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日常の大切さは終わった時に気づくもの  作者: KINOKO
第3章 母なる者
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返り血

視界が一瞬にして変わる。悲鳴や怒声が行き交うそこはまさしく戦場だ。

俺とミツレがワープした場所はスーパーのような建物の屋上だった。

下では坂田が言っていた対策本部らしい簡易テントがある。

そして、少し奥の方に見える黒煙が上がっている橋の方から担架で運ばれてくる人や、橋に向かう軍人や契約者のような人が見える。


「よし、ミツレ 俺らも行こう!」


「そうですね。まずは対策本部に行きましょう。」


俺とミツレは屋上からジャンプして地面に着地する。契約起動後の強化された姿だからか全然痛くない。

人が行き交う現場を縫うように移動して対策本部のテントがある場所まで着く。


「すいません、坂田さんからここに来たら分かるって言われて来たのですが。」


テントに座っていたゴリゴリでガチムチな体型をした迷彩服を着た軍人にミツレが話しかける。

一瞬、ギロリと睨んだ30歳ぐらいの男は坂田という名前を聞くとニコリと笑う。


「おー、君たちが坂田さんとこの子か、待ってたよ。私の名前は剛林 力、日本帝国軍で働いている者だ。」


剛林と名乗った男は俺とミツレに握手を求める。


「神崎 悠真です。よろしくおねがいします。」


「九尾 ミツレです。よろしくおねがいします。」


「ああ、よろしく! 」


ガッシリとして傷だらけの剛林の手は幾つもの戦場を乗り越えてきた戦士の手だった。


「では、早速だが君たちの任務を発表しよう。任務と言っても俺の部隊の後方支援だから安心だ。」


「後方支援ですか……………」


ミツレが少し俯く。ミツレは神を倒すために多くの実戦を積みたいはずだから悲しいのだろう。

それは俺も同じ気持ちだ。早く強くなりたい。


「神崎と九尾は坂田さんから請け負った大切な宝物だ。傷ついて返すのは俺の癪に触るからな。しかし、後方支援といえど100パーセント安全とは言い切れない。何があるのかが分からないのが戦場だ。」


さっきまで笑顔だった剛林だが、急に真面目な顔になる。坂田からの預かり物の俺たちは絶対に傷つけたくないらしい。


「分かりました! 後方支援頑張ります!」


「ガハハハ! しかし俺の部隊は精鋭揃いだからお前らの舞台はないかもしれないぞ!」


立ち上がった剛林は奥からマシンガンを取り出し、防弾チョッキと肘当てとすね当てを付ける。そして、ヘルメットを被り、俺とミツレの前に現れる。


「よし、行くぞ。お前らは1番後ろからついてこい!」


ガチャっと弾をリロードし、口笛を吹くとゾロゾロとゴツい体型の男達が集まる。これが剛林の部隊なのだろう。俺たち含めて20人ほどだ。俺とミツレ以外は全員 軍人のようだ。


「行くぞっ! 目標は相手戦力の撲滅と一般市民の救助だ!」


「おおおおおおお!!!」


剛林の叫びに部隊の戦士達は呼応する。俺とミツレも負けじと声を出す。


「剛林隊 進めええ!!!」


剛林隊は走りながら橋の奥へと進んで行く。10分ほど走っていると先頭集団が止まる。


「来たか………… 全員 掃射っ!」


1番後ろにいる俺たちは何が起こっているのかが見えないが何者かに対して先頭集団が銃を乱射している。


「全員、掃射やめ! 先に行くぞ!」


しばらくして銃声が剛林の声とともに止む。そしてまた走り出す。


「一体、何に対して撃っていたんだ………?」


「神崎さん! あれを見てください!」


走りながら、ミツレはさっきまで先頭集団がいた場所を示す。そこには穴ぼこだらけになった三体のリザードが倒れていた。


「凄い威力だな。こんな威力なら契約しなくても倒せるんじゃないか?」


「いえ、それは厳しいですね。普通の銃だとリザードに穴を開ける事なんて出来ません。」


「お、嬢ちゃん よく知ってんじゃねーか。これは普通の銃じゃないぞ。」


俺とミツレが話しながら走ってると前を走っていた20歳ぐらいの男から話しかけられる。

爽やかな顔立ちの男は肩に掛けていたマシンガンを手元に下ろすと、


「この銃は体内のソウルをエネルギーに変換して撃つ事が出来るんだ。並大抵の銃の威力ではソウルハンターや神には効かないが、この銃だと同時攻撃でないと少し厳しいが倒す事が出来る。」


俺とミツレに銃を見せ終わると、肩にまたかける。


「なるほど、確かにソウルのエネルギーは莫大ですし良い武器ですね。」


「ああ、俺は契約者には適正がなくてなれなかったが、こうして国を守っている。そしてこの戦いが終わったら彼女にプロポーズするんだ。」


プロポーズと言うと男は少し照れ顔になる。守り方は人それぞれで、この人は別の守り方で国を守っているんだな。


「あ、少し離れてしまったな。早く行くぞっ!」


話しすぎて俺たち3人は部隊から少し離れてしまった。男はダッシュで部隊に追いつく。俺とミツレを後を追う。

その時だった、俺とミツレの顔に水がかかる。


「うわっ! 海水か!?」


「か、神崎さん これ………………」


ミツレは手を震わせながら前を指差す。そこには俺たち以外の軍人達のバラバラに切り刻まれた死体が転がっていた。原型は無く、細切れ肉のようだ。


「うわああああ!!」


俺とミツレの顔にかかったのは水ではなく、返り血だったのだ。





テスト期間が終わったので今日から1週間一本投稿再開します!

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