二切れのカボチャ
おいおい、肉一切れどころか何も食べないで俺のバーベキューは終わりかよ!? てか、酒に弱すぎないか俺!
あまりに悲しい現実に枕に頭を埋めているとミツレが肩をポンポンと叩いてきた。
「フフフフ、心配しないでください神崎さん。こんな事もあろうかと、神崎さんの分を取っておいたのですよ。」
ミツレの一言でさっきまでの絶望が一気に消えた。
「マジかミツレ! いやー、お前はやるヤツだと思ってたよ! じゃ、遠慮なくいただきま…………ん?」
ベッドから飛び起き、ミツレが手に持っている紙皿にある物を確認する。
ん? 俺の目がおかしくなかったら焦げかけたカボチャ二切れしかないんだけど。
「ん? ミツレさん、俺の目では焦げたカボチャ二つしか見えないんだけど、まだ酔いがあるからだよね? このカボチャは肉だよね?」
何度も目を擦り、ミツレの紙皿を確認する。カボチャカボチャカボチャカボチャ……………
ミツレは目を何度も擦り紙皿を凝視している俺を不思議そうに見つめ、
「もう酔いは冷めてますよ神崎さん、コレはカボチャです。」
その一言で俺は現実に叩き戻された。コレはカルビではなくてカボチャ…………
「ええええええ!? おかしいだろぉ! 普通取り分けてくれる分って肉だよね! いや、確かに野菜も大事だよ? でも、焦げたカボチャ二切れっておかしいよね!?」
つい、心の中で思った事も全て口に出てしまったがコレはおかしいだろ!
明らかに陰謀だ!!
「実はその………」
ミツレは少し苦笑いをしながらカボチャが乗った紙皿をベッドの隣の机に置き、俺のほうを見ると
「神崎さんが倒れた後に私と春馬さんで三階のこの部屋まで運んできたんですよ。で、その後にあまりにもバーベキューなるものが楽しくて神崎さんの存在を忘れてしまい、気づいた時には焦げかけたカボチャ二切れしかなくて……」
申し訳ないのかミツレは俺と目線をそらす。目を合わせようとしても、そっぽを向いて目線をそらした。
「つまり、バーベキューが楽しくて春馬さん達も俺の存在を忘れてしまったというわけか?」
え、俺ってそんなに影薄かったの!? なんかショックなんやけど!
「はい、そういうことです。あ、それと皆さんから神崎さんにゴメンって言っといてって頼まれてたんですよ。」
「なんやかんや、春馬さん達も俺を忘れるほど楽しんでたのか。で、人生初のバーベキューはどうだったミツレ?」
ここで落ち込んでいてもミツレにカッコ悪い姿を見せるだけだ。少しでも気を紛らわすためにも俺から質問しよう。
ミツレは俺から、それを聞かれるのを待ってたかのようにニコッと笑うと、
「はい! とても楽しかったし美味しかったです。」
あ、気を紛らわすために聞いたけど余計に悲しくなるヤツですやん。まぁ、ミツレが楽しめたならいいかな……
「そうか、良かったな。カボチャ食べてもいいか?」
「少し焦げてますけど大丈夫ですか?」
ミツレから割り箸と紙皿を受け取り、割り箸でカボチャを一切れ掴み口に放り込む。そして二切れ目も口に入れる。
少し焦げていたので苦味があるがカボチャの優しい甘みと炭火の香ばしい香りが口に広がる。
うん、もっと悲しくなってくるな!!
「少し焦げてるけど美味しかったよ。持ってきてくれてありがとうな。」
食べ終わり、ミツレに皿と割り箸を渡す。
「あ、もう一つ伝言頼まれてたんでした! 今日から一週間、東京神対策局の皆さんに修行をつけてもらうのとお手伝いなので 明日から6時に起床らしいです。もう夜遅いですし今日は早く寝ましょう」
そう言うとミツレは皿と割り箸を受け取り、立ち上がる。服装が千葉神対策局から持ってきた着物なので立ち上がる際に少し胸元が見えてドキッとしたが言わないでおこう。
「分かった。明日からまたよろしくなミツレ。」
「もちろんです。着替えとかが入ってるカバンは入り口のドアのとこに置いてます。それとお風呂とトイレは入ってすぐの右手側です。では、神崎さん おやすみなさい。」
「おう! おやすみ〜」
ミツレはそう言うと部屋を後にした。ミツレが部屋を出た事を確認してから俺はドアの方に行く。この部屋の作りはワンルームか。ドア前でリュックと大きなカバンを回収してベッドの横に置く。
「よし、明日は早いとか言ってたし今日はお風呂に入って寝るか。」
ボストンバッグから千葉神対策局で借りた紺色の着物と下着、それとバスタオルを回収し風呂場に向かう。
風呂場の扉を開けてみるとユニットバスだ。まるでホテルみたいだ。
着替えを洗面台に置いて、服を脱ぎ捨てる。浴槽に入りカーテンを閉めて、シャワーのバルブを捻る。温かい水が俺の頭上目掛けて降り注ぐ。
シャワーを浴びて身体を洗い、ドライヤーで髪の毛を乾かして風呂場を後にする。
今日着ていた服は部屋の隅に畳んで置いといて上着はハンガーでカーテンのレールの部分にかけておく。よし、後は目覚まし時計を6時にセットして寝るだけだ。
俺は目覚まし時計を6時にセットして布団にくるまった。明日から特訓の日々だ!
「あ、そういえば瑠紫さんにバリアの事頼むの忘れてたな。まぁ、また明日にでも頼んでみるか…… ファーア、おやすみ俺………」
俺は深い眠りについた。
この時は明日から怒涛の日々が始まる事を。そして、最終日にあんな事が起きるなんて事は神崎悠真は知るよしもなかった。
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