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日常の大切さは終わった時に気づくもの  作者: KINOKO
第1章 悲劇の始まりと終わり
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神降臨

 そこは、見渡す限り地獄だった。

 ここから見えるだけでも、電柱は倒れそこから火の手があがり、家はグチャグチャになっている。

 沢山の人が例のトカゲみたいな奴に掴まれている。辺りからは悲鳴が聞こえる。


「どうしてぜよ……………隣町は被害が無いと思っていたのに、こっちの方がヒドイ事になっているぜよ!」


 仁は頭を抱えている。 無理もない、俺たちは必死こいて隣町まで逃げてきたのに、その隣町がここまで酷いとは思わなかったからだ。


「悠真、すまんぜよ。もう、逃げ場なんて無いのかもしれないぜよ。本当にすまんぜよ………………」


「仁が悪いわけじゃないだろ。悪いのはあのトカゲみたいな神達だ! それに、まだ逃げ場はある!」


 仁は、隣町に希望を持っていたのだろう。その希望が目の前で打ち砕かれては、メンタル強の仁でも落ち込んでしまう。


「そんな所あるわけないぜよ…………………! 隣町でダメだったとは…………………!」


 仁は、歯軋りの音を響かせながら、かなり落ち込んでいる。さっきの俺を励ましてくれた時とは大違いだ。


「いいや、ある! あと、もう少し走ったら海が見えるはずだ! そこには福岡県と山口県の県境の橋があるはずだ! そこに、行ってみたら何か変わるかもしれない!」


 俺は、これ以上絶望はしたくはない。次の目的地を定めないと、俺まで絶望してしまいそうだ。


「悠真、福岡でこんな被害が出てるなら、山口も同じぜよ………………」

 

 ダメだ、いつもの仁じゃない。ここまで落ち込んでいる仁は初めて見た。仕方ない………………!


「仁! 俺が自殺しようとした時に止めたお前はどこに行った!」


 俺は、仁の左頬を思いっきり殴る。仁はよろめき、尻餅をつく。

 仁は、俺の方を見ながらゆっくりと立ち上がる。


「悠真…………………」


「仁! よく聞け! 俺だって内心は、もう死んでしまいたいって思っている! でもな、そんな俺に希望を持たせてくれたのはお前なんだ! 」


 仁の胸ぐらを掴み、詰め寄る。まだ、殴った右手がジンジンする。


「ワシが、悠真に希望を……………?」


「ああ、そうだ! 俺は、お前に救ってもらったんだ。落ち込む仁なんて俺は見たくない!」


 俺は、まだこんなとこで終わるわけにはいかない。両親から繋いでもらった命で、絶対に神をぶち殺す。


「そして、俺はあいつら神にいつか復讐する。あいつらをぶっ倒す!」


 仁は、驚いた様子でよろりと立ち上がる。その目は、さっきまでの虚な感じではなく、昔から見てきた透き通るような目になっていた。


「確かにそうぜよ……………ワシは坂本 仁!男の中の漢! こんな所で落ち込んではイカンぜよ! 悠真、ワシは目が覚めたぜよ! 山口まで行くぜよ!ワシも、神に復讐するぜよ!」


 仁は、完全にいつもの仁に戻った。これで、良い仁はこうでないとな。


「ああ、それよりも強く殴り過ぎたか? ゴメンな。」


 仁は、フンッと鼻を鳴らし、俺の左頬を指差す。


「お互い様ぜよ!」

 

 そして、俺たちは高台を後にした。高台で、海の方角を確認したので、その方角に走った。

俺は、ふと仁が倒したトカゲの事が気になったので聞いてみることにした。


「なあ、お前が倒した奴いたよな?」


 走りながら、仁は俺の方を向く。さっき殴ったとこがまだ少し赤い。やりすぎてしまったな…………


「ん? ああ、確かにワシは神を倒したぜよ」


「その事についてなんだけど、あれが神なのか? あれが神としたら、神って皆んな同じ機械みたいでトカゲの姿なんだな〜って思ったんだよ。」


 ここまで、あのトカゲを何度か見てきた。あのトカゲは、全部同じ姿、同じ大きさをしていた。アレが、神だというなら神というのは機械だということになってしまう。


「ああ〜 そう考えたら、あれって神なんぜか……………… 今思えば、喋り方も機械っぽかったぜよ。あれが、神としたら数だけ多いだけで、そこまで驚異じゃないぜよ。」


 俺は、思い返してみる。確かに、母さんは握られて死んだし、掴まれたらヤバいなのは確実だが、掴まれなかったらそこまで強くはないのかもしれない。

 そしてあのトカゲみたいな奴が最後に言った、()()()という言葉が気になる。ソウルとは、なんなんだ………………


「ああ、確かにそこまで強くはないのかもしれないな。それと、もう一つ気になるんだけど、ソウルってなんだ?」


「ソウル? ソウルって言ったら魂じゃないぜよ? それが、どうかしたぜよ?」


 仁は、ソウルのことを知らないのか? だとしたら、ソウルとは一体…………………


「実は、俺の母さんが殺された時に、母さんに向かってあのトカゲみたいな奴がソウルゼロパーセントって言ってたんだよ。」


「ああ! そういえばうちの親父達が、あのトカゲの光に包まれて消えた時にも、なんかそんな事を言ってたぜよ!」


 どうやら、仁もソウルのことは知っていたらしい。だとしたら、ソウルというものは俺の親だけの問題ではなさそうだな。


「その時はなんて、言ってた?」


「確か、ソウル100パーセント、クロって言ってた気がするぜよ」


 やはり、そのままの意味でソウルとは魂という意味なのか? 

 仁の親がソウル100パーセント、そして死んだ俺の母親がソウル0パーセントと言われたって事は、ソウルとは魂という事でほぼ確定か?


「悠真! あの橋の下で休憩するぜよ!」


 いや、今は深く考えるとかではないな。今は、ここから出来るだけ離れて逃げる事だけを考えておこう。


「ああ! そうだな。少し休憩するか。」


 今は、冬なのでそこまで喉が乾かないので良かったと思いながら座る。


「いや〜 、疲れたぜよ。でも、川の幅が広くなっているのを見ると海に近づいたぜよ!」


確かに、俺が空に出た変なピラミッド模様を見た時にいた河川敷よりは川の幅がかなり広い。いわゆる、河口というものだろう。


「ああ、確かに海に近づいたな。」


 俺と仁は石の上に座る。ヒンヤリしていて気持ちが良い。

サクラも疲れているようだ。体を石に押しつけて、グデーっとしている。


「ふぅ、それにしても日常の大切さが分かったよ。」


 日常なんていらないなんて言っていた自分を殴りたい。あの平和だって毎日こそが宝物で、なによりも大切なものだったんだ。


「そうぜよ! 日常は大切ぜよ!」


 それにしても、俺は一つ疑問があった。これまで、俺は死体を母さんしか見ていない。あとは、肉片なので人とは限らないからだ。神は人を殺しはしないのか?

 そうすると、母さんが死んだのは握る力が強すぎて、偶然死んでしまったということになる。俺は、仁に聞いてみることにした。


「なあ仁、これが起きてから死体を見たか?」


 仁は、驚いた様子で


「そういえば、見てないぜよ。でも、最初の光が降ってきた時には、ワシの周りは何体か死体はあったぜよ。」


 仁が言っている光は、あのトカゲが現れる前に起きたものだ。あの光と神が関係ないとは考えられないが、今はあれは神の仕業ではないということにしておこう。


「そうか、俺は母さんの死体以外見てないんだ。お前が助けたお爺さんと男の子がいただろ? あの時に倒したトカゲの中から人が出てきたよな。だとすると、神は殺すのが目的では無くて人間を攫うのが目的なのかな?」


 仁は、うーんとうなだれて、石を川に投げる。


「だとすると神の目的はなんぜよ? あのトカゲは何の為にこんな事をするぜよ?」


「はっきりとは分からないが、何か目的がありそうだな。」


 結局、仁から得た情報では神が何をしようとしているのかは分からなかった。だが、神は人間をできるだけ殺さないようにしている事だけは分かった。

 少しの沈黙があり、急に仁が立ち上がる。


「ま、今はそんな事を考えるより早く海の方に行くぜよ!」


 俺は、立ち上がり、尻についた土の汚れをはたく。


「そうだな、早く行くか。」


俺たちは、また走り出した。30分ぐらい走っていると、仁が汗だくの顔で俺を見る。


「ハアハア…………結構遠いぜよ……………高台から見た時は近いように見えたのに以外に遠いぜよ。」


 俺は、デコの汗を裾で拭きながら頷く。


「確かに、結構走ったのにまだ距離がありそうだな…………しかも、結構周りにトカゲがいるから隠れながらだし、キツイな………………」


 やはり、トカゲが辺りにちらほらいるので隠れながら移動している。そのせいか、精神的にも参ってしまう。


「それにしても、周りを見渡しても人がいないぜよ………………」


 確かに、橋の下から出てきて30分ぐらい走っているが誰一人としていない。それどころか、遺体の一つも見ていない。

 突然、ドカンっていう何かが地面に落ちる激しい音がした。


「な、なんぜよ!?」


「あれは! しゃがめ! 」


 俺は、とりあえず草むらに仁の顔を押し込む。50メートル先の砂埃から例のトカゲが五体現れた。まだ、バレてはないが時間の問題だ………………


「ヤバそうぜよ……………このまま走ったら袋叩きにされるぜよ」


「俺も、それは思う。何処か隠れそうな場所は無いかな?」


 辺りをキョロキョロと見回してみる。俺は、視力が悪いので遠くはよく見えない。


「あ! あの崩れたマンションの影に隠れるぜよ!」


 仁の指差す方を見ると、50メートル先ぐらいの左の方に10階建ぐらいのマンションが倒れていた。


「よし! あそこに逃げるか!」


 俺と仁は、マンションに向かって走り出す。トカゲ達は幸い、気づいていないようだ。


「危なかったぜよ……………」


「ああ、かなり危なかったな………………」


 五分ぐらい隠れているとトカゲ達は何処かに行った。周囲が安全なのを確認し、俺たちはマンションを後にした。


「じゃ、走るか!」


「おうぜよ!」


俺たちが、海に向かって走り出そうとした時、


「やーっと見つけたよぉ〜 オレンジ君!君みたいなソウルを探してたよ!」


という甲高い声が聞こえた。


「誰だ!? 出てこい!」


「何処にいるぜよ!」


「ワンワンッ!」


俺たちは、その声の主を探した。しかし、声の主はどこにもいない。

 すると、辺り一面が眩しい光に覆われた。目を開けると一人の男が少し離れた所に立っていた。


「なんだ!? あいつは………………」


「分からんぜよ………… でも、なんぜよか! この体の震えは!」


 全身の震えが止まらない。トカゲの時とは段違いだ。

 その男は、真っ黒の布を体に巻いており、頭には縦に長いコックのような朱色の帽子を被っている。そして、片手には30センチほどの木製の杖を持っている。


「ああ、自己紹介がまだだったよ。僕の名前はオシリス! エジプト神王国の者だよ!」


 その男、オシリスは自分の名前を言うと指パッチンをする。

 すると、空にピラミッドの模様が現れ、それが光りだすと、あのトカゲが男の横に三体落ちてきた。


「なんなんだよ! お前は何者だよ!」


 コイツは何者なんだ!? コイツが、指パッチンをして例のトカゲが落ちてきたという事は、コイツは神であるトカゲと関係があるのか!?


「何者って言われても………………今言ったばかりだよ? 僕の名前はオシリス、まあ、君達から見たら神ってやつかな!」


 はぁ!? コイツが神だと!? どう見ても人間にしか見えない。強いて言うなら、格好が変なだけだ!


「神!? そのトカゲが神じゃないぜよ!?」


 仁が、オシリスの隣に並んでいるトカゲを指差す。するとオシリスと名乗る男は、腹を抱えて笑う。


「アッハッハ! 僕をリザードと一緒にしないでよ。こいつらはただの道具だよ! アッハッハ! 面白いよ! オレンジ君!」


 本能的に、俺はコイツはヤバイと思った。仁の服の裾を引っ張る。


「仁! 逃げるぞ! 早く! こいつはヤバい!」


 仁は、肩をビクッとしながら、俺に向かって頷く。


「分かったぜよ! 逃げるぜよ!」 


 俺は、サクラを抱き抱えて逃げようとした。だが、オシリスが見逃してくれるはずはもちろんない。


「オレンジ君は逃がさないよ! 傷つけたくはなかったんだけどなぁ、まあ仕方ないか……………」


 そう言うと、オシリスの持っている杖が、紫色に光りだす。

 そして、オシリスの杖から凄まじい勢いで紫色の光線が放たれた。

「しゃがめ!」


と、俺は叫んだ。なんとか、俺と仁はしゃがんで避ける事ができた。

 光線は瓦礫に激しい音とともに直撃し、辺りの瓦礫が燃えている。

「おお〜! よく避けれたねぇ! でも、オレンジ君は貰っていくよ!」


 オシリスは、満面の笑みで拍手をしている。その笑みからは薄らだが狂気を感じた。


「これは、かなりヤバいぞ………………」


「ああ、ヤバいぜよ……………」


 俺たちは、これが本当の神なんだと初めて知ったのであった。


下手クソなのでアドバイスお願いします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] スピード感がありますね。仁のキャラが立っていて、絶望に陥る主人公が救われた時は読んでて自分も救われたような気分になって楽しかったです。
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