捜索開始
「どうしたんだ二人とも、何かあったのか? 急に立ち上がるなんて。」
俺とミツレはほぼ同時に立ち上がっていた。いや、だって今朝あった奴が行方不明で捜索中とかあり得るのか!?
「俺、星宮 氷華と今朝会ったんすよ! 入院先の病院近くの砂浜に散歩に行った時に。」
「なにぃ!? それは本当か! 今すぐ、その付近の病院の捜索網を広げるぞ!」
衝撃的な事実を知ったゲンは大声をあげて、厨房へと走って消えた。
「ちょ、ちょっとゲンさん!? 」
急に厨房に走っていったゲンを坂田は後を追うように追いかける。
この場に取り残されたのは俺とミツレだけだ。
「てか、ミツレは何で驚いてたんだ? 星宮 氷華の事は知らないはずだろう?」
俺はミツレが驚いて、席を立った理由を聞いてみた。ミツレは少し言いづらそうに、
「もう一人の行方不明者の白虎は私と同じ孤児院で育った同年代の孤児です。孤児院出身者の数少ない生き残りでこっちの世界に来る時に離れ離れになってしまったんです。」
同じ釜の飯を食べたはずの仲間の安否が確認できたのにミツレの表情は何とも言えない感じだった。
「まだハッキリと安全とは言えないけど仲間が見つかってよかったなミツレ!」
微妙な表情をしてたミツレを励ますためにワザと大きな声を出し、ミツレの肩をポンと叩いてみる。
「……………そうですね。」
しかし、ミツレの表情は変わらない。何かまずい事でも言ったかな………………
「お前ら! 今から捜索に行くぞ。 今は証拠がある星宮を優先にする事に決定した。俺とミツレ、悠真で先に病院付近で聞き込みと捜索をするぞ。その間にゲンさんには応援を呼びに頼んでもらった。」
厨房の奥から出てきた坂田が慌てた様子で車のキーを俺たちに見せつける。一緒に出てきたゲンはスマホで誰かと電話をしている。どうやら応援を呼んでいるらしい。
「分かりました! よし行くぞミツレ!」
無言のミツレの手を引き、駐車場に走ってく坂田の後を追う。車の後部座席に俺とミツレは飛び乗り、坂田が勢いよく車を発進させる。
「悠真、星宮はどんな奴か覚えてるか? 行方不明になる前と特徴が一致してるか一応確認しときたいからな。」
坂田は車を右手で運転しながら、左後ろに座っている俺をチラリと見る。
「はい、覚えてます。背は俺より少し小さいぐらいで、あ! ミツレと同じくらいです。髪の毛は肩ぐらいまでありました。俺が見たときの服装は真っ白なワンピースでしたね。それと、男と一緒に黒い車に乗り去って行くのを見ました。」
坂田は顎のヒゲをジョリジョリ触りながら、
「完全に一致だ。行方不明になる前の保護先の施設の人が言ってた事と身体的特徴がビンゴだ。しかし、黒い車ってのが気になるな。ナンバーとかは流石に分からないか?」
俺は右手をこめかみにやりながら必死で今朝の事を思い出す。しかし、車のナンバーまでは思い出せない。
「すいません、覚えてません。車の車種も俺は詳しくないので分かりませんが中型車でしたね。」
「いいや、それだけ分かったのだけでも大きな進歩だ。でかしたぞ悠真。」
坂田に褒められるとなんだか安心する。顔は堅物そうで怖い坂田だけど、性格はとても優しい。
「しかし、もう一人の白虎の情報が無さすぎるんだよな。保護先の人もよくお手伝いをしていた星宮は覚えている人が多かったらしいんだけど、白虎の事は同じ施設にいたぐらいしか分かっていないんだ。んー、困ったな」
氷華の人当たりが良い性格なら被災者の人たちからも覚えられやすいだろう。でも、同じ施設にいたぐらいしか分からない白虎って何者なんだ。
「背は私よりも少し低くて、痩せ型で群青色の髪のショートボブの女です。白色の小さめの耳が二つ生えていて、白と黒のシマシマ模様の尻尾が一本生えています。」
急に口を開いたミツレに俺と坂田はビックリして一瞬固まる。
「どういうことだミツレ、どうしてお前が白虎の情報を知っている?それと、なぜもっと早く言わなかった?」
坂田の口調が少し険しくなる。きっと、山口神対策局にいた時に話さなかった事を怒っているのだろう。
「待ってください坂田さん、ミツレは白虎の名前を聞いた時から様子がおかしかったんです。なにか理由があるはずです。」
少しだけ怒った坂田をなだめるために、山口神対策局の時の様子が少し変だったミツレの話題を持ちかける。
すると坂田は、
「本当かミツレ? なにか話にくかった理由があるなら攻めてすまなかった。」
「いえ、大丈夫です。悪いのは私ですし。それに」
ミツレが何かを話そうとしたが車が止まる。どうやら目的地の俺とミツレが今朝いた病院に着いたようだ。
「すまないミツレ、話を聞いてあげたいが今は二人の事が最優先だ。さぁ、行くぞ!」
少し申し訳なさそうな顔をした坂田は車のキーを抜き、運転席から降りる。
「………………分かりました。」
俺とミツレも車から降りる。少し前を歩く坂田の後を追う。ミツレはやはり様子がおかしい。
「本当に大丈夫なのか? 白虎の名前聞いたあたりから変だぞ。」
一応、病院に入る前にミツレに聞いてみたが、俺と目があうとミツレは少し頰を緩めると、
「大丈夫ですよ、少し動揺しただけです。」
「そっか、ならいいんだけどな。」
「おーい、お前ら〜! 喋ってないで早く来い!」
止まって話したせいか、坂田との間に差が広がってしまい病院の入り口前にいる坂田が手を振っている。
「すいません!今行きます!」
それを見た俺とミツレは小走りで坂田の元に行く。
「よし、じゃ行くぞ。」
病院の自動ドアが開き、カウンターにいる今朝も会ったおばさんに坂田が話しかける。
「環境省、いや神対策局の者です。そちらの病院付近で星宮 氷華という行方不明の少女が現れたと聞いたのですが何か心当たりはありますか?」
俺と目が合った受付カウンターのおばさんは少しお辞儀をして、坂田の方に目を向けると、
「うーん、そんな話は聞いた事ないわねぇ。周辺で毎朝掃除をしているけど、そんな話は一度も耳に入った事はないわ。」
受付のおばさんは少し申し訳なさそうに頭をかく。
「そうですか。ありがとうございました。では、これで失礼します。」
坂田はおばさんに一礼をして俺たちの方を振り返り、病院を出ようと出口に向かった瞬間、俺たちが自動ドアに着く前に、自動ドアが開いた。
「誰かぁ!! 氷華を! 助けて! 」
突如大声を出して病院内に濃い青色のショートヘアの女がボロボロの体で片足を引きずりながら現れた。
女の右肩には白色のワンピースを着ていたはずの氷華がいた。しかし、氷華は腹部から下が血だらけで意識がない。
「大変だ! おばさん! 今すぐドクターを!」
「わ、分かったわ!」
坂田はすぐに二人に駆け寄り、受付のおばさんは医者を呼びに何処かへ走っていった。
「ミツレ! 俺たちも氷華とあの女のとこに行って、何か出来ないか聞くぞ!」
突如現れた謎のボロボロの女と氷華に病院内は激しく混乱する。ミツレも混乱してるのか立ち尽くしたままだ。
「白虎です。どうして白虎がここに…………」
ミツレは下を俯きながら坂田と一緒に氷華を止血している女を指差す。
「あれが白虎なのか!?」
1週間に一本を目標に投稿していきます!
アドレスや感想待ってますー




