ミツレとのデート(仮)2にしたかったけど1で終わりの神崎くん
「んー、そうですね〜 こっちの世界は妖獣界よりも文明が進んでいて、どこに行ってもワクワクするんですけど噂に聞くショッピングなる物をしてみたいですね。」
ふぅむ… ショッピングか。ミツレから買い物したい!って言ってるって事はコレはもう(仮)デートじゃなくて(ガチ)デートじゃないのか!?
「俺もここら辺の立地は詳しくないからな。ちょっと待ってて、スマホで調べるから。」
俺がスマホで近くの大型ショッピングセンターって調べようとしたらミツレが、
「あ、よく考えたら知らない土地でむやみに行動したら危ないですよね。私はお昼ご飯が食べれて満足ですし神崎さんはどこか行きたいところはありますか?」
ミツレの満足ですしの言葉を聞いた瞬間、俺は確信した。
しまったあああああ!! 地雷踏んでしもうた! クソ! ミツレの真面目な性格だったら危ないとか言いそうだったけどよぉ! ここで俺が行きたいところ言っても、なんか嫌だし俺の当初の目的はミツレを楽しませる事だ。
自分の欲よりもミツレを大事にしないとな。
「いや、俺も特に行きたい場所は無いよ。今の時間は2時か…… 瑠紫さん達が帰ってくるには早いから時間稼ぎを含めて自転車を押しながら歩いて帰らないか?」
瑠紫達が帰ってくるのは5時だ。行きがけに自転車で30分くらいかかったから歩きで帰ったら1時間ぐらいはかかるだろう。あまり早く着きすぎてもアレだしな。
「そうですね。歩きながらまったりと二人で帰りましょ。」
ミツレは跨っていた自転車から降り。自転車の横に立ち、自転車を推し進める。
俺もそれに沿うようにミツレの隣を歩く。
「それにしても、何日間で凄いことばかりおきましたね。初めて神崎さんに会ったのが熊本県での数日前で今はこうして二人で東京にいる。これってなんか凄くないですか?」
「確かにそうだな。今思い返せば、我ながら環境の変化によく対応できたと思うよ。まぁ、何もかもミツレや対策局の人たちのおかげだ。いろんな人の支えが無ければ俺は家族や親友を失った苦しみに囚われたままだったと思う。」
「神崎さんは本当にメンタルが強いですよ。私なんて両親を殺された時は一週間、鬱で誰も信用できなかったんですよね。」
ミツレが少し恥ずかしそうに言う。
そうか、ミツレも俺と同じで両親を神によって殺されたんだったな。しかも、幼い時に……
「なぁ、ミツレ。」
俺はずっと聞くか迷っていたが今ここで、ある事を聞いてみる事にした。
確かに無礼でミツレは嫌な思いをするかもしれない。でも、俺はミツレの事を知らないし、悲しみだって共感したいと思ってる。
「なんですか神崎さん、急に改まって。」
「ミツレ、嫌なら答えなくて良いんだけど、お前の過去を俺に教えてくれないか? 俺はミツレと契約したからお前の事をもっと知っておくべきだと思うんだ。それなのに今の俺はミツレの事を強くて優しいやつって事しか分からない。これだとダメだと思うんだ!」
ついつい、声音が強くなってしまった。ミツレが少し驚いた顔をしている。ヤバイ、引かれたか……?
「神崎さんが意外にも契約の事をちゃんと考えてくれていて私はとても嬉しいです。私の出生の事を話しますけど次は神崎さんの番ですからね? 私だって神崎さんの事はムッツリ平凡って事しか知らないんですから。」
結構、真面目な事を言ったつもりだが意外にも笑顔で返事してくれて嬉しかった。てか、後半悪口じゃね!?
「おい! 俺はミツレの事を褒めたのにムッツリってどういう事だ!?」
ミツレはフフッと笑うと少し小悪魔風に、
「私の出生の話の後に弁論してくださいよ〜」
「ったく、弁論してやるから覚悟しとけよ!」
「はいはい、じゃ私からですね。私は妖獣界のプエジト部の拾魂村という場所で生まれました。あ、まずは妖獣界の地域の説明からしますね。」
確かにいきなり聞いたこともない地名を言われても困る。
「妖獣界は人間界や神界にある国という概念はありません。妖獣界自体が1つの大きな国で、次に10個の都という物に分けられます。そして、1つの都の中には部と呼ばれる地域があります。そして、部を形成してるのが約50個の村です。大きく分けるとこんな感じですかね。何か質問はありますか?」
情報量がかなり多いが大体は分かった。都と言うのは日本でいう県で、部は市の事だろう。そして村はそのまま通りの意味で町や村という感じかな。ここでつまずいていたら話が進まない。というわけで質問はせずにミツレの問いに無言で頷く。
「質問はありませんね。で、続きですけど私はプエジト部の拾魂村で生まれて7歳までは神の奴隷回収に怯えながらも田舎だったので神が来たことは一度もなく平和で普通に暮らしていました。そう、7歳までは……!」
ミツレが奥歯を噛み締める。歩いていた足を止めてしまった。やはり、ツライか………
「ミツレ、無理しなくていいぞ。」
「あ、すいません! 続きを話します。」
ミツレの足が進み出し俺の隣に来る。
「7歳になったある日、私と両親は隣村に収穫した果実を売りに村境の山を登っている時、視界の奥にヤツはいたのです。」
「ヤツって言うのは本局で言ってた神の事か?」
ミツレは少し顔を曇らせると、
「はい、北欧神王国の国王 オーディーンです。あの時、ヤツは一人でした。なぜ、真冬の雪山に一人でいたかは分かりません。ヤツは私たちを見ると物凄い勢いで接近してきました。その事に気付いた私の父と母は魔力を使い抵抗しました。私は気を失っており、目を覚ますと残虐に殺された両親が転がっていました。そして、私が目を覚ました時には、オーディーンは私の目の前から消えていました………………」
「ん? 待ってくれ、妖獣界の人達は命が2つあるんじゃないのか?」
いくら一回死んだとはいえ、もう1つの命があるのだから死んだふりをすれば今回みたいにバレなかったはずだ。
「神崎さんの言う通りです。しかし、命をもう一つ使うには死んだ瞬間に絶対に生きてやる!という強い意志が必要なのです。私の両親は私を守って安心してしまったから、二つ目の命を使う事なく死んでしまったんだと推測できます。」
そうか、二つ目の命があるとはいえ無条件で出来るほど簡単なものではないよな。
神だと発動条件はあるのか? と聞きたいが今はミツレの生い立ちが優先だ。
「そうなのか、ゴメン 話を遮ってしまって。」
「いえ、大丈夫ですよ。そして、幼くして両親を亡くした私は村に戻っても、臆病者や敗者と呼ばれ行き場を無くしていました。そんな時、ある人が現れたのです。」
臆病者や敗者とか言うとか最低なヤツらはどこの世界にもいるんだな。
「家も家族も失い、路上で乞食のような生活を送っていた私に手を差し伸べてくれた金髪の修道女らしき人に引き取られました。この人が私の命の恩人のマザーです。私はこの人を実の母のように慕っていました。マザーの教会は少し遠くの類未歌村という場所にありました。教会に大人はいなくマザー一人で管理しており、マザーは行くあてを無くした子供達を育てていて、私を含めていろんな年齢の子供が20人ほどいましたね」
「ミツレが言う、マザーっていう人の本名はなんていう名前なんだ?」
ミツレがマザーマザー言うので本名が気になった。どの世界にも善人という人はいるものだな。
ミツレは手を顎に当てると、
「それが教えてくれなかったんです。私たちがしつこく聞いても、はぐらかされたりして聞く耳を持ってくれませんでした。私たちは最初のうちだけマザーの本名を知りたがってましたが年を重ねるうちに、どうでもよくなってきて誰もマザーの本名を聞く人はいなくなりました。」
「なるほどな。それにしてもマザーって人は良い人だな。」
ミツレはニコッと笑うと、
「勿論です! 教会育ちの誇りです!」
「そうか。続きも頼むぜ。」
ミツレの笑顔が見れて安心した。さっきまでは暗かったからな。
「分かりました。私達はマザーの下で勉強を教えてもらったり護身術を教えてもらったりと毎日が充実していました。しかし、その日常が数日前に終わりました……! エジプト神王国の連中は私たちが住んでいるプエジト部を襲いました。一方的な虐殺や使えそうな者は連れ去られていきました。その魔の手は類未歌村まで及び、教会がある村から少し離れた丘の上までヤツらはやってきました。いち早く異変に気付いたマザーは私たちを逃がそうと裏口から逃げようとすると突如、教会が何者かによって半壊しました。この時の衝撃で30人の子供達が瓦礫の下敷きになったり燃え盛る炎に巻き込まれたりして死んでしまいました。マザーと私を含めて5人は何とか生き延びていました。」
一撃で教会を半壊にさせて、子供達の命を奪うとは………とても常人のする事ではない。
「半壊した教会を出ると、そこには赤いローブを身体に纏った犬頭の男が多数の神民やソウルイーターを従えていました。」
「その、犬頭の男ってやつもエジプト神王国の神か?」
ミツレは深く頷くと、
「はい、エジプト神王国の六柱と呼ばれるいわゆる幹部の一人、アヌビスです。私たちはアヌビスとその部下達に対抗しようと戦闘態勢に入りましたがマザーが止めました。マザーは生き残ってた5人を魔力でアヌビス達とは反対側に吹き飛ばしました。教会があった丘から吹き飛ばされましたが、そんなに高くない丘でしたし下には湖があるので命に別状はありませんでした。しかし、マザーはアヌビス含めて30体はいる敵を一人で背負う事になりました。あの時のマザーの覚悟の目、私は忘れることはできません。」
ミツレが心から尊敬するマザーは素晴らしい人だな。大切なものを守るため自らを犠牲にする。簡単なことではない。
「ミツレ達はマザーを助けに行かなかったのか? ミツレの性格上、山をまた登って助けに行くかと思ってたんだけど。」
「もちろん、私達は助けに行こうとしましたが山から突き落とされる時のマザーの覚悟を決めた目を思い出しました。今、助けに行ったらマザーの覚悟を無駄にしてしまうかもしれない。それに、マザーは強いから倒すことはできなくても逃げる事は出来るだろう。私たちはそう決断し湖を上がりました。」
「確かにそうだな。覚悟を決めた人の志を無駄にすることだけは避けたいよな。その判断は間違ってないな。」
「はい、後悔はしていません。そして、湖から上がると頭の中に「殺されてもいい。しかし、生きるという希望は失うな。これは私からの命令だ。今は儚く散ってもいい、強くなってからが我々の反撃だ。」という声が響きました。この声はのちに判明したのですが、人間界で生活している、ぬらりひょんさんに変わって、妖獣界を治めているさとりさんっていう人が妖獣界に住んでいる人達全員の頭の中に指示を出したらしいです。」
「妖獣界に住んでいる人たち全員に!? そんな事が可能なのか?」
全員に自分の考えを伝えるなんで凄い人だ。とてつもない実力の持ち主だろう。
「はい、可能です。さとりさんの魔力と能力を使えば可能なことです。」
とりあえず分かったことはさとりという人は妖獣界の中でもトップクラスの実力の持ち主だったと言うことだな。
「私たちは、さとりさんの指示を受け、湖の近くの森を抜けて街に出ました。街は悲惨な状態で少し前の九州地方のような有り様でした。」
俺の脳裏にあの時の光景が広がる。倒壊した街、叫び 嘆く人たち。そして、神……
「すいません、神崎さん。思い出させてしまって。」
ミツレが申し訳なさそうに顔を覗き込む。いつのまに、暗い顔になってたか。コレを力に変えると仁に誓ったばかりだろ俺!
「あ、ああゴメン。話を遮ってしまったな。続きを話してくれ。」
「……分かりました。街に出た私たちは倒れている人たちを救助しようと駆けつけましたが背中を何者かに切り裂かれました。激しい痛みが遅い倒れながらも後ろを振り向くと3メートルはある赤い甲冑を着た神がいました。妖獣界に住んでいる誰もが知るソイツの名前はエジプト神王国 現国王の太陽神 ラーだったのです。私はラーの一撃で死んでしまい視界が真っ暗になりました。」
あのミツレが一撃で……! そういえばバハムートの背中の上で、ラーの強さの話をしていたな。
「しばらくして体の意識が戻りました。しかし、さとりさんの命令通りに神が何処かに行くまでは死んだフリをしていました。30分ほど死んだフリをしていて、さとりさんから起きてもいいという指令が来たので私たち妖獣界の人達は起き上がり、さとりさん達の王政の指示に従い人間界にワープする転送装置と呼ばれる物を資源をフルに使い、なんとか妖獣界に住んでいる全ての人達を人間界に転送する事に成功しました。」
妖獣界の人たち全員が協力して出来た事だよな。迅速に行動して人間界までワープ出来たのは凄いよな。
しかし、ミツレの表情は暗い。全員ワープ出来たのではないのか?
「転送する事には成功したのですが、やはり大量にワープしたせいなのか転送装置の半数は原因不明の爆発事故により転送失敗したそうです……この爆発事故は転送してから聞いたのですが爆発の威力は凄まじく、転送失敗した機体に乗っていた人たちは確実に亡くなっているとの事です。」
やはりか…… さすがにそんなに上手くいくわけないよな。
「半数か。助かるはずだった命が失われるのは悲しいな。」
「そうですね…… 全員、人間界に来れても地球上に住む場所を分散すれば十分に住めたんですけどね。とても残念です。」
「ん? てことは、妖獣界の人たちで人間界に来れた人たちは全員、住む場所を確保できたっていうことか?」
「はい。妖獣界は人間界に比べてずっと人数が少ないですし更に半数が亡くなってしまいましたから移民問題は起きていないです。」
人数が多すぎて生活できていない妖獣界の人たちがいたら悲しいなと疑問に思ってたから悩みの種が解決して良かった。
「そして、私はオシリスが貼ったバリアを皆んなで砕き、神崎さんを助けた………ここまでが神崎さんの知らない私の生い立ちです。さぁ、次は神崎さんの番ですよ?」
ミツレがニコリと笑みを浮かばせ俺を見る。少しドキッとするが平常心平常心………
「おぅ! でも、俺みたいな平凡な中学生の生い立ちの話聞いても面白く無いぞ」
「大丈夫ですよ。私も神崎さんの事を詳しく知りたいてますし。」
俺はミツレに生い立ちを話した。生まれ育った場所の事や両親のこと。友達や学校の先生、そして親友の仁の事も話した。
ミツレみたいな波乱万丈の人生ではなかった俺の生い立ちをミツレは自分のことのように一喜一憂して聞いてくれた。
俺はミツレの笑顔が見たくて、ずっと喋った。
「なるほど、神崎さんは幼い頃から剣道をしていたんですね。それにしても昔の仁さんは泣き虫だったとは驚きです。」
「アイツはチビの頃は泣いてばかりだったよ。お、見えてきたぞ。」
視界の先に瑠紫達が住んでいる東京神対策局であるカフェが見えてくる。
ん? 入り口前に誰かいるな……
「神崎さん女の人が二人、店の前にいませんか?」
ミツレが目を細めながら店の方向を見る。以外に目は悪いのかな。
「誰かいるな。よし、行ってみるか。」
少しだけ歩くスピードを上げ、店の前に着く。スーツを着ている女二人は俺とミツレに気づくと、
「あ!君たちが春馬の言ってた子か! ふーん、二人とも強そうだね〜 ねぇねぇ! 戦うのは好き? 嫌い? もちろん好きだよね!!」
緑髪のショートボブの女が目をキラキラさせながら俺とミツレの手を握り、話しかけてきた。すると、隣にいた銀髪のセミロングでアシメの女が緑髪の手を離し、
「初対面でその対応の仕方だと私たち不審者にしか見えないわよ…… 怪しい者ではないわ。自己紹介は店の中でするわ。神崎くん、ミツレちゃん、あなたたちを待ってたの。さぁ、入って」
怪しい者ではないって事は鍵を持ってるから信頼出来るけど誰だよ!この人たち!
いやー、テスト期間終わって久しぶりに書きました!
辛口アドバイス待ってます!!!




