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日常の大切さは終わった時に気づくもの  作者: KINOKO
第3章 母なる者
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四頂家 三門

屋敷の中は外から見た時と同じで平安貴族のような感じだ。

石造りの一本道の上を俺たちは庭園の中を歩く。右手側には大きな池があり、カラフルな錦鯉がたくさんいる。

門をくぐり、100メートルほど歩くと屋敷が見えた。赤色の屋根をした、しつこいようだが平安貴族の様な御殿だ。

俺とミツレ、そして坂田は御殿の目の前に着くと先導していたエスピーから、


「では、こちらで履物をお脱ぎになってください。」


と屋敷に入るように言われたが坂田は真顔で、


「いえ、すぐに済む話なので大丈夫です。」


それを聞いたエスピーは一瞬、呆れたような顔をしたがサングラスのせいで詳しい表情は見えない。


「では、ここで少しお待ちください。当主様をお呼びになってきます。」


エスピーはそう言うと黒い革靴を脱ぎ、屋敷の中に入る。


「坂田さん、すぐに済む話では無いですよね?」


ミツレが坂田に聞く。確かにそうだ、実の娘の杏が亡くなったのに()()()()()()という言い方は少し許されない。


「俺だって、すぐに済ませたくはない。でも」


「やぁ、坂田 久しぶりじゃないか。どうしたのだね? 麻呂に用とは随分図が高いではないか。坂田じゃなかったら死刑もんじゃぞ。」


坂田は握りこぶしを固めながら何かを言おうとしたが、俺らの視線の目の前にある大きな襖を開ける音と左右に若い着物を着た女を連れた小太りの男の声に消される。小太りの中年男の格好は平安貴族風の屋敷に似合った、これまた平安貴族のような黒い着物を着ている。


「お忙しいなかすいません、四頂家(しこうけ)の三門一族、現当主の三門 龍麻呂(たつまろ)様と話が出来て光栄です。」


坂田はそう言うと現れた龍麻呂というオッサン相手に深々と頭を下げる。ポカンとしている俺とミツレに気づき、慌てて裾を引っ張る。頭を下げろという合図だと判断し俺とミツレも黙って深々と頭を下げる。


「ホッホッホ、麻呂は坂田の真面目なところが大好きじゃ。それと、両隣におる子供は何者じゃ? 麻呂は坂田一人で来ると聞いたぞ?」


坂田に対してはニコニコしている龍麻呂は俺とミツレを見ると声のトーンと目つきがガラッと変わる。


「そこは本当に申し訳ありません。こっちの男のほうは九州を襲った神の襲撃の生存者です。そして、女の方は彼の契約者の妖獣界の者です。二人とも、オシリス撃退や更にはツクヨミとも遭遇するなど素晴らしい功績の持ち主です。今は私が保護していますが龍麻呂様にも紹介したいと思ったところでございます。」


それを聞くと、龍麻呂の顔は少し穏やかになる。アゴに生えた髭を弄るりながら俺とミツレを見る。


「ほぅ、神を撃退するとはな。確かに素晴らしい若者たちじゃ。坂田がそこまで絶賛するなら間違いはないだろう。」


コイツの前では変な事を喋らない方がいいと思ったので俺とミツレはまた無言で礼をする。


「お褒めになってくださり感謝します。」


「して、坂田よ若者たちの紹介のために麻呂を読んだのではないのじゃろう? 本当の用事とは何事ぞ?」


屋敷の奥からエスピー二人が急須と湯飲み、それに座布団を持ってきて敷き、それに座り茶を啜りながら龍麻呂は坂田に尋ねる。


「単刀直入に言いますが、杏さんが先日の福岡で起きた神の襲撃によって亡くなりました。」


坂田は握りこぶしを固め、うつむきながら龍麻呂に言う。実の親だ、俺たちよりも計り知れない悲しみだろう。

しかし、龍麻呂から返ってきた言葉は意外すぎるものだった。


「ほう、そうか。で? 前座はよしとして本題はなんじゃ?」


龍麻呂は特ににこやかな表情をまったく変えずに坂田に問う。

は? おい聞き間違いだよな! 実の親がそんな事言うはずがない!


「いえ、本題は杏さんが亡くなった事です………」


坂田の拳を握る力が強くなる。頭をプルプルと震わせながら龍麻呂を見る。


「ホッホッホ! 坂田は堅物のくせに冗談が上手いのぅ! 失敗作が死んだ事をわざわざ伝えにくるとは! これは一本取られたのう!」


龍麻呂は扇子を拡げ、仰ぎながら笑う。両隣にいる若い着物を着た女もクスクスと笑う。

あまりの暴挙に俺は怒りのあまり龍麻呂に文句言おうと足を進めようとしたがミツレから左手を掴まれ強制的に止められた。ミツレの表情も悔しそうな表情にしつつも首を横に振る。

ミツレの顔を見て、坂田が言っていた()()()()()()を思い出す。そうだ、今は怒りでコイツを殴ってしまいそうだが坂田の言うことに間違いはない。


「龍麻呂様、冗談ではありません。杏さんが亡くなったのが本題です。」


さっきまで俯いていた坂田が再び顔を上げ龍麻呂に言う。それを聞いた龍麻呂は笑っていた表情が真顔になると、


「あんなゴミが死んだのをわざわざ伝えに来たのか!? 麻呂の時間を割いたというに坂田と言えど許されないぞ!」


龍麻呂は顔を真っ赤にして坂田を怒鳴りつける。坂田はまた深々と頭を下げると声のトーンを変えずに、


「本当に申し訳ありませんでした。私の()()()()()()()の為に龍麻呂様をお呼びになってすいませんでした。」


と言った。声のトーンは変えずに言ったつもりなのだろうが()()()()()()()と言うところだけは声が震えていた。

俺とミツレはただそれを眺めているだけであった。どうして何も悪くない坂田が何度も頭を下げなければいけないのか。


「まぁ、良い。頭を上げよ、今回は特別にその話を聞いてやろうぞ」


龍麻呂はそう言うと舌打ちをし、扇子で火照った体を仰ぐ。

頭を上げた坂田は胸ポケットから土や泥で汚れた黒縁の眼鏡を取り出しエスピーに渡す。眼鏡を受け取ったエスピーは龍麻呂に見えるように膝を着く。

あの黒縁眼鏡は確か……………!


「この薄汚い眼鏡はなんじゃ?」


龍麻呂は汚物を見るような目で触らずに眼鏡を見る。


「その眼鏡は杏さんの物です。残念ながらご遺体は神に回収されてしまい違反はそれだけです。」


俺たちを病院に送った後に坂田は現場に残って杏先輩達や神高の先輩の遺品を探していたのか………


「次々に聞きたくない話や見たくもない物を見せるとはのぅ。坂田ではなかったら酷い殺し方をしたじゃろう。おい! 龍介! こっちへ来るのじゃ!」


龍麻呂は扇子を口元に当てながら眼鏡を見ていると急に人の名前を呼んだ。


「パパ呼んだ? 僕ちん、雌豚達と遊んでたのに………」


ドスドスと重い身体を動かしながら奥の部屋から太っていて、俺と同い年ぐらいの男が来た。服は着物で寝起きなのだろうか、だいぶ着崩れしていて、だらしない突き出たお腹が少し見える。


「おお、起きておったか麻呂の愛する息子よ。これを見てみるのじゃ」


龍介と呼ばれたかなり太った男は龍麻呂がエスピーの右手を指差す。龍介が龍麻呂の横に座ろうとすると座布団が置かれた。その上に座りエスピーの右手にある杏の眼鏡を見る。


「え、何この汚い眼鏡。僕ちんの美しい目まで汚れてしまうよ!」


龍介は目を開けているか分からないぐらいの細い目を擦りながら眼鏡を見る。坂田は震えた声で、


「それは杏さんの物です。杏さんは亡くなってしまいました。」


それを聞いた龍介はデカイ尻を掻きながら驚いた様子で、


「え!? クソ姉貴死んだん?」


と目をまん丸にして言う。この様子は龍麻呂と違って悲しんでくれる前兆っぽいな。


「コラ! あんなゴミを姉貴とか言うな! お前には姉などおらん。一人っ子じゃ」


龍麻呂は扇子で軽く龍介の頭を叩く。叩かれた龍介は急に笑いながら、


「ブヒャヒャヒャヒャヒャ! そうだった! 僕ちんは一人っ子だった! あんな才能のかけらもないゴミは知らないなぁ!」


「そうじゃろう?そうじゃろう? 龍介には姉などおらん! 龍介も麻呂と似て面白い事を言う才能があるのう。」


なんなんだコイツら! 実の親と弟じゃないのか! 親と弟じゃないとしても他人の死をここまで冒涜するのは許されない………………!

やはりコイツらは……………!

また我慢出来なくなって前に進もうとしたが今度は坂田から腕を掴まれる。隣を見るとミツレも掴まれていた。さすがのミツレでも許さなかったようだ。


「本当にすまない………………! 俺が無力はばっかりに……………」


坂田は俺とミツレに龍介と龍麻呂には聞こえない小さな声で震えながら言った。その声音は怯えてなどいなく、ただの怒りによる震えのそのものだった。

この時に坂田の表情を俺とミツレは一生忘れる事はないだろう。


「ブヒッヒ、あー、笑いすぎて腹が痛い。てことはこうして良いよねっ!」


「なっ!?」


笑いが治った龍介は眼鏡をエスピーの手と一緒に思いっきり踏んづけた。バキバキっという物が崩れる音と共に眼鏡は粉砕した。

俺たちが反応するよりも眼鏡は跡形もなくエスピーの手の上で無残に粉砕された。

辺り一面に杏の遺品である眼鏡の破片が飛び散る。

その粉砕される様は杏がもう一度殺されているようであった。

胸糞悪いキャラクターって書くの難しいですね〜。個人的にはもう少しクズさを出したいところでした・・・・


下手くそです! 辛口アドバイス待ってます!

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