二つの嫌な予感
「と、とりあえず行くぞ!何か出来るかもしれない!」
「え、ちょっと神崎さん!」
白虎と氷華が現れてたから立ち尽くしたままのミツレの手を強引に引いて、坂田の隣にしゃがむ。
「フッ、誰かと思ったら九尾か。白虎…………じゃなくて流風はお前の事は絶対に許さない………から。マザ」
坂田の左隣にいた白虎は正面にいたミツレを睨みながら、何かを言おうとしたが倒れてしまった。倒れた瞬間に下腹部から血が床に広がる。
「コイツも大怪我してたのか! かなり無茶して星宮 氷華をここまで運んできたみたいだな。」
俺は坂田と協力して白虎を氷華と同じ安静な体制にした。横になり、天井を見上げるような姿勢だ。
「ん? 何ですかこれ。」
ミツレの手の内には金色に輝く、学生服に付いているようなボタンが握られていた。中央には大きく榊と書かれている。
「どっかの高校か中学の制服のボタンか? てか、ミツレこれどこにあったんだ?」
ミツレからボタンをヒョイっと回収して眺めてみる。しかし、なんか禍々しいボタンだな。
俺の問いに対してミツレは白虎の方を指差す。
「白虎の手の近くに落ちていたので、白虎の持ち物でしょう。私の知る限りでは、このようなものは持っていなかったと思うのですが……… 榊とか聞いたこともありませんし。」
「榊? まさか……………!」
白虎の簡易的な止血が終わった坂田がミツレの方に歩み、ボタンを見る。ボタンを見た坂田は、ミツレの手からボタンを取り上げると、
「これは山口県で一番大きなヤクザの榊原組のボタンのような形をしているで有名なバッジだ。コイツらまさかヤクザと関係あるのか?」
ヤクザと関係があるだと!? じゃあ、俺が今朝見た黒服のゴツい男はヤクザかもしれないのか。
しかし、どうして……………
「坂田!重患が一人と聞いたが、その娘かい?」
ドスドスと額に汗を滲ませた、大柄なメガネをかけた坂田と同い年ぐらいの男が受付のおばさんと一緒に走ってやってきた。
ドクターとはこの人のことだろう。
「近藤、すまない二人だった。早速見てやってくれ。腕とか足の出血の止血はしておいたが一番酷いと思われる下腹部は何もしてないんだ。素人がやるのは危ないと思ってな。」
近藤と言われた男は、銀色のアタッシュケースを床に置き、坂田の隣にしゃがむ。
「賢明な判断だ。あとは私に任せてくれ。」
「ああ、頼んだ。」
近藤はアタッシュケースから黒色の大きめのタオルを取り出し、氷華と白虎の腰の部分にかける。
そして、ライトで下半身の方を照らす。こっちからだとタオルが覆いかぶさっているので中を見る事は出来ない。
医者として患者が見られたくない部分は隠しているのだろう、流石だ。
「ん? これは………」
氷華を治療してた近藤の手がピタリと止まった。そして、顔も険しくなる。
「どうしたんですか、先生?」
「これは酷いぞ。まさか………!」
おばさんの質問も無視して、次は白虎の下半身を見る。少しして、
「坂田、これは警察の手も必要だ。二人とも、子宮の奥深くまでビール瓶の破片のような物がいくつも入っている。」
そう言った、近藤の右手には、血だらけの3センチほどの茶褐色のガラスの破片が握られていた。
「なんだと!? 二人とも治るんだよな?」
坂田が声を大きくして近藤に言う。しかし、近藤は首を横に振る。
「無理だ。ここまでの状態だと子宮を取り出さないといけないから、二人とも子供を産む事は出来なくなる。」
「そんな………………」
俺の横にいたミツレが膝から崩れ落ちて、顔を手で覆う。同じ女性として、その事実の辛さがこの場にいる誰よりも分かるのだろう。
「とりあえず、手術をして出来るとこまでやってみる。」
「ああ、金は俺が出すから全力でやってくれ。」
「勿論だ。患者を目の前にして全力を出さない医者なんていない。」
そう言いながら、近藤は坂田と一緒に白虎を担架の上に乗せる。俺とミツレは氷華を担架に乗せた。
少しして、4人の看護婦が来て担架を急ぎ足で運んで行った。
近藤と一緒に手術室に行ったのでロビーに取り残されたのは俺とミツレ、坂田だけだ。
さっきまで周りにいた他の入院者も各自の部屋に戻って行った。
「しかし、榊原組か………… 厄介な事になりそうだ。」
坂田が手のひらにあるミツレから回収したバッヂを眺める。
「榊原組って何なんですか? 」
ミツレが坂田に問う。俺も榊原組というものは聞いた事もない。組とあるからヤクザということだけは分かる。
「全国でも悪名を轟かせているヤクザだ。違法薬物や銃の密輸入などで有名だ。しかも、未成年を対象にしているからタチが悪い連中だ。」
未成年を対象にしているヤクザか………… よくドラマとかアニメだとヤクザって良いやつだけど、現実ではそんなヤツらはヤクザなんてしないよな。
「じゃあ、白虎が榊原組のバッヂを持ってたって事は………」
嫌な予感がしたので俺も坂田に問う。未成年を対象に活動しているヤクザだ。嫌な予感しかしない。
「ああ、ほぼ100パーセント 榊原組が関わっているだろうな。2人は榊原組から逃げてきたんだろう。ここもじきにバレるな。」
「そんな…………」
その直後だった。海の方から、ドオオオンという凄まじい爆音が響き、病院が揺れた。
一瞬、よろめき床に倒れそうになる。
「な、なんだ!? 地震か?」
「まさか………………!」
坂田は何を思ったのか病院の外に走って向かう。
「坂田さん! 待ってください!」
俺とミツレも坂田の後を追い、病院の外に出る。
「クソ! 嫌な予感は的中だ。」
坂田の指差す方向は、ここからそこまで遠くないところにある本州と九州を繋ぐ、8つの橋八岐橋の方だ。
少しボンヤリと見える八岐橋の1つが黒煙を立ち上がらせている。
しかし、坂田が指差した正しい方向は八岐橋上空の空だ。
空いっぱいに神が現れる時の現れる魔法陣がある。しかし、その魔法陣の中央には柱が3つある神殿のようなものが描かれている。
初めて見る模様だ。
「あれはギリシャ神王国です! 神王国の中でもかなりの強大な国です。」
「このタイミングでマジかよ…………」
1週間一本投稿 第2回目! いやー、地味に大変ですね・・・・
でも、まだ書き足りないのでドンドン書きますよ〜!
アドバイスや感想待ってます!




