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日常の大切さは終わった時に気づくもの  作者: KINOKO
第3章 母なる者
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マザー、それは偽りの名前

「とは言ったものの、マザーは私に戦いを教えた師匠です。魔力の量や質は私の二倍以上はあります。それに今のマザーは私がかつて知っていたマザーではありません。本当の実力が分からないです。」


ミツレと一緒の陽炎という技を使っていたし、アイツがミツレの師匠という事は間違っていないだろう。


「アイツは俺とミツレを陽炎で同時に相手にしていた。そんな神みたいな事が妖獣でも可能なのか?」


「不可能ではないですが、あんなに大量の陽炎を出しといて息を切らしていないのは妖獣の持つ魔力量としては考えれません。」


どういう事だ? アイツは妖獣なのに神クラスの魔力を持っているという事なのか?


「九尾、私はお前に2つ嘘を付いている。」


女は傘を片手にゆっくりとこちらに歩み寄ってくる。


「嘘?どういう事ですか? 」


「こういう事さ!」


女は傘を広げ、俺たちに姿が見えないようにする。すると天から降ってきた紫の光に包まれ辺りが眩く光る。


「何をしたんだ!?」


光が収まり、目を開ける。そこには女の姿はなかった。


「もうアレはマザーじゃありません! 神です!!」


ミツレが指差したのは俺が見ていた場所ではなく空だった。

女の背中には赤黒いドラゴンのような翼が生えていたのだ。さっきまでの修道女のような服ではなく、胸部に赤色の布を巻きつけており教会のマザーらしかぬ服装だ。


「ごめんね九尾。これが私の正体なの。そして今度こそさようならっ!」


女は傘の先をこちらに向けて狙いを定めると、急降下してきた。


「霊炎 火柱っ!」


俺とミツレの目の前に火柱が勢いよく上がり、女の急降下を防ぐ。


「さすがに防ぐか。それでこそ私の教え子ね。」


火柱をミツレが消すと、姿が変わる前にいた位置に女は戻る。


「マザー! その魔力は何ですか!その魔力量や質は明らかに妖獣の物ではない!」


え!? アイツの魔力量や魔力の質は妖獣ではありえないということか? つまりアイツは……………


「ミツレ、てことはアイツはまさかと思う」


「私の本当の名前はエキドナ。ギリシャ神王国の神だ。ギリシャ神王国の名の下に神対策局のミツレ 神崎を駆逐する。」


俺が言おうとしていた事はマザー、もといエキドナに遮られた。


「マザーが神…………… そんな! 嘘ですよね!? 」


ミツレは膝から崩れ落ちる。そりゃそうだ。今まで憧れてた人が、自分が最も憎い存在の神だったんだ。


「ミツレ………………」


俺は崩れ落ちたミツレの肩に手を置き、慰める。ミツレの肩は震えていた。


「嘘ではない。」


エキドナは静かに、氷のような冷え切った声で言う。


「嘘です!」


ミツレは勢いよく立ち上がると、エキドナとは対照的にマグマのような煮えたぎる声で叫ぶ。


「そこまで言うなら私が神だという証拠を見せよう。」


エキドナは豊満な胸の中に手を入れる。そして胸の中から15センチぐらいの俺の三の力と同じくらいの大きさの小ぶりの黒色の柄のナイフを取り出す。

取り出したナイフでエキドナは右頬を少し切る。切られた右頬からは鮮血が溢れ出し、エキドナの頬を伝う。


「アイツ、一体何を…………」


「あ、ああ 神崎さん!マザーの右頬を見てください! 」


ミツレに言われた通り、俺はエキドナの右頬を見る。


「な!? アイツの頬の傷口が閉じているだと!? 」


さっきまで傷口がパックリと開いていたエキドナの右頬は血が止まり、傷口が閉じていたのだ。

この回復力は人間でも妖獣でもない! つまりアイツはやっぱり……………


「九尾、これで分かってくれた? 私は本当はあなたのマザーではないの。神が妖獣の義理とはいえど母親になんてなれるはずはないの。」


エキドナは血のついたナイフを海にポイっと投げ捨てる。


「あなたが神だろうと、私たちのマザーである事には間違いないです! マザーが私達に向けてくれた笑顔や温もりが嘘だとは思えません!!」


「笑顔? 温もり? 笑わせないで。 九尾たちのせいで私は嘘をつくのが上手になってしまっただけだから。」


「でも、私はあ」


「ミツレっ!」


俺はこれ以上、ミツレがエキドナの返事で精神的にやられるのを防ぐために、ミツレが言おうとした事を打ち消す。


「今のアイツが、本当に温もりや笑顔をお前に届けると思うか? 一旦、落ち着いてエキドナを見てみろ。」


ミツレは下を向いたまま涙ぐんだ目で叫んでいたのでエキドナの姿を見ていなかったので、一旦アイツの姿を見せるのが得策だと思ったからだ。

ゆっくりと顔を上げたミツレは、頬の傷が完全に回復したエキドナの姿を初めて見る。


「もうあの時のマザーはいないのですね……………」


その声はか細く、この世に絶望したような声だった。涙ぐんだ目を服の裾で拭う。


「ミツレ…………………」


「ようやく私が神だと分かってくれたみたいね。なら、もっと面白い物見せてあげるわ。これが私がマザーを演じてた理由よ。」


エキドナはフッと笑うと、天に右腕を掲げる。そして、


「ギリシャ神王国 エキドナの名において命ずる! 出でよ! No.III!!」


エキドナがそう言うと、空に病院から見た時と同じ神殿のような模様の魔方陣が1つ出てくる。


「ん? リザードを呼ぶつもりか?」


「いえ、普通だったら五体以上は呼ぶはずです。単体なんておかしいです。嫌な予感がします。」


魔方陣は紫色に光り輝く。


「さぁ! その愛しくて醜い姿で全てを破壊せよ!」


「うお!? 眩しいっ!」


魔方陣が勢いよく放った紫色の光で俺は目を瞑る。目を瞑っている間に何かが橋の上に落ちた音と衝撃が俺を襲う。

何かとてつもなく大きな物が落ちた。


「ん………… なんだったんだ? 目くらましか?」


「そんな…………… この懐かしい魔力は………」


ミツレはまた肩をガクガク震わす。辺り一帯は何かが落ちてきた衝撃で発生した砂煙に包まれていて隣にいるミツレしか確認できない。


「さぁ、No.III! 全てを破壊しな!」


「お゛お゛お゛お゛お゛お゛!」


エキドナが言った後に獣のような低い叫び声が響く。


「くっ! なんて叫び声だ! うるさすぎる!」


しかし、その叫び声のお陰で辺りの砂煙は一気に飛び散る。

そして叫び声の主の正体が判明した。


「な、なんだアレは!? デカすぎる!」


俺とミツレの目の前に、大きさは10メートルほどの青肌の巨人が現れたのだ。

それは巨人と言うには禍々しく、右腕は地面に付くほど大きく、カニのようなハサミをしている。左腕の長さは普通だが指が腕のいたるところに生えており、その指一本一本が不規則に別の生き物のように動いている。

だが、1番不気味なのは顔だ。龍のような顔だが左眼だけ顔の半分を覆うほどデカイのだ。舌をダラリと垂らした、その形相はまさに化け物だ。


「どうして、あの化け物から教会から里親が見つかって出て行ったラードーン、クリュンネそれにデルピュネーの魔力が感じるんですか……………」


ミツレが震えた指で青肌の異形の巨人を指差す。教会から里親が見つかって出て行った人達の魔力を感じる? どういう事だ?

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