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日常の大切さは終わった時に気づくもの  作者: KINOKO
第3章 母なる者
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愛しのマザー

ミツレからマザーと呼ばれた、その女は修道女のような出で立ちで砂煙の中から姿を現した。

しかし、その女に脚はなかった。正確に言ったら脚ではなくて、腰から下が緑色の鱗に覆われた蛇のようなものだ。


「マザー! 生きてたのですね………… 私が貴女の事をどれだけ心配したことか。」


ミツレは目にうっすらと涙を浮かべながら、蛇の下半身をした女の方に走っていく。その距離、実に10メートルほどだ。


「ゴメンね、九尾。早くアナタに会いたかった。」


女はニコッと笑うと、両手を広げミツレを受け止める体制になる。


「おい! ミツレ! 止まれ!」


俺は嫌な予感がしたのでミツレを呼び止めようとするが、ミツレは聞く耳を持たない。どう考えてもおかしい! さっきまで人殺しをしていたようなヤツだぞ!? そんな奴がミツレの育て親のはずがない!

現在、ミツレと女との距離は5メートル。


「本当にゴメンね。さぁ、おいで。」


二人の距離は3メートル。


「マザー!!」


やはり、嫌な予感しかしない。


「…………三の力起動」


俺は女が気づかないように三の力を起動する。幸い、女はミツレの方を向いているので俺は視界に入っていない。

二人の距離は2メートルにもなった。


「マザー!」


「さぁ、おいで…………」


俺の思い過ごしか? コイツは良いやつなのか…………

そう思い、三の力を解除しようとした瞬間、


「そしてさようならっ! 呪炎 陽炎!」


ミツレが女の胸に飛び込もうとした瞬間、女はヒラリと避けてミツレの背後に周り、右手を天に掲げる。するとミツレの陽炎よりも大振りな紫色の炎の刀が無数に出てくる。


「え……………」


急な攻撃にミツレは立ち尽くす。


「くそっ! 遠隔起動っ!」


女が陽炎と叫んだ時に、ナイフを投げといて良かった。攻撃が放たれる瞬間にミツレを回収して、なんとか攻撃を避けて距離をとった。


「ハァハァ…………… おい、ミツレらしくないぞ。」


ミツレは立ち上がり、俺の方を上目で見る。


「すいません…………… 」


それにしてもおかしい。何故、育て親が我が子を殺そうとしたんだ? やはり、あの女は何か怪しい………


「ミツレ、あの女は本当にマザーなのか? 育て親ならお前を攻撃なんてしないはずだろ。」


「あれは本物のマザーです。ピエロの仮面と黒い服が外れてから、長い間 側にいたマザーの魔力を感じる事が出来ました。なのに! どうしてこんな事をしたのですか! マザー!!」


ミツレの心からの悲痛な叫びを受けた女は、一切動じる事なく真顔で、


「私は自分の正義の為にやっているだけなの。その正義の道の邪魔になったのが九尾なだけだから。呪炎 陽炎!」


女が指パッチンをすると、頭上に無数の紫色の剣が出てきた。さっきよりも数が多い。


「神崎さん! 私の後ろに隠れてください! 」


ミツレが俺の前に右手を出して、前に出させないようにする。


「どうしてだ ミツレ! 俺もやる!」


「マザーは私が止めます。あんなのマザーじゃない!」


ミツレの意思は固かった。今、何を言っても聞かないだろう。


「分かった、でも危なかったら俺も加勢するからな」


「ありがとうございます。霊炎 陽炎っ!!」


俺はミツレの邪魔にならないように背後に回る。

ミツレと女は睨み合ったままで、両者の色違いの炎の剣は宙を浮いたままだ。


「最後に聞きます。マザー、貴女はどうしてこんな事をしたのですか? 人間を愛していたマザーはどこにいったんですか!」


女は深々と溜息をつくと、


「私は一度も人間なんかを愛した覚えはない。それと、九尾達 妖獣もね! 」


女は右手をミツレの方に向ける。すると、さっきまで宙を浮いていた剣がミツレの方向に一斉に放たれる。


「もうあの頃のマザーはいないのですね………… ならば私が戻します!」


ミツレも右手を女の方に向ける。両者から放たれた炎の剣は激しくぶつかりながら相殺される。

しかし、相殺されていたのは最初のうちだけだった。女の方がミツレの陽炎より大きく、数も多いかったからだ。

少しずつ、ミツレは攻める事が出来ず防御で手一杯になってしまう。


「もう終わり? そんなんだったら私は止められない!」


「まだ、いけます! ハアアアアアアアアアア!!」


ミツレは息遣いが荒くなっているのに対して、女は少しも息を乱していない。


「クッ! まだ、まだあああ!!」


女の剣がミツレの右腕を掠める。一回、ペースが乱れると、その隙をついてドンドン剣がミツレの体を襲う。


「グハっ! まだ、まだいけるっ!」


ミツレの左肩に女の剣がズブリと突き刺さる。剣の大きさは30センチほどで大して大きくはないのだが、一度刺さると、また一本 二本とどんどん突き刺さる。


「止めるんじゃなかったの? 私はあなたをそんな貧弱に育てた覚えはないんだけどなぁ。」


本当にコイツはミツレの育て親なのか!? やっている事はあまりにも卑劣だ。急所を避けるように剣で攻撃している。

このままだとミツレが危ない!


「ミツレ! 三の力 起」


「させない。これは私と九尾の問題だ。部外者は入ってこないで。」


ミツレを攻撃していたはずの女は、三の力を起動しようとした俺に対しても炎の剣で攻撃する。

二人同時に相手するなんて無茶苦茶だ!


「クソっ! 三の力が起動出来ないんじゃ、この炎の剣を回避できねぇ……………」


女が放った炎の剣で手一杯でミツレを救出する事が出来ない。

ミツレの方をチラリと見る。しかし、ミツレの周りは女の炎の剣が絶え間なく攻撃しているため、ミツレの様子をハッキリと見る事が出来ない。


「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!」


炎の剣の嵐の中からミツレの痛みにもがく叫びが聞こえる。


「ミツレ! ちくしょおお!!」


ダメだ! 炎の剣で手一杯で助ける事が出来ない! こうなったら………………


「おい! 蛇女! お前、ミツレの育て親なんだろ!? こんな事するやつが親か!?」


女の気を引いて、攻撃対象をミツレから俺に外らせようとする。

女は俺に対して、一瞥すると


「お前に私の何が分かる! 軽々しく()という単語を使うな!」


女が俺の発言に何故キレたのかは分からないが、さっきまでミツレを攻撃していた数多の炎の剣が全て俺の方向に向かう。


「今だ! 三の力! 起動! 」


全ての炎の剣が俺に来たのを確認して、ミツレの方向にナイフを投げる。


「遠隔起動っ!」


「クッ! しまった!」


女はすぐさまに炎の剣の進行方向を変えようとするが、全ての剣を急に移動させたので、もう一度 剣の進行方向を変えようとすると、剣同士がぶつかり 相殺される。

その隙に俺は倒れているミツレを抱き抱え、女と距離を置く。


「ミツレ! 大丈夫か?」


ミツレの頬を軽く叩くと、すぐに反応した。


「す、すいません………… 私とした事が感情に流されて危うく死ぬところでした。」


左肩に突き刺さった剣を引き抜く。一瞬 苦痛の声を漏らしたが、側に落ちていた迷彩柄の布切れを拾い、それを肩に巻きつけ止血をする。

出血が激しいのは左肩だけで、他は体全体に切り傷がある。

契約起動して体の運動能力や防御力が上がってなかったら、さっきの攻撃で死んでいただろう。


「さっきの叫び声は嘘だったのか?」


ついさっき、痛そうに叫んでいた割には大怪我をしていなかったので聞いてみた。

ミツレはコクリと頷くと、


「はい、左肩に突き刺さった時点で攻めるのは無謀だと判断して、防御に全力を注ぎました。そして、マザーを油断させる為にワザと痛そうな声を叫んだのですが、まさか神崎さんが反応して助けてくれるなんて思いませんでしたよ。」


少し照れそうに頭をミツレはかく。俺は全力のキメ顔で、


「当たり前だろ、大事な友達が困っていたら助けるのが友達ってやつだ。」


「なに主人公っぽい事 言ってるんですか。さ、行きますよ。」


ミツレは俺の発言に対して真顔になる。


「ええ!? そこは俺に惚れるパターンだろ!」


深い溜息をミツレはつくと、俺の方をキッと睨みつけ、


「私が神崎さんを好きになるなんて、坂田さんがタバコをやめるぐらいありえません。」


「そ、そんなに言わなくてもいいだろう! 俺はお前を助けたんだぞ!」


ミツレはクスッと笑うと、


「冗談ですよ。とても感謝してます。」


そう言うとミツレは俺より少し前に出る。俺はそれを見て、ミツレの手を引き 俺の隣に並ばせる。


「おいおい、もう一人では行かせないぞ?」


「そうでしたね、すいません。さぁ、次は二人で行きましょう!」


「ああ! 二人で協力すればあいつを倒せる!」

1週間一本投稿チャレンジ中!

昨日投稿できなくて大変申し訳ございません!

これは先週の分ですので、今週も投稿します!

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