バケモノの正体
「その三人は誰だ? 知り合いか?」
No.IIIと言われた青肌の巨人はエキドナを守るように、エキドナの前に出てきた。
「あの青肌の巨人からは里親が見つかって、教会から出て行った三人の妖獣の魔力をハッキリと感じます! これは一体……………」
どういう事だ? あの青肌の巨人から妖獣の魔力を感じるだと? 俺は魔力探知が出来ないから分からないが、魔力探知が得意なミツレが言っているのだから間違いではないだろう。
「お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!! 」
青肌の巨人は蟹のようなハサミを大きく振り上げる。そして、俺とミツレの方向に一直線に叩き落とそうとする。
「ミツレ! ボサッとすんな! こっちだ!」
人形のように魂の入ってない目で虚ろになっていたミツレの右手を引き、なんとか巨人の攻撃を回避した。
しかし、今の巨人の一撃で橋が大きく傾く。
「すいません、神崎さん。つい懐かしかったもので…………」
「少し前まで信頼してた人が敵に回ったんだ。頭が回らないのは仕方がないよ。それにしても、今の一撃で橋が結構傾いたな。早々にアイツを倒さないと橋が先に壊れてしまう。」
しかし、どうやってアイツの間合いに入る? 見た目は図体がデカいから入りやすそうに見える。だが、もし入れたとしてもアイツの攻撃を一回でもくらえばゲームオーバーだ。
「ガアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
青肌の巨人が叫びながらこっちに向かってきた。エキドナは見守るかのように巨人の後ろに立っている。
「くっ! カグツチと一緒で話が通じなさそうだな! 完全にイカレてやがる!」
「ごめんなさい、先輩たち!霊炎! 火柱っ!! 」
地面から突き出た、ミツレの火柱により青肌の巨人は青い炎に包まれる。
「ガアアアアアアアア!? グルアアアアアアアアアア!!」
しかし、青肌の巨人は止まることはない。ミツレの霊炎で包まれた体は、体の内側から出てきた炎に上書きされて消えてしまったのだ。
「ミツレの霊炎を自分の炎で上書きして消しただと!? 」
ミツレの霊炎を、自分の炎で上書きして消した青肌の巨人は歩みをこちらに寄せてくる。
「あの炎から感じる魔力はラードーンのです…………… やはり、あの巨人の正体は」
「やっぱりキュウビは魔力探知が上手だね。このNo.IIIはラードーン、クリュンネ、デルピュネーの三体の妖獣を合成して作った生物兵器なんだ。妖獣といえど三体分の魔力があるから、兵器としてはかなり優秀だ。」
ミツレが何かを言おうとしたが、エキドナに遮られる。
「兵器……………? アナタが家族を兵器にしたんですか、マザー!!」
ミツレはエキドナが言ったことに対して激昂する。家族三人の命を奪われ、化け物にされたんだ。それにしてもエキドナは育て親のはずなのに、平然とこんな鬼畜な事をやるなんて、どう考えてもおかしい。
「私はお前たちを家族だと思った事は一度もない。あの教会は色んなところから集めた優秀な魔力を持っている妖獣の孤児を保管して、必要に応じて兵器に変えたりしている研究室だ。お前たちは家族ではなく、モルモットに過ぎないのさ。」
「じゃあ、今まで里親が見つかって教会を去って行った先輩達は全員、兵器にされたって事ですか!」
激しく怒るミツレに対して、エキドナは氷のように落ち着いている。
エキドナは薄ら笑いを浮かべると、
「ああ、里親が見つかって希望に染まった目を、一気に絶望一色に染めるのは何度やっても飽きなかったよ。最後はみんな、助けを求めていたなぁ。」
「狂ってやがる! 何の為にそんの非人道的な事をするんだ!」
「何度も言わせるな人間、これは私とキュウビの話だ。ゴミが話に入ってくるな! No.III! まずは、あのうるさいガキから殺せ。」
やはり、俺が会話に入るとエキドナは何故かキレる。だが、これ以上アイツが嫌なことを言ってミツレのメンタルがボロボロになるよりはマシだ。
青肌の巨人がドスドスと走りながら俺の方に向かってくる。
「ミツレっ! 俺がコイツを足止めしている間にお前はエキドナを叩け! 」
ミツレはボケっとしている。こういう時は少し強めに言ってやらないと意識が戻らない。
「でも、私なんかにマザーを倒す事は出来ません……………」
やはり、いつもの勝気なミツレじゃない! メンタルがやられている。
「お前ならやれる! これ以上 お前の家族が苦しむのは見たくないだろ! 」
「でも、私は………………」
「ミツレ!!」
ゴニョゴニョ何かを言っているミツレの声を搔き消す。あまりこれ以上言っても効果はない。なら、俺は自分が思った事をシンプルに伝えるだけだ。
「頼んだぞ。」
俺はそれだけ言って、青肌の巨人の方を向き、ミツレに背中を向ける。
巨人は叫びながらこちらに向かってくる。
「ったく、神崎さんに励まされる日が来るとは思いませんでした。分かりました、私がマザーを止めます!」
この透き通った声はいつものミツレだ。チラリと後ろを振り返ると目が合った。その目は先ほどまでの澱んだ目ではなく、いつもの覚悟に満ちた綺麗な目だ。
「ああ、俺がコイツを倒して援護に行くまで倒れるんじゃねーぞ?」
ミツレは鼻でフッと笑うと、
「それはブーメラン発言ってやつですよ。」
「やっといつものミツレに戻ったな! よし行くぞっ!」
「はい!」
俺は青肌の巨人に向かって走りだし、ミツレはその隙をついてエキドナの方へと走り出す。
ここからが本当の戦いだ。
一週間一本投稿チャレンジは受験勉強のせいで一時中断ですが、投稿をやめるわけではないのでちょくちょく投稿していきます!
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