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日常の大切さは終わった時に気づくもの  作者: KINOKO
第3章 母なる者
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二人を汚した愚か者

「マザー、今は白虎じゃなくて流風っていう名前なの。」


俺の言葉を流風は無視して、エキドナに語る。それを聞いたエキドナは肩を震わせ、


「どうして、キュウビと言い、白虎と言い契約するのよ………………!」


「流風が契約した理由は氷華を守るため。それ以外に理由はない。」


流風の力が強くなり、エキドナが少し押される。


「クッ………………! 」


エキドナは一旦、後ろにジャンプして流風と距離を取る。流風はヌンチャクをエキドナの方に構える。


「白虎! どうしてあなたが契約したのですか!? あれだけ人間の事を嫌っていた白虎が………」


ミツレが肩を押さえながらフラフラと立ち上がり、流風に問う。それを見た流風はフッと鼻で笑うと、


「アンタには関係ないわキュウビ。流風にも守りたいものが出来ただけだから。」












――――――――――場面は白虎こと流風が俺たちのとこに来る前の病院に遡る。




「………………………行ったか。」


俺は悠真とミツレを見送った後の病院の駐車場でポツンと立っていた。胸ポケットからタバコとライターを取り出し、火を付ける。


「坂田、あの子達はもう行ったのか?」


病院の自動ドアの開く音が聞こえ、後ろを振り向くと少し小太りの男 近藤がいた。


「手術は終わったのか? やけに早いな。」


そう言うと、近藤は金縁の丸メガネを拭きながら、


「ほとんど終わった。子宮内に入ったガラスは意外にも大きくて取りやすかったんだ。細かいのは部下に任せてある。なぁに、心配するな。俺の部下の腕はピカイチだ。」


部下に任せたと言って心配になったが、こいつが言うなら大丈夫なのだろう。


「だが、あの子達はもう子供を産むことはできないだろうな。少しグロテスクな表現になるが、子宮が苺ジャムの中に入っている果肉みたいになっている。今の医療技術だと元どおりには出来ないだろうな。」


近藤はため息をつきながら、病院前の木製のベンチに腰掛ける。やはり、医者としても助けれないのはつらいのだろう。


「そうか、お前の腕を持ってしても無理なら難しいな。」


「ああ、悔しくて仕方ないが彼女達の命を繋ぐ事しかできない。」


そう言う近藤の声は震えていた。悔しさとあの二人を傷つけた連中に対しての怒りが混じった声だ。


「近藤、お前は病院に早く入れ。奴らが来る。」


この気持ちの悪い淀んだ感じは嫌な予感しかしない。


「榊原組か。わかった、俺がいても足手まといだしな。後は任せたぞ。」


「おう、ってもうお出ましか。」


近藤が病院の自動ドアの向こうに消えた瞬間に三十人ほどの厳つい黒スーツに身を包んだ男達がゾロゾロと駐車場に入ってきた。


「おうおうおうおう! そこのオッサン! どいてくれや!」


横一列で入ってきた男のうちの真ん中の金髪でジャラジャラとしたネックレスを付けた、いかにもチンピラな男が俺を怒鳴りつける。


「お前らが榊原組か。悪いが今俺はイライラしててな。手加減はできんぞ?」


「なんだとゴラァ!? 行くぞっ! オラアアアア!」


三十人ほどの男たちが一斉に俺に飛びかかる。見た感じ銃などの武器は持ってなく、メリケンサックや小さなナイフなので近接格闘で仕留めれるだろう。


「フンっ! お前らみたいなチンピラに要はない! 早く親方読んでこんかい!」


一番最初に飛びかかってきた金髪の男の腹を思いっきり殴り気絶させる。そして、その男の両足を掴みながら振り回して周りの男たちを薙ぎ払う。


「な、なんなんだ!? このオッサン! 強すぎる! ゴヘェア!」


「俺の名前は坂田 修。千葉神対策局の局長だ! お前らみたいなチンピラが敵う相手じゃあねーよ。」


「クソ…………」


三十人ほどの男たちを全て地面に伸ばさせる。これぐらいの相手ならば契約起動しなくても余裕で倒せるな。


「おい、お前らのボスはどこだ。氷華と流風をあんな目に合わせたクソ野郎の居場所を教えろ。」


俺は足元で伸びている男の後ろ髪を掴み、耳元で聞く。しかし、男は返事しない。


「全員、気絶しちまってるな。これじゃ居場所が分からんぞ。」


「探さなくてもいい。あの二人を強調したのは俺様だ。」


野太い声が聞こえた。その声の主はゆっくりと俺の方に歩いてくる。こいつ、いつから………………?


「お前か、二人にあんな事をしたのは。」


男は突き出た腹をボリボリ掻きながら、葉巻に火を付けて、ハゲかけた髪の毛を弄りながら、ニチャアと笑うと、


「ああ、最高だったよ! 痛みに歪むあの顔が! 助けを仰願するあの表情! 青髪の方も茶髪を殺しても良いのか?って軽く脅しをかけたら犬みたいに従ってくれたてよぉ、ああ、思い出しただけで勃ってくるぜぇ…………」


俺は悪寒を感じた。ここまで腐り果てた人間を俺は人生で見たことがあるだろうか。

許せない、絶対に許せない!


「お前が榊原組の組長か? 」


俺は怒りで今すぐにでもコイツを殺してしまいそうだったが、感情を押し殺して問う。

男は葉巻を地面に投げ捨てると、


「俺の名前は谷 恐矢だ。組長のもとで幹部兼仕入係をやっている。今回の二人も良い品だったのによお、薬入れようとしたら逃げやがって。せっかく気持ち良くさせてやろうとしたのに許せねぇ…………」


谷 恐矢……………聞いたことはないな。しかしコイツは嘘をつけるほどの頭はもったいなさそうだし、幹部だと言うことは間違いないだろう。


「正直、誰が組長だろうが興味はない。今、俺が為すべき事はお前を倒す事だ。」


「笑わせるな。お前ら神対策局の連中は一般市民には手を出せない筈だ!」


谷はドヤ顔で銃を俺に構える。


「お前は1つ勘違いをしている。神対策局が禁じているのは契約魔力を使っての一般市民への武力行使だ。」


「あ? どう言う事だ?」


俺はため息をつく。相手がコイツで本当に良かった。変に頭の良いやつだったらやられてたかもしれないな。


「つまり、俺は契約起動しなければお前を殴り倒す事が可能なんだ。」


自分の考えと違ったのか谷は肩をガタガタと震わせる。さっきまで銃口がしっかりとこちらを向いていたのに、その標準はブレブレだ。


「う、うるせえええええ!! 殺せばこっちのもんじゃあ!!」


谷は銃を三発撃つ。しかし標準はブレブレでどれも変なところに弾が飛ぶ。こういう時は変に避けたりせず、ブレないように一歩ずつ前に足を進めて敵を穿つ。


「悪いな。俺は頭にきているから今は手加減できないぞ。」


三発撃ち終わった後に俺は素早く谷の間合いに入る。


「ヒ、ヒイイイイイイイイイイイイイイイ!!」


「オラァ! このクソ変態趣味野郎が!」


拳を握り固め、谷の右頬を思いっきりブン殴る。谷は地面に倒れる。


「ふぅ、コイツがバカで助かったぜ。後はコイツらを拘束しないとな。」


俺は病院に戻り、ロープでも持ってこようと谷から目を離した瞬間、何か冷たい金属が俺のこめかみに当たる。


「ゴフッ…………動くんじゃねぇぞ。意識しっかり保ってなかったら気絶していたとこだったぜ。」


ゆっくりと右目を動かすと、そこにはさっき殴って倒したはずの谷が右頬を摩りながら立っていた。谷は右手に持っていた拳銃で俺のこめかみを当てている。

この距離じゃ反撃できない……………!


「ふはははははは! まずはお前を殺してたから病院の連中も皆殺しだ!」


谷は拳銃の安全装置をガチャリと外し、引き金にゆっくりと指を掛ける。


ここまでか………………!


「旋風 風牙(ふうが)! 」


何者かの声が聞こえたと思ったら、谷と俺との間に凄い勢いの風が通り過ぎる。

それと同時に谷の右手は吹き飛び、鮮血が飛び散る。


「うわああああああああああああ!? ゴファ!」


右手が吹き飛び、動揺している今がチャンスだと思ったので谷の二重顎目掛けて、右ストレートをくらわせる。上手く入ったのか谷は今度こそ気絶した。


「君が助けてくれたのか。ありがとう。」


俺は谷の右腕を吹き飛ばした者の方を振り返る。そこには白色のチャイナ服に身を包んだ流風がいた。

流風は俺のお礼に少し照れたのか頬を少し赤らめ、


「別に流風はオッサンを助けたつもりはないわ。そこのキモデブに制裁を加えただけだから。」


「オッサン………………? ま、まぁそれよりも君は怪我は大丈夫なのか?」


オッサンと若い子に言われるのは中々ショックだったが、追求せずに聞きたいことを聞く。


「氷華と契約したわ。本当は氷華を戦いの世界に巻き込みたくはなかったけど、あの娘ったら………………」


どうやら何か言いにくい事があるらしい。こういう時の女子にこれ以上聞くのはよしておこう。


「そうなのか、氷華は目覚めたのか?」


流風は首を横に振ると、


「いいえ、契約した後は安心したのか眠ってしまったわ。それよりもオッサン、いやオジサン! 頼みを聞いてくれないかしら?」


オッサンからオジサンにランクアップ!ってか? あんまり変わんないからな!


「ああ、流風だったか? 君の頼みなら出来る限りの事はしよう。」


流風はまっすぐに俺の方を見て、頭を下げると、


「氷華をいや、この病院を守ってください………! 流風はあのバカギツネの方に行きます。」


さっきまでタメ口だったのに急に敬語になった。普段は敬語なんて使わないやつが敬語を使うとカタコトになるものだが、流風はならない。根はしっかりしていて真面目なのだろう。


「ったく、子供が頭なんて下げんじゃねーぞ。わがままを聞いてやるのが大人の仕事だ。」


俺はそう言い、流風の頭をポンと撫でる。


「さ、触ってんじゃねーよ! オッサン!」


顔を真っ赤にして流風は俺の手を払い除けると、風を身に纏って空を飛んでいく。


「そういうとこだぞ坂田。お前は昔から変わらないな。」


自動ドアから出てきた近藤に肩をポンと叩かれる。












―――――そして場面は現代へと巻き戻される。


中間テスト終わったので投稿しました!

辛口アドバイス待ってます!

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