? もう意味がわからない!


「あなた達は、奴隷である妖獣には興味が無かったのですから、気づかないのも無理はないですね。」


 オシリスは、右手の止血を終えて立ち上がる。だが、その足取りはフラフラとしている。


「お前達奴隷に騙されたなんて、許せない許せない許せないいいいいいいいいいい!!」


 オシリスが、俺の方を向く。オシリスがこっちに走ってきた。その距離は10メートルぐらいだ。


 避けようとするが、立っているだけで精一杯だ。このままだと…………


「そうはさせませんよ。」


 少女の腰までもある長い銀髪が、フワッと浮き俺の方を指差す。


「霊炎 火柱!」

 

 少女がそう唱えると、俺の前に青い炎の柱が地面から出てくる。メラメラと燃えるその炎の柱は、5メートルほどの大きさだ。


「クソ! お前ぇ! もう、許せない! 絶対にぶち殺す!」


 俺の前に出てきた炎が消えて、オシリスと少女が睨み合ってるのが見える。

「その腕でですか? あなたは、杖が無いと魔力をコントロールできないのでは?」


 オシリスは、ギリギリと歯ぎしりをする。完全に、この場は少女が支配している。


「お前、よく分かっているねぇ! でも、杖ならそこら辺に落ちてるはずだ! 時間稼ぎはリザードにやらせればいい! 見つけてからお前をぶっ殺す!」


 オシリスは、指パッチンをする。すると、ピラミッドの模様が十個出てきた。

 そこからリザードが出てきて、オシリスの周りを囲うように並ぶ。


「探す必要なんて無いですよ? ほら、私が持っていますから。」


 少女が右手には、オシリスの杖があった。オシリスの切り離された右手は、少女が左足で踏んづけている。


「ムカつく奴だ! リザード! あいつから杖を奪え!」


 リザード達が少女に一斉に向かう。オシリスは右腕が無くなったのが、だいぶ痛いらしく動いていない。


「雑魚が集まっても所詮は雑魚です。私の炎の灰となりなさい。」


 十数本の青い炎の剣が現れ、少女の身体の周りを漂っている。

「霊炎 陽炎!」


 そう言うと、十数本の青い炎の剣は、次々とリザードの体を貫通していく。一瞬にしてリザードは倒されて、次々と地面に横たわる。


「全滅だと!? リザード! 立ち上がれ!」


 しかし、リザード達は立ち上がらない。もう、壊れてしまったようだ。


「次はオシリス、あなたです。」


 少女が、オシリスに歩み寄る。青い炎の剣は、少女を守るように漂っている。


「ちくしょお! 船はまだかよ!」


 オシリスは、指パッチンをするが何も起きない。その顔は、完全に助けを仰願している敗北者だ。


「仕方ない………………!」


 オシリスは、俺の方を見ると、再び俺の方に走り出した。ヤバイ、俺の身体はボロボロだ! もう、足が動かないぞ!


「何をしているのですか? 私はあなた達を許しません、私達にした事を命で償ったくださいね?」


「お前が、早くソウルになればこんなことにはああ!!」


 少女の言葉にはオシリスは耳を貸さず、俺の方に直進する。


「醜き神を喰え! 霊炎 狐火!」


 少女は右手で狐を作り、その右手を左手で支える。すると、少女の右手は青い炎に包まれる。

 その炎は、狐の顔を形成し、オシリスに向かって放たれる。


「ガアアアアア!? 妖獣界のクソ共に、この僕が…………」


 狐の顔をした炎は、オシリスの横腹を噛みつくと、身体を真っ二つに噛みちぎる。

 そして、上半身と下半身が離れ離れになったオシリスは、地面にバタリと倒れる。


「大丈夫ですか?」

 

 俺を助けてくれた、巫女姿の少女が駆け寄る。その服装のせいか少し走りにくそうだ。

「あなたのおかげで助かりました! ありがとうございます」


 少女は、少し頰を赤く染めるが、コホンと咳をする。


「お礼は、こいつを倒してからお願いします。オシリスは、まだ戦う気です!」


 オシリスの体から、紫色の煙が出てきた。その煙は、オシリスの身体を包み込む。


「なんだ! なんか出て来たぞ!」


「予想より早いですね………………私の後ろに来てください!」


「え!? なんで!?」


 少女は、凄い形相で俺を睨む。


「いいから早く!」


 俺は、言われるがままに後ろに行く。ふと、オシリスを見ると、身体を真っ二つにされたはずなのに、身体は綺麗に回復して立ち上がっていた。無くなった右腕も元通りになっている。


「やれやれ、不意を突かれたとはいえ、神である僕の命を1つ奪うとは……………大罪だねぇ!」


 オシリスの目は血走っており、もう正気を保っていない。


「え! 死んでたんですか? 神って、再生力もあるからまだ死なないかな〜って思ってたんですが……………」


 少女の煽りに、オシリスは言葉にならないような事をブツブツと言いながら、少女を睨みつける。


「……………………杖を返せええ!! 返せ!返せ! お前をぶっ殺して奪う!」


 少女は、ハァと溜息をつき、首をゴキゴキと鳴らす。


()()ですか…………杖の無いあなたは、魔力をコントロール出来ないのですから、逆に殺されるんじゃないんですか?」


 少女はさらに煽る。その煽りにオシリスは激昂して、首元を血が出るまで掻き毟る。


「うるさい! 僕は、お前をぶっ殺す! 絶対にぶち殺す! 杖を返せええ!!」


 オシリスが、血相を変えてこっちに向かってきた。その目からは、誰が見ても分かるぐらいの殺意を感じる。


「分からない人ですね……………あ、人ではないですね、神でした。」


 さらに煽る少女に心配になったので、俺は少女の襟元をひっぱる。


「おい、さすがに大丈夫か? あれはなんかヤバそうだぞ!」


 少女は、俺の方を向く。少女の目は、清流のように青く聡明であり、勇気に満ち溢れていた。


「心配ありません、大丈夫です。あなたは、私の後ろに絶対にいてくださいね。あなたには傷1つ付けさせません。」


「あ、ああ……………」


 あれ、なんかこのセリフどっかで聞いたなと、思っているとオシリスとの距離が狭まっていた。


「霊炎 陽炎!」

 

 少女の周りから出てきた、青い炎の剣がオシリスに突き刺さる。何本かは避けられたが、五本はオシリスの腹部や肩に突き刺さる。


「ぐは! 痛え! 痛え!痛え!」


 オシリスは、痛みに耐えれないのか地面を転げ回る。


「そろそろ、終わりにしましょう………」


 少女がオシリスに近づく。まさか、殺すつもりなのか? いや、オシリスは俺達の仇だ……………


「オシリス、来たぞ迎えだ。転送する。」


 しわがれた声が聞こえたと思うと、地面で痛みに悶えるオシリスは、光に包まれて消えた。


「お前の名前はなんだ?」


 声の聞こえた方を見てみると、上空に50メートルはある大きな蛇がいた。

 しかし、その蛇はリザードと一緒で、生命の息吹を感じず、機械のようだ。

 その蛇に向かって少女は、中指と薬指を親指に付け人差し指と小指をピンっと立てる。


「ただの、妖獣界の妖獣。九尾の狐ことキュウビと言っておきましょうか。」


「キュウビ…………お前はいつか殺す。我らがエジプト神王国の名にかけて………………」


 それだけ言うと蛇は、フッと一瞬にして消える。


「大丈夫ですか?」


 少女は、クルリと振り返り、暖かい声で聞いてきた。それと同時に、太陽が登り始めてきた。

 どうやら、もう夜明けのようだ。


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