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日常の大切さは終わった時に気づくもの  作者: KINOKO
第2章 新たな日常!
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キュウビと俺にプレゼント

「ただいま〜! 」


玄関の扉を開ける音と共に有象無象の声が聞こえた。この声はきっと先輩たちだろう。

俺はチラリと時間を確認する。俺が座ってるソファの向かい側にある大きな壁時計が示している時間は7時10分。今は冬だし部活動をしていたとするなら帰り着く時間帯だ。


「お、アイツら帰ってきたみたいだ。今日は早帰りのはずなんだが遅く帰ってきたな。」


そういうと坂田は腕時計を見る。坂田の時計はZ–SHOCKだ。黒基調の時計で縁が金色で装飾されている。大手時計メーカーのヤツだから相当の値段だろう。


「そうですね。皆さん、やけに遅いお帰りですね。何かあったのでしょうか。」


気がつくと坂田の隣に紅葉がいた。おぼんに湯呑みを乗せていてそれをテーブルに並べる。


「ああ、まぁアイツらの事だ。どこかで道草食ってたに違いない。」


ガチャリとロビーの扉が開き両手に紙袋を持って先輩たちが全員集合した。少し、息が荒いのを見ると重かったのだろう。


「先輩たちどうしたんすか!? その大荷物。」


「ま、まさかその中身が神高の極秘所有物ですか!?」


キュウビのボケ?かよく分からん一言で場の全員がずっこける。


「わはははははは!そんな訳ねーだろ! コレは俺らからお前たちにプレゼントだ! まぁ、あれだまだ入学した訳ではないけど入学祝いってヤツだ。」


俊介が笑いながら言う。他の先輩たちも笑っている。どうやら、この紙袋全てが俺とキュウビのプレゼントらしい。この人達は優しい。突然やって来た新参者にここまでの優しさを提供してくれる。


「じゃあ、まずは俺からだな! あ、ちなみに男は悠真の、女はキュウビちゃんのを選んだんだ。俺らにも予算の都合があるからそこは勘弁してくれや。」


俊介が申し訳なさそうに半笑いになる。


「いやいや! 頂けるだけで満足っすよ!」


「いやいや! 頂けるだけで満足です。」


どうやら俺とキュウビが思ってた事は一緒だったらしい。声が被ってしまい少し恥ずかしい。


「じゃ、渡すぞ。まずは俺と五右衛門の1年男子組からのプレゼントだ。」


俺は俊介と五右衛門から2つの紙袋を受け取る。どちらもズシリと重く袋はプレゼント用に包装されておりどこの店で買ったのかは分からない。開けてからのお楽しみってヤツだろうか。


「開けていいすか?」


「おう!いいぜ!喜んでくれたら嬉しいぜ。」


「俺様のロックンロールなプレゼント受け取ってくれぃ!」


俺は袋の包装を丁寧に剥がしまずは俊介がくれた方の紙袋を開ける。中身はVUNIQLOヴニクロのフード付きパーカーとダメージジーンズだ。パーカーは黒生地で胸にヴニクロのVマークが赤で刻印されている。


「おお! 服だ! 実は制服とここで借りた浴衣しか持ってなかったからどうしようと思ってました。いやー、ありがとうございます!」


俊介が得意げに、


「ふふふ、そうだろう? ぶっちゃけ、服にしようと思ってたけど喜んでくれるポイントが分からなかったから心配だったけど喜んでくれてよかったぜ。」


「次は俺様の開けてくれぃ!待ち遠しいぜ!」


五右衛門から催促が入ったのでもう一つの紙袋を開ける。中身はXYGエックスワイジーのスニーカーだ。赤基調のスニーカーで靴紐の部分は黒色だ。俊介がくれたパーカーとジーンズとの相性も良さそうだ。


「どうだ? 俺様のスニーカーは? 俊介と話し合って相性の良い靴を選んだんだがイカしてるだろオオオオ?」


「はい!ありがとうございます!」


「スニーカーのサイズは俺と同じサイズにしたんだがちょっと履いてみてくれ」


俊介が言ってきたのでスニーカーに足を入れる。キュッと引き締まり動きやすそうだ。サイズもバッチリだ。


「サイズもバッチリっす。俊介先輩、五右衛門先輩ありがとうございます!」


俊介と五右衛門は少し照れくさそうに頭をかく。


「じゃ、次は私たち1年女子組からのプレゼントね。はい、キュウビちゃん。」


美香と真美がキュウビに紙袋を渡す。どうやらキュウビの紙袋も重いようだ。キュウビの膝がガクッとなる。


「おお、中々重いです。開けてみてもいいですか?」


「うん、開けてみて〜」


ガサガサと梱包を剥ぐと出て来たのはSARAサラのチェスターコートとグレーニットワンピースだ。チェスターコートの生地は茶色でボタンは金色だ。

SARAはVUNIQLOと並ぶ大手安売りメーカーだ。金色のボタンは高級感があって素晴らしい。


「うわぁ〜 ありがとうございます。こっちの世界の冬の寒さは厳しいって感じていたので、とてもありがたいです。」


「喜んでくれて良かったよ。サイズが合うか少し不安だから着てみてよ。」


美香はそういうとコートに付いていたラベルを剥がす。キュウビの後ろに回り、そっとコートを着させる。

コートを身につけたキュウビが俺の前に現れた。チェスターコートなので前を開けていているので下に着ている浴衣が見えて少し不恰好だが、とても似合っている。


「美香さん、サイズもピッタリだし色合いも好みです。ありがとうございます!」


「わ、私のも開けてほしいな・・・・」


美香の影に隠れていた真美が顔を出す。やっぱり見た目が小学生なんだよな。本当にこの人は高1なのか?


「はい!真美さんのも開けますね」


梱包を剥ぐと出て来たのはCONPASUコンパースのハイカットの厚底スニーカーだ。黒メインで靴紐は黄色でコンパースの特徴的な三角形のロゴが側面に左右対称で黄色で描かれてる。


「私もサイズが不安だから履いてみてほしいな。一応、美香ちゃんのサイズと一緒にしてみたけどどうかな?」


キュウビはスニーカーに足を入れる。靴紐を丁寧に結び少しジャンプしてみたり動いている。どうやらサイズが合うか確かめてるのだろう。


「はい!サイズもピッタリで靴も可愛いです。美香さんのコートとも相性が良さそうです。」


「そ、そう? 良かったぁ〜」


真美はホッとしたのか胸を撫で下ろす。それにしても、この人は本当に高校生なのか?ま、まぁいっか


「じゃ、次は我の品を見よ! ネズミよほれ」


愛染は俺に黒い大きな紙袋とドクロマークが書かれた小さなビニール袋を投げ渡した。

俺はそれをキャッチする。紙袋のズシッとした重さで一瞬よろける。


「バカ野郎。プレゼントを投げ渡す奴がいるか。はい、俺からもだ。受け取ってくれ。」


黒上の空手チョップが愛染の頭を直撃する。愛染は頭を抱えている。痛かったんだな……


「痛っ! 我を誰と心得るか! ダークブラッド様であるぞ! そのような無礼な態度は万死に値するぞ!」


愛染は右手で右目を隠し左手を広げ黒上に向ける。愛染は満足そうな顔でポーズを決めている。


「じゃ、とりあえず俺のから開けてくれ」


「分かりました! 黒上先輩の方から開けます。」


「いや!俺の決め台詞の感想は無しぃぃ!?」


愛染の悲鳴が聞こえたが、とりあえず黒上から貰った袋を開ける。

中から出てきたのは有名メーカーのDESERU(デセル)のTシャツが4枚だ。長袖Tシャツ二枚と半袖Tシャツが四枚だ。

Tシャツのデザインは白で真ん中にDSERUと赤字で書かれている。もう一枚は赤地で黄色でDSERUと書かれている。それが長袖と半袖で一枚ずつの二組ある。


さすがに女子がいる前で浴衣を脱いでシャツを着るのはアカン気がするので、脱がずに浴衣の上から押し当てて合わせてみる。サイズもバッチリだ。


「黒上先輩、サイズもバッチリだしシャツの色合いも最高です。しかも4枚もありがとうございます!」


「フッ ありがとうな。喜んでくれて俺も嬉しいよ」


黒上の耳が少し赤くなっている。こういうクールキャラな人が照れてるのって良いよな。あ、俺はホモじゃないぞ!


「クックックッ…… 次は我の番だな。さぁ、我がテキトーに決めてやって品を開封しろ! ネズミよ!」


「何がテキトーっすか。1番、悩んでいて時間も1番かかってた人のセリフじゃないっすよ、先輩。」


横から俊介がニヤニヤしながら愛染の顔を覗き見る。


「う、うるさい! さぁ、早く開けろ!」


「分かりましたよ。じゃ、大きい紙袋のほうから開けますね」


黒い大きな紙袋を開けると黒のリュックが出てきた。メーカーはHORTER(ホーター)だ。とても大きな黒のリュックで側面にポケットが付いているので小物も入れそうだ。実用性とオシャレを兼ね備えている。


「HORTERのリュックじゃないっすか! このメーカーのリュック友達が持ってましたけど一流メーカーですよね? 財布は大丈夫だったんすか?」


HORTERが一流メーカーなのはオシャレに興味がない俺でも知っていることだ。剣道部の幽山先輩が持っていたのを覚えているが何万もしてたって言ってたな……


愛染はフッと笑うと、


「心配するな! ネズミ! 我にとってはその程度の額、ウマカ棒買うのと等しいわ! だから、安心して受け取れ! あ、ビニールのほうも開けてほしいな……」


一瞬、小さい声で何かが聞こえた気がしたが、それにしてもこのリュックは凄い。てか、ウマカ棒は10円なんやけど………


「何言ってるのですか? アナタが貯めていた小遣いや給料の全てが消えたって言ってたじゃないですか。みんなが止めたのに後輩のため!とか言って無理して買ったのみんな見てましたわよ?」


結城がボソッと口に出したこの一言で愛染が無理して買ったという事が分かった。無理しなくてもよかったのに……俺は先輩達の思いが詰まった物なら何でも喜んで受け取るのに。

俺が、そんな高いものは受け取れないですと言おうとしたら愛染が、


「ゆ、結城!? 余計なこと言わないでよ。神崎くんは僕の変な趣味に対して変な目で見なかったんだよ? 僕のことを変な目で見ない仲間たちが増えるのなら僕は新しい仲間に最高のプレゼントを贈る! だから、神崎くん受け取ってほしいな。あ、もう一回言うけどビニール袋のほうも開けてね?」


いきなり神崎くんと言われたのと、声のトーンが急に変わったというダブルの衝撃だったが、とても嬉しい気持ちになった。

ひとしきり喋った愛染の顔が真っ赤になってるが俺はあえてそれを無視してビニール袋を開ける。中に入ってたのはブレスレットだ。赤色の金属製の髑髏が1つずつ繋がってできたブレスレットだ。俺はブレスレットを手に付け黒上に近づく。


「愛染先輩、先輩の趣味は変じゃないですよ。見てください!こんなにカッコイイんすから! リュックもブレスレットも使わせてもらいます。ありがとうございます。」


「か、神崎くん! ありが ハッ! 」


愛染が何が言おうとしたが一瞬動きが止まる。どうしたのだろか


「ん? どうかしましたか?」


「ククククク! 我のプレゼントを喜ぶがいい! わ、我は少し横になる……」


愛染は右腕で顔を隠しながら三階の自分の部屋に続く階段に走り出した。

何か悪いことをしてしまったか……?


「結城先輩、愛染先輩に俺なんか酷いこと言いましたっけ? 先輩が傷つく事を無意識に言ってたのなら謝りに行かないと……!」


俺が愛染を追いかけようと歩き出そうとすると結城が俺の手を握り歩みを止めた。


「神崎くん、愛染君は初対面の相手に引かれる事が多い人でね、そのせいで友達は少ない方ですわ。でも、君は引かなかったから嬉しかったんじゃないかな? 今は嬉しさと照れさに浸ってるから今はそっとしとくのが得策ですわ。それに、浸ってるのが冷めた翌日にからかう方が面白いですわよ?」


結城がクスッと笑い、俺の手を離した。この人、見た目は令嬢って感じがして真面目そうなのに以外にSなんだな……


「じゃ、次はわたくし達の番ですわね。はいどうぞ、キュウビちゃん。」


「私からも! はいプレゼント!!」


「ありがとうございます。では、先に結城先輩の方から開けますね」


結城から渡されたベージュ色の紙袋を開ける。開けてみると中からUUGO(ウウゴ)のミニリュックが出てきた。俺がもらった大容量の漢らしいリュックとは違い小ぶりのリュックだ。デニム地で出来ており、マチがしっかりしているので型崩れしなさそうだ。


「うわあ! 素敵なリュックです! 背負ってみてもいいですか?」


「いいですわよ。というか、もうキュウビちゃんの物なのですから確認なんてしなくていいですわよ」


キュウビがミニリュックを背負う。今は浴衣を着ているのでミスマッチだがそれでも似合っている。語彙力が無くて申し訳ないが俺から見てもキュウビとリュックは似合っていると思う。


「結城先輩、ありがとうございます。」


「喜んでくれて嬉しいわ」


結城は眼鏡をクイっと持ち上げ髪を少し触る。


「じゃ、次は私の番だね〜 あれ? 私で最後かな? ま、開けてみて〜」


「はい、猫魔先輩のも開けますね」


猫魔から受け取った紙袋を開ける。中から出てきたのはDIDIDAS(ディダス)のシャツだ。半袖と長袖が2枚ずつ入っていて黒地で白でDIDIDASのロゴが入っているのが半袖と長袖で二枚ずつ入っており、もう二枚は白地で金でDIDIDASのロゴが書かれている。DIDIDASは有名スポーツメーカーだ。


「私がスポーツが好きだからこのメーカーにしたんだけど、どうかな? キュウビちゃんがスポーツ嫌いだったら返品するけど……」


「いえいえ!スポーツは大好きですよ! こっちの世界ではスポーツでメーカーがあるんですね。とても嬉しいしデザインもカッコイイです。猫魔先輩、ありがとうございます」


「喜んでくれて嬉しいよ〜」


「さて、ひとしきりプレゼントタイムは終わったか。じゃ、お前ら風呂入ってさっさと寝ろ。飯は食ったか? いや、聞くまでもないなお前らが外食なしで帰ってくるはずがない。」


「坂田さん、ご名答!しかし、1つだけ間違いがあるっす」


俊介が指パッチンをして坂田を指差す。しかし、間違いがあるとはどうゆう事だ。


「ん? 俺がなんか間違った事言ったか?」


坂田が首を掻きながら首を傾げる。たしかに坂田は何か間違った事を言ったか?


「このプレゼントは俺ら個人のプレゼントっす。もう一つ、キュウビちゃんにだけ俺ら全員からのプレゼントがあります。」


「キュウビだけにプレゼント? 悠馬のは無いのか?」


坂田が俺の方を一瞥し俺と目が合うと気まずそうに見てきた。


「んー、正確に言ったら悠馬にあげても意味ないんすよ。キュウビちゃんには意味があるものっす。だって、いつまでも()()()()っていう名前ではどうしても人間界で生きにくい名前で不便でしょう?」


ん? キュウビって名前が不便とはどういう事だ……? キュウビはキュウビって名前じゃないのか?


「あ! 私 分かりました! そういう事ですか!」


「お前ら、まさか………」


キュウビは口元を緩ませ、坂田は不安そうな顔をしている。どういうことかサッパリ分からん。


「あのー、つまりキュウビに何をプレゼントするんすか? 俺だけ分からないって何か虚しいんすけど」


「じゃ、悠馬も可哀想な事だしプレゼントをキュウビちゃんにあげるか! キュウビちゃん、気に入らなかったら無かったことにしていいからな」


「いえいえ! 私は皆さんがくれる物ならなんでも嬉しいですよ」


「じゃ、みんなで話し合って多数決で一位を決めた結城先輩からお願いするっす」


急に名前を呼ばれた結城は一瞬びっくりしたがキュウビの前に行き、


「私からの、いいえみんなからのプレゼントを発表しますわ」


「は、はい! なんか照れますね」


ん? 発表ってどういう事だ? 物ではないのか?


九尾(つづらお)ミツレ(みつれ)この二つ名を貴女にプレゼントするわ。名前のミツレの由来はカモミールという花の花言葉(逆境で生まれる力)が貴女にピッタリと思いましてカモミールの和名 カミツレから取らせていただきましたわ。私達はキュウビちゃんがどんな苦労をしてきたか分かりませんわ。でも、貴女はその逆境の中でも諦めずに1番に九州の人たちを助けた事は知っていますわ。そんな貴女にピッタリな名前だと思いますのでこの名前にしましたわ。」


「二つ名……… 私が貰える日が来るなんて思いもしませんでした。それにとても良い名前です。分かりました、ありがたくいただきます。私は今日から九尾 ミツレです。」


「おう! よろしくなミツレちゃん!」


「われながら良い名前と思いますわ」


「ああ、ダークブラッド様々が考えた名前よりか数百倍マシだな」


「よ、よろしくね! ミツレちゃん」


「ミツレか〜 可愛い名前だな〜 」


「ミツレなんて洒落た名前を思いつくなんて流石 ユーキ先輩ね」


「ミ・ツ・レ! よろしくうううううう!!!」


「九尾 ミツレか………九尾をつづらおと読むとはアイツらにしてはやるな。それにミツレという名もいい味を出している」


「私も二つ名欲しいです…… 坂田さん」


先輩たちや坂田とドクさん、それに何故か頰を赤らめてるロリさんまで宴が如く喜んでいる。


「あのおおおおお!! なんか俺だけ置いてけぼりにされて虚しいんすけどおおおお!?」


俺の一言のせいで場が凍りついてしまう。例えるならば全校集会の時に屁をこいた時みたいな感じだ。やっちまった……心で思った事が口に出てしまうのは俺の悪い癖だ。


「ブホォッ! ああ、悠馬の事すっかり忘れてたわ。たしかにそうだよな。お前はこの場で唯一知らないもんな。俺から説明するのは語彙力的にキビシーってやつなんで坂田さんいいっすか?」


静まり返った空間は俊介の吹き出した笑いで消え去る。

坂田はタバコに火を付け口に咥えると


「確かにそうだな。俺らだけでドンチャン騒ぎを起こして悠馬だけボッチってのも可哀想だ。まぁ、分からないポイントは大体分かる。二つ名の事だろ?」


坂田はタバコを口から離し灰皿に灰を落とすと俺を見て言う。


「はい、そうっす。急にキュウビがミツレ?って言われ始めてワッショイしだした理由が分からないです。二つ名ってのも意味が分からないし……」


「ふむ、まぁ二つ名ってのをザックリ簡単に言うと妖獣界にいる者達が人間界に来た時に与えられる名前だ。ほら、ここにいる黒上だって八咫烏とか言わないで黒上って言ってるだろ? ぶっちゃけ、人間界で妖獣界の名を使うのは色々と不便だからな。」


なるほど、確かにキュウビっていう名は人間界では生きにくい名前だもんな。


「つまり、今日からキュウビは九尾 ミツレっていう名前になるんすか?」


「ああ、だからこれからは九尾もしくはミツレって言うことだな。」


九尾(つづらお)ミツレ良い名前だな。今日からキュウビはミツレになるのか。


「ふあぁ、うわ!もうこんな時間じゃん! 明日の学校起きられるかな」


「え!? 私 明日は朝課外があるのにヤバイですわ!」


美香と杏のやり取りを聞いて壁時計をチラリとみる。もう11時半だ。確かに眠いな。


「もうこんな時間か。まだ喋りてぇ事をあると思うが明日はミツレと悠馬は東京神対策局に合宿だ。次会えるのは一週間後だが今日はこんな時間だ。続きは一週間後の歓迎パーティーの時にするぞ。以上 解散っ!!」


鶴の一声ならぬ坂田の一声でみんな寝る準備をするために階段を上がる。おやすみーというか声が駆け巡る中 俺とキュウビはポツンと立っていて気づいたら場には俺とキュウビだけになっていた。


「明日は10時発らしいです。なので9時には起きとくようにとの坂田さんからの伝言です。さぁ、私たちも早く寝ましょ」


キュウビがスタスタと階段に向かう。


「な、なぁ! キュウビ!」


俺はキュウビの足を止めた。どうしても聞きたいことがあったからだ。


「そのー、なんつうかこれからなんて呼べばいいんだ? やっぱり男から下の名前でよばれるのは嫌だよな? だから九尾って呼んだほうがいいよな?」


キュウビはクルッと振り返り俺の方へと歩いてくる。俺の目の前に止まると素早い動きで俺のデコにデコピンを放った。


「イッタァ!? なんでデコピン!?」


思いのほか中々のデコピンで俺は尻餅をつく。キュウビはハァとため息をつき俺に手を差し出す。


「今更何言ってるんですか。私と神崎さんは契約者同士です。呼び方は神崎さんが自由に決めてください。でも、二つ名を授かった以上、前の名前で呼ぶのはタブーとまではいかないですけれど暗黙のルール上、呼ばないのがルールなので二つ名で呼んでくださいね?」


キュウビの手を握り起き上がる。結局、九尾と言うのかミツレと言うのかハッキリしないまま部屋の前まで無言で二人で歩いて来た。まぁ、この事は寝る前にゆっくり一人で考えよう。


「じゃ、おやすみな。明日はそんなに早く起きなくていいからタップリ寝れるな。」


俺はそう言うと部屋の扉を開けキュウビに別れを告げた。


「あ、神崎さん!待ってください!」


体の半分が部屋に入りかけたタイミングでキュウビが呼び止めた。


「どうした? 」


「いや……そのなんでもないです」


なにかを言いたそうだが言わない。言いにくい事なのか?


「おいおい、そこまで言われたら聞きたくなるよ。笑ったりしないから言ってみろよ」


「本当ですか? 笑わないでくださいね?」


キュウビが少し頰を赤らめ上目遣いで見てくる。やめてくれ、寝る前にその顔は無意識といえど童貞には大ダメージだ。


「ああ、笑わないぜ。」


「じゃ、じゃあ言いますね! その! 私のこと、九尾じゃなくてミツレって呼んでください!」


え? そんな事に照れていたのか……? キュウビらしいというかなんというか。

思わず頰を緩めてフフッと笑ってしまった。


「ああー!! 神崎さん!笑いましたね!」


「いや、笑ってないよ。プクククク………!!」


ヤバイ。ギャップが凄い。これは笑ってしまうだろ!


「いや!笑ってますね。ほら、ここの口角が上がってますよ」


そういうとキュウビは俺に詰め寄り俺の顔を下から覗き込む感じで俺の右の口角を指差す。

てか、この体勢少しマズイんじゃないか!? 側から見たらキス寸前だし、てか浴衣が緩んでキュウビの胸が見える……胸と言えどマンホール部分は見えないがギリギリのところだ。うう……キュウビが説教してるけど全然耳に入ってこねぇ!!!


「ったく! 神崎さんはちゃんと言葉で言ったことは守ってくださいね! ん?どうしたんですか神崎さん? 前かがみになって。お腹痛いのならさすってあげましょうか?」


離れたと思ったキュウビがまた近寄ってくる。ヤバイっ! とりあえずここは逃げるが勝ちだっ!


「い、いや大丈夫だ! それよりも早く寝ようぜ! じゃ、ミツレおやすみな!」


「本当に大丈夫なんですか? まぁ、おやすみなさいです。神崎さん」


なんとか言い訳をし自分の部屋のを開け鍵を閉める。


「ふぅ……危なかった。あそこでバレたら一週間は俺のあだ名がお猿さんだったな。ったく、コレどうしたものか……でも、スマホも無いし今日は寝るか」


自分の息子と話し合い今回は我慢してもらうとして、布団をひき部屋の電気を消す。

布団が太陽の匂いがして心地よい。


「なんか息子には申し訳ないけどおやすみっと」


そして俺は深い眠りについた。


久しぶりの投稿ですいません!

そのかわり内容はかなり濃ゆいと思います。

でも、下手くそだし初心者なので辛口アドバイスを頂けたら非常に嬉しいです!

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