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日常の大切さは終わった時に気づくもの  作者: KINOKO
第1章 悲劇の始まりと終わり
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絶望と怒り、そして悲しみ

「いいね!いいねぇ! 青春だねぇ! 友達を守り自分が傷つく! 最高だよ!うーん、いい!」


 オシリスは、ハァハァと興奮気味に息を荒げている。だが、やはりその目は依然として、ムシケラを見る目だ。


「仁、お前大丈夫かよ! おい!」


 仁は立っているのが精一杯の様だ。片腕と、片足を無くして全身から血がボタボタと垂れているのだから、立っているのがおかしいぐらいだ。


「悠真、すまんぜよ……………」


 目の前で、ドサっという鈍い音とともに、仁が膝から崩れ落ちる。


「おい! 仁! おい!」


 仁は、呼んでも動かない。ダメだ! そんなの嘘だろ!?


「ええ!? 死んじゃったの? もしもーしオレンジ君生きてる?」


 オシリスは、しゃがみ込んで仁の頭を杖でつつく。仁の肩がピクッと動いた。まだ生きてる様だが、限界が近い。


「てめえ! 人の頭をそんなものでつつくな!」


 許されない行為に俺はオシリスを怒鳴る。そんな俺にオシリスは、ハァと深い溜息をつく。


「まったく君は物分かりが悪いなぁ。さっき僕を怒らせて親友がこんな姿になったのに。馬鹿だねぇ」


「うるせえ! 俺が何も言わなくても仁をボロボロにしただろ!」


 オシリスは、図星だったのかニヤリと笑う。


「アチャー、バレてた? おバカでも分かったかな?」


 俺は、奥歯を噛みしめる。歯がギチギチと言っている。


「ま、ちょっと君はうるさいね。少し静かにしていてもらおうかな? 今から作業するから。」


 オシリスは、俺に杖を向ける。そして、杖先から光が放出され、それが俺の左肩をかすめたる。


「グッ! いてぇ………………!」


 思ったよりも傷が深かったのか血がボタボタと出てきた。左肩から溢れた鮮血は、俺を掴んでいるトカゲを通じて地面にポタポタと垂れる。


「そんぐらいで痛いって笑えてくるなぁ。 オレンジ君の方が痛そうなのに…………………」


 すると、今まで動かなかったカエルがゆっくりと歩き出した。オシリスの前でカエルは跪く。


「カイシュウシマスカ? ソウルチガ10,000ヲ、コエテイマス。」


「おお〜! 回収するか!じゃ、面白そうだから、あのうるさい奴の目の前で回収してくれ。」


 オシリスは、俺の方を杖でピッと指差す。今から、何をする気なんだ?


「ハイ。ワカリマシタ」


 カエルの口から、赤く光る鎖がシュルシュルと出てきた。長さは、5メートルほどだろうか。


「ロック。テンソウジュンビカンリョウ」


 カエルの口から出てきた鎖は、仁の体にグルグルと巻きつく。


「おい! 仁に何をする気だ!」


「フロッグ。こっちに連れてこい」


「カシコマリマシタ」


 オシリスは俺の言うことを無視して、隣にカエルを連れて来ながら俺の方に向かってきた。

 仁は、カエルに鎖につながれ、フワフワと宙に浮き始めた。


「さあ! 僕は優しいから最後のお別れの挨拶を君にさせてあげるよ! いやぁ、僕って優しい!」


 俺の前に、仁を鎖に繋がれたままドサリと落としたオシリスは、ニヤニヤとしている。


「ふざけんな! 何がお別れだ!」


 地面でぐったりとしていた仁だったが、俺の方を何とか向いて唇が動き始めた。


「悠真、すまんぜよ……………傷つけないとか言っときながら、傷を負わせてしまったぜよハアハア…………」


 仁は、もう体がボロボロだ。呼吸も荒く、早く治療をしないと本当に死んでしまう。


「ふざけんな! 俺なんかよりも自分の心配をしてくれ!」


「じゃ、そろそろ転送しようかな。」


 オシリスは、無慈悲にそう言う。やはり、コイツの目はムシケラを見る目をしてやがる。


「待つぜよ、 時間をくれぜよ………… ハアハア………………」


 オシリスは、仁の方を向いて、腕を組む。


「うーん、転送まで時間がかかるからその間に別れの挨拶でもしたらいいんじゃない? 鎖につながれてるから何も出来ないと思うけどね〜」


 小馬鹿にしたかのような言い方をしたオシリスは、カエルの方を向く。


「じゃ、頼む」


「ハイ。テンソウカイシ」


 空に再びピラミッドの模様が一つ出てくる。そして、仁の体がゆっくりと光に包まれてきた。


「おい! 仁に何をした!」


 オシリスは、やれやれという呆れた顔を俺に向ける。


「転送、オレンジ君を回収するのが任務だからね。」


「ふざけんな! 仁の代わりに俺を連れてけ!」


 コイツらの目的は、最初から仁だったのか? 何故、仁なんだよ! 仁は、ただ普通に暮らしてただけなのに……………

 俺の言葉に、オシリスはハァと溜息をつく。


「君なんかを連れて行っても何もメリットがない。だから君みたいな家畜以下の存在と一緒にするな!」


 なんで、俺だとダメなんだよ。頼むから、仁を連れて行かないでくれよ!


「悠真……………」


 仁の体は、下半身からゆっくりと消え始めていた。まるで、入浴剤を浴槽に入れた時みたいだ。


「仁、大丈夫か! オシリス! やめろ! 頼むからやめてくれ!」


 俺の言葉にオシリスは何も答えない。それどころか、目も合わせない。


「悠真・、今までありがとうぜよ…………一緒に馬鹿やったり時には喧嘩をしたり、 毎日が楽しかったんだ………ガハッ!!」


 仁は吐血した。この吐血量は、医学の知識のない俺が見ても分かるが、致死量だ。


「おい! 大丈夫か!? オシリス! 頼む!やめてくれ!」


 オシリスは、再びこっちを向く。そして、嘲笑うかのような表情を浮かべる。


「君は何も出来なかった。だから、親友がこんな目にあっている。君が無力だから僕を止める事もできなかった! 全ては君の力不足だよ!」


 俺は、ハッとした。ハ、ハハハ……………… コイツの言っていることには一理あるかもしれないな。俺は、親友が目の前で苦しんでいるのに何もできなかった。


「確かにそうだな……… 俺は無力だ。親友が目の前で痛めつけられてるのに何も出来なかった! 」


「違うぜよ、悠真は無力なんかじゃないぜよ……………」


 仁のか細い声が聞こえた。もう肩まで消えかけている。


「仁……………でも、俺は何も出来なかった! お前が目の前で苦しんでいるのに何も出来なかった! 俺は無力なんだよ。」


 俺の目からは、涙がまた溢れかえる。なんで、俺は泣いてるんだよ。今、この場で一番泣きたいのは仁だろうが!


「そんなことはないぜよ、悠真がワシに剣道を進めてもらっていなかったら、ワシは弱いままだったぜよ。ワシは、剣道をして強い心と体を身につけたぜよ。ワシを強くしてくれた悠真が無力なはずはないぜよ………………」


 ガハッと仁はまた吐血をした。さっきよりも量が多く、体の限界がもうすぐそこだ。


「仁、 俺は………………」


「はい! 終了! フロッグ頼む!」


 俺が言おうとした言葉は、オシリスに遮られてしまう。ヤバイ、このままだと仁は………………


「ハイ、カシコマリマシタ」


「悠真、きっとまた会えるぜよ。だから、自殺なんてするんじゃないぜよ、これだけは守って欲しいぜよ、ワシとの約束ぜよ……………」


 仁は、もう顔の半分しか残っていない。嫌だ! 仁と離れ離れになんてなりたくない!


「まってくれ! 頼む! 行かないでくれ!」


 俺は、トカゲの腕の中で力を思いっきり振り絞って暴れる。しかし、機械のように鋼鉄なトカゲの体はビクともしない。


「テンソウカイシ」


「悠真、生きて、ワシの分まで神を倒して欲しいぜよ。」


 最後の言葉を残して、目の前で親友が消えた。この時、俺の中で何かが切れる音が響いた。


「ふぅ、一仕事終わり! あとは残りのソウルを回収して帰ろうかな!」


 オシリスは、首の骨をゴキゴキと鳴らし、両手を空に伸ばす。


「ああああああああああああ! 仁! 仁!ちくしょおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 発狂する俺をオシリスは、ドン引きした顔で俺の方を見る。


「なんだい? その目はさっきまで絶望の表情だったのに、なんだよ? その顔は?」


「ゆるさない…………絶対にゆるさない! 俺の! 親友を

返せ!」


 俺は、人生で1番怒り狂っていると思う。もし、この先、生きていたのならこれ以上に怒る事はないだろう。


「サッキマデ、クロダッタノガ、アカニナリマシタ。ドウシマス?」


 オシリスは、怒り狂う俺をマジマジと見つめる。


「ま、一応回収しとくか!」


 トカゲが、ついに俺を下ろした。地面にバタリと、俺と一緒に捕まってたサクラも落ちる。


「お前だけは、絶対にゆるさねぇ!」


 俺は、オシリスに向かって走る。あと先なんて考えていない、今は、コイツを殺す事しか頭にはない。


「静かに! すぐ楽にするからさ! 」


 オシリスの杖から光が放出される。ヤバい、この距離は避けられない。

 その時だった、俺の視界に茶色の小さな物体が入ってきた。


「ワン!」


 元気よく、いつものように吠えたサクラは、オシリスの杖から放出された光をもろに受けて、一瞬にして破裂た。  

 破裂した、肉体は原型を保っていなく、小さな黒焦げの肉片が辺りに散りばめられる。


「うわあああああああ! サクラァァ!」


 俺は、膝から崩れ落ち、今までのサクラとの思い出が脳裏に鮮明に蘇る。

 小学三年生の時に、仁と遊んでた公園で見つけた段ボールの中に入っていた子犬が、サクラだった。

 俺は、中にいた子犬を持って帰り、親から怒られたがなんとか説得して飼えるようになった。毎日の楽しい思い出が、頭の中でフィルムのように流れる。


「ああ……………サクラァァァ!」


「やれやれ、犬っころに助けてもらえるなんて、良い飼い主だね!」


 俺は、地面を握りしめて立ち上がる。ダメだ、コイツは俺の大切なものを全て奪いやがった!


「ふざけんな! てめえだけは何があっても殺す! 絶対に殺す!」


 オシリスは、呆れた顔で首を横に振る。完全に、なめられている。


「やれやれ、怖い事を言うねぇ」


「うるせえ! うおおおおお!」


 俺は、オシリスを殴ろうと拳を右頬に向かって振るう。


「本当に君はうるさいなあ!」


 しかし、オシリスはひらりと拳を避けて、俺の腹部目掛けて蹴りを入れる。衝撃は肋骨までに響き、ミシミシと骨が軋む音がする。


「ガハッ!」


 俺は、地面に倒れ、起き上がろうとするが足が言うことを聞かない。


「じゃ、ソウルにするか。リザード、頼む」


「ハイ」


 クソッ! 俺の人生はここで終わりか。これじゃ、仁に顔を合わせられないな……………


「じゃ、奪うよ! 君のソウルを!」


 その時だった、何かが俺とオシリス、そしてトカゲの間をすり抜ける。


「残念です、あなたは何も奪えませんでした。代わりに、私が右腕を奪っておきましたよ。」


 俺は、あまりの一瞬の出来事で、目の前で何がおきたか分からなかった。トカゲの首は無くなり、オシリスが杖を持っていた右腕が肘から無くなっていた。


「グワァァァァ! 痛い! 痛い!」


 オシリスは、痛みに悶えて、血が溢れかえっている右腕を抑えている。


「誰が、こんな事をやった! 僕の大切な右腕を!」


 オシリスは、後ろを向く。すると、オシリスが、後ろを向く事で、俺もオシリスの右腕を奪った奴を見る事が出来た。

 そこには、綺麗な銀髪をして、耳が生えている9本の尻尾を生やした少女が立っていた。


「君は、いったい何者だ? 俺を助けてくれたのか?」


「そうです。次は、私達が奪う番です。」


 その少女の目は怒りの目だった。だが、ほんの少しだけ寂しそうでもあった。

下手クソです!

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