笑顔
「それにしても凄いねぇ! 傷つくけば傷つくほどソウルが強くなる! 」
オシリスは笑っている。しかし、その目はムシケラを見る目をしている。
「おい! 仁! なんで俺を助けたんだよ!あいつの狙いは、お前なんだぞ!」
すると、仁はクルッと俺の方を振り向く。その顔は、いつもの仁だった。
「人を助けるのに理由なんていらんぜよ。 しかも、親友となったらなおさらぜよ。」
俺は、何も言えなかった。目の前で親友の左腕を奪われたのに何も俺は出来なかった。
俺は、なんて無力なんだ? 母親を目の前で殺されて、次は親友の左腕を奪われたのに俺は何もできない。
「それに、あいつの目的がワシとしたら、ワシを殺す事はせんぜよ。だから、ワシが悠真を守って死ぬ事はないぜよ!」
確かに、仁の言っている事は正しい。オシリスの口振りでは、仁は生け捕りするような言い方だった。
だが、確証はないんだぞ…………………………!
「でも! お前は左腕を奪われたんだ! そんな事をする奴らが命を奪わないわけがないだろ!」
「腕の一本なんて親友に比べたら安いもんぜよ。」
パチパチと薄っぺらい拍手の音が聞こえた。俺は、音の主であるオシリスの方を向く。
「ハハハハハハハハ!! 親友の方が腕より大事か! さすがはオレンジ君だよ! 腕の一本なんて平気なんでしょ? なら、ゆっくりと痛めつけてソウルを強くしようかな!」
オシリスの杖の先が再び光りだす。まずい、このままだと仁は痛めつけられる! なんとかしないと……………
「やめろ! もうこれ以上なにもするな! この、長帽子野郎が!」
ハッと俺は思った。ヤバイ、これは言いすぎてしまった。オシリスの機嫌を損ねてしまう。
「長帽子野郎……………?僕のこの美しい帽子を馬鹿にしたの? 許せない! 許せない! 許せない! 許せない! 許せないいいいいいいいいい!」
オシリスは、髪をクシャクシャとかきむしり、眼を血走らせる。そして、杖の光りが強くなってきてた。
「そんな君には、親友が目の前でボロボロになるところを特等席で見てもらうよ!」
仁が、俺の方を振り向く。ニカッと笑うと、
「大丈夫ぜよ! アイツは殺しはせんぜよ!」
ダメだ! 俺のせいだ! 俺が余計なことを言ったせいで仁は今から……………
「大丈夫じゃねえよ! 俺は親友がボロボロになるところを目の前で見れねえよ!」
「大丈夫…………大丈夫ぜよ」
それだけ言うと仁は、ゆっくりとオシリスの方をもう一度向く。
「じゃあ、いくよ! 僕の帽子を馬鹿にした事を後悔する事だね!」
オシリスが杖を振りかざすと、紫色の斬撃がこっちに向かってくる。
「やめろ……………やめてくれぇぇぇ!」
ブシャブシャと、肉が断ち切れる音が目の前で聞こえる。まるで、ミキサーの中に生きたままヒヨコを入れたみたいな音が辺りを響く。
「悪かった! 帽子を馬鹿にしたのは悪かったから、これ以上なにも仁にしないでくれ!」
辺りは、真っ赤に血で染まる。俺の顔や身体にも、仁の血が付着する。仁は、黙ったままオシリスの方を向いている。
オシリスは、一旦手を止めて首を傾げる。
「え? 今のは準備運動だよ? それに、オレンジ君も少し切っているだけだよ?」
は? コイツは何を言ってるんだ? 少しじゃないだろ!
「ふざけんな! 何が少しだ! 仁の服が真っ赤になってんだろ!」
それを聞いた、オシリスはニコッと笑う。そして、もう一度杖を仁の方に向ける。
「続きいくよ〜! それ!」
再び斬撃を飛ばした。しかも、さっきよりもデカイ。ザシュッザシュッっという、さっきの肉を切る音と混ざりながら骨を切断する音も聞こえた。
目の前で、何度も何度も同じ音が繰り返され、辺りは更に血で染まる。
「やめろ! もうやめてくれ! 頼むから………」
俺の両眼からは涙が溢れかえっていた。そりゃ、そうだろ、自分の失言のせいで親友が目の前で痛めつけられてるんだから。
俺の、情けない泣き顔を見たオシリスは、ムッと口をすぼめる。
「どうして、君が泣くの? 泣きたいのはオレンジ君だろ? なあ? オレンジ君? 痛いだろ? 痛いだろ? 泣いたらどうだ?」
俺の目から涙が流れ終わって、歪んだ視界がゆっくりと明るくなったことにより前が見えるようになった。
そこには変わり果てた親友がいた。左腕は無く、骨が剥き出しで、更に右脚が無くなっている。そして、全身は酷い裂傷で血が吹き出している。
目の前で倒れていた仁は、ゆらりと身体を起き上がらせようとする。
「ワシは、泣かんぜよ。漢ぜよ………………」
仁は立ち上がるために、右手に持っていた鉄パイプを右足に突き刺す。
こちらからは表情は見えないが、一瞬苦痛の声を漏らす。
その変わり果てた仁を見た時、もう俺は嗚咽が止まらなかった。
「もう、やめてくれ 仁。 何が死なないだよ…………もうやめてくれ、俺の事なんていいから……………」
そんな情けない俺に、親友が振り向く。
「悠真が泣いてどうするぜよ? ワシが勝手にやってるだけぜよ!」
足と手を奪われ、全身血塗れの親友は、いつも通りのエセ土佐弁と笑顔で語りかける。
少なくてゴメンなさい・・・
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