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日常の大切さは終わった時に気づくもの  作者: KINOKO
第2章 新たな日常!
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限界を超える

「さすがの大将でも十五倍の重力には耐えられないか。どうだ? 地面に接すれば接するほど辛いだろ?」


ツクヨミは坂田の左横腹を強く踏む。


「グアアアアアアアアア!!」


坂田の痛みに歪んだ叫びが響き渡る。俺は目の前でまた大切な人を失おうとしてるのに何も出来ないのか!

いや、手助けぐらいは…………!


そう思った俺はドクさんの背後をスルリと抜ける。


「神崎さん!? 早まらないでください! 」


「俺はもう目の前で大切な人を失うのは嫌なんだよ!」


「でも! 相手は三極神です! 私たちが敵う相手じゃありません!」


「そんなのやってみなくちゃ分からないだろ!!」


俺はミツレの手を振りほどき前に出た。しかし、ドクさんは俺の肩を強く掴んだ。


「ドクさん…………!」


俺は止めに入ったドクさんを睨もうとしたが、すぐにその考えは消えた。ドクさんは、静かに頷いただけだが、坂田を信じろと伝えたい事はしっかりと伝わった。


「そうですよね。坂田さんと一番付き合いが長いドクさんが坂田さんの事を信じてるのに俺が信じないのはおかしいですよね。すいません…………」


ドクさんは俺の髪をクシャクシャにして俺を背中の方にやる。


「信じましょうよ、坂田さんを」


ミツレが真剣な眼差しで言う。そうだ、信じなくてどうする!


「ああ、俺の考えが間違ってた。信じよう坂田さんを。」





「一瞬、邪魔が入ろうとしたっぽいが大丈夫そうだな。まだ、倍返しは終わってないぞ」


ツクヨミの踏む力が強くなる。その度に坂田は悲鳴をあげる。


「グっ………………! 俺だってなあ! お前らに対しての倍返しは終わってないからな…………!」


「まだ、喋れたか。戦ってて一つ分かった事がある。お前は大してソウル値も高くないし魔力も多くない。そんなお前が何故大将という階級につけたのかがやっと分かった。どうやら、お前は努力だけでその階級に這い上がれたんだな。」


坂田さんの魔力やソウル値が高くない!? 俺はまだ感じ取る事は出来ないがどうなのか?

ミツレの方を横目でチラリと見るとミツレは首を縦に降る。どうやら魔力やソウル値が大将にしては高くないのは本当らしい。


「よく分かってんじゃねえか。俺には神谷みたいな才能や瑠紫みたいな膨大な魔力があるわけではない。」


「神谷? ああ、()()()()()()()とかふざけた事を言われてる若造か。瑠紫というヤツは確か元 天使長のルシファーだったっけな。まぁ、僕の読み通りお前には何もない。」


コイツは春馬や瑠紫の事も知っているのか。二人が神王国の間でも有名という事だろうか。


「お前の言うとおり、俺には二人が持っているような物はない。でもなぁ……………!」


そう言うと坂田はゆっくりと上体を起こし、立ち上がる。それに驚いたのかツクヨミは足を退け坂田から少し下がる。


「十五倍の重力で立ち上がるだと!? お前は何者だ!」


さすがの三極神でも坂田が立ち上がった事に驚きを隠せないらしい。


「俺にひとつだけあるのは()()の才能だ!」


「努力だと、笑わせるな! この世界は才能を持った者だけが強者! それ以外は敗者だ!」


「あと、言い忘れてたが人類には共通である才能がある。」


坂田はそう言うと人差し指を立てる。


「それは、限界を超える力だっ! 一か八かやってみるか!」


坂田の周りが黒い光に薄く包まれる。しかし、その光はか細く何度も消えかけている。坂田は立つのが辛くなったのか地面に膝をつく。しかし薄い黒い光は消えない。


「妙な真似を! 才能こそが全てである事を僕がお前を殺して証明してやろう。」


ツクヨミの杖が坂田めがけて振り下ろされる。十五倍の重力で動けない今の坂田だとこれは避けきれない。

そう思い、俺は反射的に目を瞑る。しかし目を閉じた後に聞こえた声は坂田の声ではなかった。


「グハ!! な、何故だ!」


さっきまで膝をついてたはずの坂田が立ち上がり、坂田を攻撃したはずのツクヨミは腹を抑えながら膝をついた。


「何が起きたんだ!? さっきまで坂田さんは動けなかったはずじゃ…………」


「一瞬の出来事でした。黒い光に覆われた坂田さんはツクヨミの攻撃を避けると、驚いて隙が出来たツクヨミの腹部めがけて黒骨で覆った右拳で殴ったんです。」


俺が目を閉じた時にそんな事が……… ドクさんは坂田さんなら限界を超えれる事を最初から分かってたのか。

ドクさんは俺の視線に気づいたのか俺の方を見ると、コクリと頷く。やはり、ドクさんは最初から…………!


「月の重圧! もう一度十五倍の重力をくらえ!」


ツクヨミは腹部を抑えながら杖で地面を強く叩く。さっきと同じ技だ。しかし、坂田は特に不自由なく動き、今度はツクヨミの右頬を殴る。


「俺にはもうその技は効かない。」


坂田から殴られて吹き飛ばされたツクヨミはふらりと立ち上がると、


「何故だ! 僕の月の重圧は重力を操る技だ! お前には避けようがないはずだ!」


たしかにそうだ。さっきまでの坂田は月の重圧をくらうと重力に耐えられなくなって地面に膝をついていた。それなのに今は軽々と動けている。


「重圧が倍になってるのに、どうしてお前は普通に動けるのか気になって魔力を感知してみたら、どうやらお前は月の重圧を使う時に体全体に薄い魔力の層を作っていたようだ。そのおかげでこの技の仕組みが分かった。この技は肉体にかかる重力のみを倍増させる! つまり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()違うか?」


そうか! 坂田の周りを覆っている黒い光は坂田の魔力か!それでツクヨミの月の重圧をくらっても普通に動けるという事か!


「お前は魔力が少ないし魔力操作も苦手なはずだ! 努力しかないお前が、こんな器用な事が急にできるはずがない!」


ツクヨミは何度も地面を杖で強く叩き、月の重圧と連呼するが坂田には効かない。


「お前、さっきから努力しかないとか努力だけとか散々言ってるけどな、努力する事がどれだけ大変かお前は分かっていない。一度も努力してない奴が努力という単語を口に出すんじゃねえ! 黒骨 丗摹捻!」


坂田は右手から出した骨の剣をツクヨミめがけて振る。ツクヨミは避けようとするが集中を切らしていて左腕に直撃する。バキィッという骨が折れる音が響く。


「グアアアアアアア!! 才能のないお前がどうして!」


地面に尻をついたツクヨミは坂田に問う。坂田はフッと笑うと、


「どうやら俺にはひとつだけ才能があったらしい。努力という名のな!」


折れた右腕を抑えているツクヨミめがけて坂田は上から攻撃を仕掛ける。しかし、それはギリギリのところで杖で塞がれる。


「お前の強さは認めやる。今回だけは僕の負けだ。」


ツクヨミはそう言うと一瞬光に包まれて消えた。逃げたのか…………?


「坂田さんっ! 大丈夫ですか!」


俺とミツレはドクさんに支えてもらいながら坂田の方に駆け寄る。三極神の一人のツクヨミを撃退したと言うのに坂田の表情は暗い。


「俺は大丈夫だ。でも、アイツらが…………! くそッ!」


坂田は契約解除し近くの瓦礫を拳で殴る。コンクリートでできた建物の瓦礫は血で少し滲む。


「坂田さん……………」


拳で何度も瓦礫を殴る坂田さんの手をドクさんが止めた。坂田は一瞬何か言いたそうな顔をしたがドクさんの顔を見ると殴る手を止めた。


「話したいことはたくさんある。とりあえずお前らだけでも無事でよかった……………! アイツらが命を賭して守ったお前らは俺がこの先何があっても守ってやるからな。」


坂田はそう言うと俺とミツレを引き寄せて抱きしめる。坂田の顔は見えないが俺の右頬に誰かの涙が付いていた。







その後の事はよく覚えてないが、しばらくして救助隊が来て俺とミツレは病院に運ばれた。大事を取っての事らしく坂田が半分無理矢理病院に行かせた。

担架に乗せられヘリコプターで山口の病院のベッドに搬送された俺とミツレはベッドに横になった瞬間に何も話すことなく眠りについた。






朝陽が目に入って眩しい。チュンチュンという雀の鳴き声とともに俺は目を覚ます。ここは確か山口県の病院だったな…………


「おはようございます。神崎さん」


どこかで聞いた事のある安心感のある優しい声。右を向くと隣のベッドにミツレがいた。

ああ、俺は生きていたのか。


「おはよう、ミツレ」

ついに2章完結! 2章では出会いあり、別れありがメインの回だと個人的には思ってます。

いやー、でも筆が進むときはトコトン進みますね! これからも投稿頻度を上げていくので辛口アドバイス御願いします!

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