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日常の大切さは終わった時に気づくもの  作者: KINOKO
第3章 母なる者
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坂田の選択

「ギリシャ神王国か、君主は確かゼウスだったな。それにしてもこのタイミングとはな。参ったな。」


坂田は頭をボリボリと掻き、後ろの病院をチラリと見る。ヤクザに追われて逃げてきたと見られる2人を置いて、八岐橋の方に行くのは気が引けるのだろう。


「すまない、ゲンさんから電話だ。はい、紋様から見てギリシャ新王国で間違いありません。それと、行方不明の二人を見つけました。ええ、分かっています。しかし、榊原組が関わっていて………… え!? 分かりました。」


話の間を裂くように掛かってきた電話に坂田は出る。電話を切った坂田は申し訳なさそうに俺とミツレを見る。


「ゲンさんからの伝言で、山口神対策局総動員と近隣に駐留している日本帝国軍隊でギリシャ神王国の相手をするらしい。それと、近くの県の神対策局にも応援を頼むらしい。」


「それなら心配はないっすね! 」


しかし、ミツレと坂田の顔は曇ったままだ。神対策局総動員と我らが日本帝国の軍隊がいたら撃退するのはできるはずなのにどうしてだ?


「ゲンさんの話には続きがある。今回の襲撃は神王国の中でもトップクラスの大きさのギリシャ神王国だ。正直、山口神対策局と日本帝国軍でも足りないぐらいだ。そこで応援に俺たちや隣県の対策局に応援が頼まれたわけだ。」


「坂田さんの言う通りです。ギリシャ神王国の軍事力はトップクラスです。それにあの国は他の国に比べて神民(カミノタミ)を多く出兵させる事で有名ですし、足りないくらいです。」


「ああ、ソウルハンターみたいなロボットの兵士だと処理するのが楽なんだが、神民だと難しいんだ。」


んん? 神民ってなんなんだ…………? 神やソウルハンター以外の敵がいるって事なのか?


「ちょ、ちょっと待ってください! 神民ってなんなんすか?」


俺が知らない単語で真剣に話しているミツレと坂田に質問してしまう。

俺の無知さにミツレは呆れたのか、死んだ目で


「神崎さん、神民も知らないんですか………」


「まぁまぁ、ミツレ。そういえば悠真には神民について話してなかったな。神民って言うのは簡単に言うと神王国で暮らす、魔力を持った奴らの事だ。神では無いが妖獣界の人達より平均的に高い魔力量を保持している。ソウルハンターみたいなロボット兵と違って、自分達の意思で行動する神直属の兵隊だ。」


なるほど、つまり神民ってのは俺たちと同じように意思があり、ソウルハンターより強く神よりは弱いってわけか。しかし、坂田の話を聞く限り続きがありそうだ。


「これだけでもかなり厄介なんだが、たまに神同等の魔力を保持している神民がいるんだ。これは俺の推測だが、経験が不足している神が神民の中に入ってると思うんだ。」


「確かに厄介ですね。あと、神は命が3つだけど神民はどうなんですか?」


「その質問には私が答えます。実は神民の命の個数はバラツキがあるんです。1つか2つ、ごく稀に3つ持っています。」


坂田が俺の問いに答えようとしたが、少し放置されて怒ったのか、ミツレがムスッとした顔で答えた。


「ま、そういう訳で神民ってのは処理するのが少し大変なんだ。実力もバラツキがあるし普通に殺される事だってある。俺も、神民に殺されかけた事が数え切れないぐらいあるぞ。」


坂田が急に真剣な顔になって言う。その言葉に俺はゾッとした。そうだよな、ソウルハンターとは違って自分の意思で行動し、神に近いほどの魔力を持っている奴らだ。強い奴がいるに決まってる。


「神崎さん、大丈夫ですよ。神崎さんは気づいていないかも知れませんが初めて出会った時より数倍は強くなってると私は思います。それに、私が隣にいる限り神崎さんを殺させたりはしませんよ。」


坂田の言葉で不安になった俺に感づいたのか、ミツレが優しい笑みを浮かべて俺を励ます。


「そうだぞ悠真、お前は神民にやられるような男じゃない。胸を張れ!」


フッと笑った坂田は、俺の胸に拳を当てる。そうだ、俺の事をこんなに信頼してくれる人がいるんだ。ビビってる場合かよ!


「そうですよね、じゃ、早く橋のとこに行きましょう!」


俺とミツレが坂田の車がある方に向かおうとすると、坂田が腕を引っ張る。


「どうしたんすか坂田さん、早く行かないと!」


「そうですよ! 一般の人も巻き込まれてるかもしれません!」


「俺は八岐橋には行けない。」


坂田は目を横目に反らしながら気まずそうに言う。行けないってどう言う事だ……………?


「何故ですか? 」


「榊原組だ。二人は榊原組に追われてここに逃げてきた。いずれこの病院もバレてしまうだろう。しかも、妖獣界の白虎がやられるという事は相手は契約者、もしくは妖獣界の者が関わっているから、俺は二人を守らなければならない。この病院でほぼ確実に二人を守れるのは俺だけだ。」


そうか、白虎と氷華はヤクザの榊原組に追われてたんだったな。確かに、二人を確実に守れるのはこの場に坂田しかいない。


「なるほど、確かに妖獣界出身の白虎ならその気になれば魔力を使って抵抗出来たのに、やられるという事は相手は契約者か妖獣界の者という事になりますね。」


「ああ、そういう訳で俺は橋には行けない。すまないが二人で行ってくれるか?」


坂田は俺とミツレを透き通った瞳で見る。本当はまた命を失うかもしれない戦場に行くのはとても怖いし嫌だ。

でも、俺と同じように大切な人を失って悲しむ人が増えるのはもっと嫌だ。


「はい、俺とミツレで行ってきます。行けるよなミツレ?」


「もちろんです、神崎さん一人で行かせるのは心配です。」


なんかミツレが俺の保護者みたいで少し男として萎えるが付いてきてくれるのは心強い。


「本当にすまないな。今回の襲撃は八岐橋の8つの橋のうち1つが標的だ。少し汚いがここだ。」


坂田はどこかに電話しながら、スーツの右胸からメモ帳を取り出し、何かを書き俺に渡す。

それは簡単に書いた日本地図と橋の詳しい位置を記したものだった。


挿絵(By みてみん)


サササッと描いた割には色を使ったりして丁寧に描かれた日本地図は坂田の几帳面な性格を表しているのだろう。


「この赤丸が襲撃を受けた場所で黒丸が俺たちの大体の位置だ。距離は少しあるが、悠真の力を使えばいけるはずだ。」


「分かりました! 行くぞミツレ!」


「はい、坂田さん、二人を頼みます。」


「ああ、お前らも無事に帰って来いよ。橋の入り口付近に対策本部が設けられてるから、そこで指示を聞くように。それと、こっちが片付き次第、すぐに応援に行くからな。」


坂田から肩を叩かれた俺とミツレは、向かい合い一緒に唱える。


「「契約起動!」」


光に包まれた俺とミツレは契約起動後の姿へと変わる。


「早くしないとな、五の力 起動! 」


視界が一気に薄緑色になり、頭の中で目的地を念じると距離や風向きなどが表示される。千里眼の指示に従うように腕を適正な位置まであげる。


「よし、調節完了だ。ミツレ、背中に手を置いてくれ。」


「分かりました。」


ミツレが俺の背中に手を当てた事を確認し、


「三の力 起動! からのウオリャアッ!」


五の力を解除し、次に瞬間移動する三の力を起動する。そして三の力で出現したナイフを思いっきり目的の方向にぶん投げる。


「そろそろかな。じゃ、後は頼みます坂田さん!」


30秒ほど待ち、俺は後ろにいる坂田の方を振り返る。坂田はコクリと頷き、


「ああ、こっちは俺に任せろ。」




「遠隔起動っ!」




この時、悠真とミツレは気づいていなかった。信じていた人の裏切りがどれだけ辛いのかを。

そして愛とは何なのかを。

1週間一本投稿はまだまだいきますよ!

でも、中々ツライですね〜

書くのは楽しいのですが時間が無くて・・・・

アドレスや感想待ってます!

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