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日常の大切さは終わった時に気づくもの  作者: KINOKO
第3章 母なる者
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豚野郎

「ブッヒャッヒャ! 持ち主がゴミだったから眼鏡もゴミみたいなこ強度だね!パパ!」


「ホッホッホ。さすがは龍介、ゴミの処理の仕方が上手いのぅ。」


何なんだよ、コイツら! 頭いかれてやがる。

辺りに飛び散った眼鏡のカケラは光を反射してキラキラと光っている。


「何をポカンとしておる坂田。お前が持ってきたゴミじゃ。掃除せんかい」


あまりの出来事で立ち尽くしている坂田に龍麻呂は言う。5秒ほどの沈黙の後に坂田は、


「そうですね、拾います。」


「じゃ、坂田が拾ってる間に麻呂はションベンをしてくるかのぅ。」


龍麻呂は重い腰を上げ、廊下に消えていった。この場にいる三門家は龍介だけである。

いつもの坂田の声には張りがあり突き通った声なのだが、この時の声はとても弱々しく、その内に激しい怒りが籠っていた。


「…………………豚が。」


坂田がしゃがみ込んでエスピーと一緒に踏み潰されて割れた眼鏡のカケラを拾っていて、それを眺めることしか出来ない俺の隣でミツレがポツリと言い放った。ミツレがそれを言った瞬間に場の空気は静まり、時が止まったようだった。


「あ? 今、僕ちんのこと豚って言ったよなぁ!? 銀髪女!」


「いえ……………… 独り言です。」


ミツレはそっぽを向き、強がってるようだが足はガクガクと震えていた。


「ミツレっ! すいません、余計なことを言ってしまって!」


龍介が怒鳴った瞬間に坂田は立ち上がり、座布団に座っている龍介と立っているミツレの間に入る。


「いーや、コイツは僕ちんの事を豚と言った! いくらパパと仲良しの坂田の知り合いでも許せない!」


そう言うと龍介は立ち上がり、裸足のまま庭に降りると立ち塞がっている坂田を押し抜けミツレの胸ぐらを掴む。


「今なら僕ちんに言った無礼を謝れば許してあげる。さぁ、謝れ!!」


ミツレの胸ぐらを掴みながら龍介は顔を近づける。それに対してミツレは冷ややかな汚物を見るような目で龍介を見る。


「私はただ独り言を言っただけです。その()()()が気にくわないなら謝りますよ。」


「ムキーっ! 僕ちんはお前みたいな生意気な女が大嫌いだ!」


龍介は顔を真っ赤に染め上げ、少しずつミツレの上体を上げていく。太っている体なのに筋肉があるらしい。


「くっ……………!」


ミツレは一瞬、右側にいる何もできない俺と目が合った。目が合った瞬間に目をそらされたが、苦しそうな表情をしていた。その表情が見えた瞬間、俺は龍介の左手を掴んでいた。


「おい、なんだその手はぁ!? 貴様も僕ちんに逆らうのか? 」


「ミツレから手を離してやってくれ。その分、俺に好きにやっていいから。」


俺は少しずつ右手に力を込める。今、龍麻呂が戻ってきたら俺は殺されるだろう。でも、俺はこんなクズにミツレが触られるならやってやる!


「痛いな! 僕ちんは三門 龍介だぞ!」


龍介はミツレから手を離すと左手を抑える。


「それは分かってる。だから、ミツレの分を俺にしてくれ。」


「ブッヒャッヒャ、主人公気取りかぁ? 後悔させてやんよ!」


ゴキゴキと両手の骨を鳴らしながら龍介は俺に近づき、拳を振り上げる。神に比べたら屁でもない攻撃だ、くらう覚悟はできている…………!


「やりすぎです、龍介殿。父上様にまたお叱りになられますよ?」


振り上げられた龍介のクリームパンみたいな拳を坂田が片手で軽々と受け止める。


「お前も僕ちんに反抗するのかぁ? 坂田ぁ!!」


坂田の右手から手を引き抜き、今度は坂田に殴ろうとするがその時、


「コラっ! 龍介と言えど麻呂の忠実な犬である坂田を傷つけるのは許さん! さぁ、部屋に戻りなさい!」


トイレから戻ってきた龍麻呂の声により龍介の拳はピタリと止まった。龍介は土に汚れた足のまま、屋敷に上がり奥に姿を消した。


「大丈夫か 坂田? 主に傷つかれては麻呂の犬が1匹減ってしまうからのぅ。坂田じゃなかったら止めなかったんじゃが」


そう言うとチラリと俺とミツレの方を見る。どうやら、俺とミツレだったら止めには入らなかったらしい。


「龍介殿をお止めになってくださり感謝します。では、私たちはこれで」


「そうか、泊まってってもいいんじゃぞ?」


龍麻呂はそう言ったが、坂田は俺とミツレを後ろ目で見て、


「いえ、明日も朝早くから仕事がありますし失礼します。」


「また、来ても良いからの。」


坂田は一礼し俺がいる後ろを向く。坂田が頭を下げた瞬間に俺とミツレも頭を下げたので一瞬しか坂田の表情は見れなかったが、その表情は憎しみや怒りではなく悔しそうな顔だった。





俺たちは何も喋る事はなく三門家の屋敷を後にした。大きな駐車場で車に乗り、走らせた時にミツレが口を開いた。


「ごめんなさい! 私のせいで坂田さんと神崎さんを危険な目に合わせてしまいました。私の落ち度です。」


ミツレは頭を深々と車のシートに座ったまま下げる。坂田は運転席からバックミラー越しにミツレのことを見ると、


「ミツレ、顔を上げろ。お前がした事は間違いではない。何も知らなかったお前らはあんな事をしても仕方がなかった。俺だって、何も知らなかったらアイツらをぶん殴ってたさ」


坂田はミツレを元気づけるために三門家にいた時より明るく喋るが無理をしている感じがあった。


「ミツレ、俺だって何度も殴りかかりそうになったんだ。その度にミツレは止めてくれたけど、ミツレを止めれなかった俺にも落ち度はある。一人で抱え込むなよ」


俺は頭を下げっぱなしのミツレの肩をそっと掴み、顔を上げる。ミツレは涙ぐんだ目で


「本当にごめんなさい…………! う、うう………」


震えた声を出しながらミツレは静かに泣いた。自分がしてしまった事に対しての責任感が強すぎるのだろう。ミツレの性格上、自分のせいで誰かが傷つくのは一番嫌なはずだ。


「泣くんじゃねぇよ、俺だって自分の無力さに泣きたい。落ち着いたら四頂家の事についても話すから、今は何も考えるな。」


坂田はそう言うとタバコに火を付ける。しかし、震えた手で火を付けるのは中々難しく苦戦していた。

三門家のあの場所で俺はミツレみたいに静かに反撃する事も、自分の意思を貫いて静かに耐えた坂田のような事は出来なかった。


この日、悠真は己の無力さや幼稚さをもう一度痛感したのであった。

やっぱり、クズキャラを書くのは難しいですね。

下手くそです!アドバイスお願いします!

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