二の力 起動!
どうやら本当に二の力が使えるようになったらしく、右手に光が包まれる。
「この場面を打開出来るような力であってくれよ………」
光が収まり、現れた二の力の正体は俺の身長の170センチと同じぐらいの大きさで、持ち手が赤色、刃は漆黒に染まった大きな大剣だった。
「大剣……………? でも、これは大剣というにはあまりにも異質だな。」
そう、この大剣は先が鋭くないのだ。正確に言ったら瑠紫の大剣のように先に銃口が付いている。
瑠紫の大剣と違うところを上げるとしたら、剣の持ち手の部分に銃に付いているようなトリガーがある事だ。
「神崎さん! なんか私の体力や魔力も回復したのですが光る前に何があったんですか?」
俺が新しく手に入れた二の力にポカンとしているとミツレの鋭い声が聞こえてきた。ミツレの方を見ると、自信を取りと戻して本来の力を出せるようになったのかエキドナとほぼ対等に渡り合っている。
「なんか急に光り出して回復したんだ! それと、二の力ってどんなのか分かるか?」
回復した理由が分からないのと、二の力が使えるようになったという差が激しい情報に、ミツレの声は少し裏返り、
「分からないってなんなんですか! でも、すいません! 神崎さん、私が知っているのは最初から使える一の力、三の力、五の力だけです。それと、少し集中するのですいません…………………!」
自分から話しかけといてなんじゃいって思ったが、ここは戦場なので仕方がない。
「分かった! 俺がコイツ倒すまで待っとけよ!」
しかし、ミツレからは返事がこない。
「まぁ、仕方ないか。俺もコイツを早く倒さないとなぁ!」
「ゴオオオオオオオオオッ!」
巨人のハサミが付いている右手と、二の力の大剣がぶつかる。
「うおおおおおおああ!!」
「ヌゴアッ!? ゴアアアアアアア!!」
日本刀と違い、大剣はデカイのと重さがあるので最初のようには体が吹き飛ばない。
「グッ! 吹き飛ばされないとはいえど、流石のパワーだな。今度はこっちから行かせてもらうぜ!」
俺は大剣の赤色の柄を両手で握りしめて、巨人の右足の腱の部分を斬る。
赤黒い血しぶきと共に巨人は低い声で叫ぶ。
「グルアアアアアアアアアア!? 」
「やっと痛そうな声出したな。百倍返しは食らってもらわないとなぁ!」
腱を斬った事で巨人は一瞬グラつく。その瞬間を狙って、もう一度、大剣の柄を握りしめて今度はかかとに狙いを定め、上から思いっきり叩き斬る。
ブチィ!という筋繊維が切れる音と一緒に、赤黒い血も噴射する。
「ギャアアアアアアアアアアアアア!!」
「ハァハァ…………! まだまだあ!!」
やはり、大剣を何度も振るうのは体力を使う。日本刀は剣道やってたから振り慣れてたが、大剣はサイズが違うので力の配分が分からない。
巨人は右足の腱を斬られ、かかとも損傷したので右足が崩れる。
「まだまだあ! こんなんじゃコイツは倒せねぇ………………!」
もう一度、大剣の柄を握りしめて今度は左足の腱を狙う。だが、二回も攻撃を食らっておいて巨人も黙っているはずはない。
「ガアアアアアアアアアアッ!」
巨人は無傷の左足でしゃがんだまま、俺に蹴りをくらわせた。図体がデカいコイツの蹴りはまさに壁が迫ってくる感じだ。
なんとか反応に間に合い、大剣でガードできたが今度は吹き飛んでしまい、地面に左肩を大きく擦ってしまった。
「イタタタタ………… いくら大剣が一撃一撃が重いとは言えど、このまま足ばっかり狙ってもアイツを倒す前に俺の大剣を振るう体力が無くなってしまうな。」
巨人の蹴りで吹き飛ばされたので、俺と巨人の距離は少し離れ15メートルほどだ。巨人は右足を集中的にやられたせいかコチラを睨んでくるばかりで動かない。
しかし、いつ動き出すかは分からない。
「アイツの首を斬らないとトドメはさせなさそうだしなぁ。さすがにあの高さまでは大剣は届かないしどうすれば……………… ん? なんだこりゃ? 」
大剣の柄の部分と刃の間ぐらいにある、紫色の丸い石が輝いている。しかも、ただ輝いているだけでなく満という文字が赤く浮かび上がってきている。
「二の力を起動した時には紫色の丸い石はあったが、光ってなかったし、満とかいう文字は浮かび上がってなかったよな……………」
ミツレに聞いても分からないだろうし、コレはなんなんだ?
「ゴアアアアアアアアアアアアアッ!」
巨人が遂に動き出した。右足を引きずりながらなので少し遅いが、それでも迫力は凄い。
俺は大剣に気を取られてたせいで構えるのに遅れる。
「ええ!? ちょっ! 待って! 今、俺、大剣を…………… へ?」
巨人が走ってきて、慌ててしまった俺は大剣に付いている謎のトリガーを押してしまう。
すると、剣先の銃口が赤色に光りだす。
「おいおい! なんか光ってきたんだけど!? え!? うああああああああああ!!!」
赤色の光が止んだと思ったら今度は銃口から勢いよくレーザーよりは太い、謎の光が噴射したのだ。
その光のエネルギーは凄まじく、俺は地面に右頬を擦らせながら進んでいく。
「痛い痛いっ! なんなんだ!? この大剣は! この光を止めねえと! あ、トリガーから指を離したら………… と、止まったぁ。」
トリガーから指を離したら銃口から勢いよく噴射してた光は治る。
俺は地面に擦れた右頬を抑えながら、立ち上がる。
「それにしても凄まじいエネルギーだったな。トリガーを押した途端に銃口から勢いよく光が出てきて、人が抑える力なんかよりも上で、まるで暴れ馬だな………」
事実、トリガーを押してた間に両足で地面に勢いよく踏ん張ってたりしてたが無意味で、剣から吹き出したエネルギーに負けていた。
「人を吹き飛ばせるほどの威力、コレをなんとか生かせないかな………」
その時、俺の頭の中である事が閃いた。
「さっきは剣を地面に並行に置くようにしてたから痛い思いをしたわけだ。なら、今度は大剣の柄は脇腹にさして吹き飛ばされないように固定して、剣先を後ろ向きにしたら凄まじいエネルギーを利用して………… いや、考えるのは俺らしくない。やれる事は全部試してみる! 」
俺は大剣の柄を脇腹に固定し、剣先を自分の後ろにする。
「ガアアアアアアアアアアアッ!!」
巨人との距離は俺が勝手に吹き飛んだせいでまた離れてしまう。今の巨人の位置は橋の右端にいる。
「よし、今だっ! 」
大きく深呼吸して、もう一度トリガーを押す。少しして凄まじいエネルギーが剣先から出ている事を感じた。
固定していても少しずつ前に押し出されていく。
「いくぜええ!! うおおおお!!」
俺は少しだけ力を緩めて、巨人に向かって走り出す。エネルギーが噴射しているので、いつもの俺のとは比べものにならない速さだ。
一瞬にして、巨人の間合いに入る。しかし、俺の狙いはここではない。
「ジャアアアアアアアッ!!」
巨人が左手を大きく振り上げ、俺めがけて拳を放つ。しかし、巨人の股の下に来た瞬間に俺は右に向かって走り出したので、巨人の拳は地面にめり込む。
「ここで一気にっ!」
トリガーを思いっきり押すと、出力最大になったのかさっきの二倍のエネルギーが放出される。その噴射されたエネルギーを利用して、俺は橋の側面を垂直に駆け上がる。
そして、巨人の頭の高さよりも少し上まで上がったぐらいのとこで鉄骨を思いっきり蹴り、宙を舞う。
巨人の首から頭かけての縦ラインに狙いを定める。
「コレに名前を付けるとしたら猪突猛進だな。これでお前を叩くっ! はあああああ!!」
「ガアアアアアアアアアア!? ガバァ………!」
落下するときのエネルギーと大剣から噴出したエネルギーが合わさり、後ろから巨人の首を横に真っ二つに斬った。
斬ったのと同時にエネルギーが切れたのか、プシュウという音と共に大剣から放出されてた光が治る。
「やった! やったぞ! 倒した!!」
俺は地面に背中から落下したのに痛みよりも喜びの方が勝っていた。
この時は喜びは痛みに勝つと知った悠真だったが、喜びは絶望に勝てない事を知るまでは、そんなに早くないのであった。
いやー、物語が盛り上がってくると筆も進みますね!
皆さん、お盆はどうお過ごしですか? 僕は家族から見放され、一人で勉強とその合間に小説を書いていますw
アドバイスや感想待ってます!




