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日常の大切さは終わった時に気づくもの  作者: KINOKO
第1章 悲劇の始まりと終わり
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希望から絶望に

 仁は、俺の横に座った。いつもはヘラヘラしているが、急に深刻な顔になる。


「じつは、ワシの両親はワシの目の前で、あの変なトカゲに変な光を当てられて消えたぜよ……………」


 クソっ! 仁の親も神にやられたのか! それにしても、()()()というのはどういう事だ? 俺の母親は握り潰されて殺されたし、母親は()()()()()()()()って言ってたよな? 

 何故、俺の両親は消えなくて殺されたのだ……………?


「最後の親父の言葉が、お前は俺の自慢の子だ!ってよ。いっつも、褒めないくせにこんな時に限ってそんな事を言ったら二度と会えないみたいぜよ。おふくろも悠真君達と一緒に逃げなさい! 迷惑をかけんじゃないよってさ。」


 仁は、俺に無理して作り笑いを浮かべる。両親を失っておいて、平気な子供なんていねぇよ……………!


「だから、ワシはお前と逃げる! もう二度と大切な物を失わないようにするぜよ!悠真、ワシと一緒に隣町まで逃げるぜよ!」


「仁………………」


 仁、俺には逃げる資格なんてないんだ。目の前で、母さんが殺されたのに、尻尾を巻いて逃げたんだぜ? そんな親不孝者が生きていていいわけがない。だから………………


 「仁………………俺は目の前で母さんをトカゲから殺された。しかも、俺は投げ捨てられた母さんの死体を置いていって逃げた憶病者なんだ。だから、俺はここに残る。すまないが、サクラだけを連れていって逃げてくれ…………俺には生きる資格なんてねえよ。」


 隣に座っている仁の顔を俺は見れない。俯いて、ボソボソと喋る。


「悠真…………」


「ゴメン、早くサクラと逃げてくれ。また、あのトカゲが来たらヤバイから…………… こんな俺は死んで詫びるしか方法はないんだ。」

 

 仁は、返事をせずに、スッと立ち上がる。どうやら、理解してくれたようだ。


「悠真、顔を上げるぜよ。」


 俺は、おそるおそる顔を上げた。すると、その直後凄まじい衝撃が頰にきた。人を絶対に殴らないと決めている仁が、俺のほおを思いっきり殴ったのだ。


「いっ…………何すんだよ…………」


 俺は、弱々しい声で言いながら仁の顔を見上げる。仁は、顔を真っ赤にしながら俺の胸ぐらを掴む。


「悠真! お前はそんな弱い奴じゃないぜよ!お前の親達は最後になんて言ったぜよ!」


 俺は、母が言ってた言葉を、小さい声で語る。


「逃げてって。親は子供を守るのが役目って言ってたけど…………でも、俺は…………」


「ほらみろ! お前の親は、我が子を守る為に自分の命を犠牲にしたんじゃないのかぜよ! それなのに、お前は自ら命を終わらせようとして! お前の親が守った命が無駄ぜよ!」


 そう言う仁は、大粒の涙を両目から流す。そして、俺の両両肩をガッシリと掴む。


「だから生きろ! 死ぬことはな! 詫びる方法じゃないぜよ! 今は、逃げるぜよ! そして、強くなってからアイツラを一緒にぶちのめすぜよ! 悠真!」


 仁は、俺に傷だらけの手を差し伸べる。俺は仁の手を握り、起き上がる。


「……………なんで、俺が自殺をしようとした事が分かったんだ?」


「え? そりゃあガラスの破片を持っていて、あんな虚ろな目をしていたら誰だって分かるぜよ。それより、強く殴り過ぎたぜよ………………ワシが言うのも変だけど、大丈夫か?」


 心配そうな顔で、仁は聞いてくる。俺は、服に付いた泥を払いながら、


「お前と、剣道の試合をした時の一撃の方が痛いよ。」


 仁は、驚いた表情でニカッと笑う。


「マジぜよ!? いやぁ、照れるぜよ」


「さ、早く行くぞ。逃げるんだろ? 隣町まで」


「おう! やっといつもの悠真に戻ったぜよ!」


 もし、この世界に優しい神様がいるのならば俺に、勇気をください。

 こんなとこで、諦めてたまるかよ…………! 俺は、絶対に両親を殺したアイツらに復讐してやる。


「ありがとな……………」


「ん? なんか言ったぜよ? 悠真?」


 心の奥底に秘めていた、俺を救ってくれた仁への感謝の気持ちが溢れてしまった。


「いいや、なんでもねえよ。それより急ぐぞ。ここよりは安全そうな隣町に逃げようぜ!」


「おう! 行くぜよ」


 そして、俺たちは逃げた。いつもの風景や匂いからかけ離れた通学路を走りながら。

 途中、あのトカゲに見つかりそうになったがなんとか物陰に隠れたりしてなんとか逃げれた。




――――――――――――どれぐらい走っただろうか、仁が足を止めた。


「ハアハア………………少し疲れたぜよ。あそこの瓦礫の影で少し休憩するぜよ。悠真とサクラも疲れたぜよ?」


チラッと、サクラを見ると舌を出して疲れているように見える。サクラのためも思うと、そろそろ休憩してあげたほうが良さそうだ。


「ああ、少し休憩するか。しかし、喉が乾いたな…………贅沢は言えないか。」


 すると、仁が自慢げに掲げていたウエストポーチから何かを取り出した。


「ふふふふふふ・・・ これはなーんだ!」


 それは開封済みのミネラルウォーターだった。仁は、それを天高く掲げる。


「マジか! てか、なんで持ってるんだ?」


「ワシだって少しは準備ぐらいするぜよ!」


 昔からの付き合いだから分かるが、コイツは見た目によらず中々用心深いやつだ。


「お前は、ほんとに、いい奴だな。」


 仁は、頬を赤らめて、少し照れている。


「そんな事より! 水を飲んで早く行くぜよ! もう少しで高台が見えるはずだから、そこで隣町までどのくらいか見るぜよ!」


 ここから少し先にある高台は、町全体を眺めることができるのだ。部活の外周の時には、よく行っていた場所だ。

 確かに、あそこならよく見渡せるだろう。


「そうか! あの高台があったか! あそこなら隣町がよく見れるな!」


「そうぜよ! さ、早く飲むぜよ」


 渡されたミネラルウォーターは、ちょうど三分の一ぐらい飲まれた後だった。俺はミネラルウォーターを喉に通す。喉が、潤ってくるのが分かる。

 あまり、飲みすぎるのもいけないので、サクラにも与える。嬉しそうに飲んでいて、目に活気が戻ってきた。

 残りを仁に渡すと、仁は一気に飲み干す。


「さ、行くか!」


「行くぜよ!」


「ワン!」


俺らは、また走りだした。だが、少し走ると仁が止まった。


「どうした? 仁?」


「少し、悠真はそこにいてくれぜよ。」


と、言い残すと仁は側に落ちていた、鉄パイプを取ると走りだした。仁の目は、何かを覚悟したような目をしている。

 俺は、どうしたんだと思い仁が走る方向を見る。すると、そこには、お爺さんと小さな男の子がいた。その二人にあの、トカゲのバケモノが近づいてる。二人は肩を震わせて怯えている。

 嫌な予感がする。俺は、仁の方を振り向く。

「仁! 何をする気だ!」



 すると、仁がニカッと笑うと、バケモノの方に鉄パイプ片手に走る。


「決まっているぜよ! 人が助けを求めていたら助けるのが人間ぜよ!」


 俺は、仁の右手をガシリと掴む。


「待て! 勝てるわけがないだろ!」


 そして、大声で叫ぶ。だが、仁は俺の手を振り払う。

「勝つか負けるかは、やってみないと分からんぜよ! うおおおおおお!!」


トカゲのバケモノが仁に気づく。しかし、仁の一撃の方が早かった。

 仁の一撃は、バケモノの胸にあるバスケットボールぐらいの大きさの赤色の水晶玉にめり込む。


「ガガガガガガガガガ…………………エラーエラー …………………ガガガガガガガガガガガガ……………… コアチョクゲキ…………」


「殺ったか!? 」


 仁は、バタつくバケモノに、再び同じ所を鉄パイプでねじ込む。


「ガガガガガガガガガ……………コレイジョウハ、コウドウフカ…………ガガガガガガ………………」


 バケモノが後ろ向きにバタリと倒れた。俺は、仁に駆け寄る。


「大丈夫か!? 無茶をするなよ…………」


 仁は、微笑むが、すぐにお爺さんと子供の方を見る。


「大丈夫ぜよ! それより大丈夫ぜよ?」


 鉄パイプを手に携えた仁に、一瞬だけビクッとしていた二人だが、頭を深々と下げる。


「ありがとうございます。この御恩はなんとお返しをしたらいいのだろうか………………」


「お兄ちゃんありがとう! とってもカッコよかったよ!」


 高笑いをしながら、仁は頬を赤らめる。


「いやぁ、照れるぜよ!」


 俺は、安心していると、その直後バケモノの中心の水晶玉が光り始める。


「おい!仁! なんか光っているぞ!」


 おかしい、仁は動かなくなるまで鉄パイプをねじ込んだはずだ!


「ほんとぜよ!? 何が起きているぜよ?」


 俺と、仁そしてお爺さんと男の子はそっとバケモノに近づく。

 すると、バケモノの光が更に強くなり、目を瞑る。光が無くなり目を開けると、そこには10人ぐらいの様々な年齢の人が立っていた。

 俺は、目を見開いて、人の人数を数える。十人が急に現れただと!?


「ええ!? 人が出てきた!?」


「何が起きたか分からんぜよ………………」


 すると、先ほどの男の子が、十人のうちの一人の中年の女に駆け寄る。


「お母さん! また会えたね!」


「健太! またお前と会えるのが夢みたいだよ!」 

 

 どうやら母親だったようだ。二人とも、顔を涙でクチャクチャにしながら抱き合う。

 俺は、近くにいる若い男の人に話しかける。


「あのー、何が起きたか分かりますか?」


 すると、二十歳ぐらいの男は、顎に手をやりながら、考えるそぶりをする。


「実は、俺たちはあのバケモノに光を当てられてからの記憶が無いんだ。でも、こうして助かっている。本当にありがとう!」


 ペコリとお辞儀をされてしまい、俺は反射的に否定する。


「いえいえ、俺では無いんです。あいつがあのバケモノを倒したんです。お礼はあいつに言ってやってください。」


 すると、男は仁の方に向かいお礼をしていた。仁の周りは人が集まっている。

 しばらくして、仁が戻ってきた。


「いやー、倒せて良かったぜよ。さ、早く隣町に行くぜよ!」


「ああ。ほんっとにお前は凄い奴だな」


 それにしても、先ほどの男の言葉が気になる。光に当てられてからの記憶が無い? しかも、殺されてはいなかった。 

 あのトカゲを倒した後に、十人もの人が出てきたと言うことは、あの人たちは捕獲されてたってことなのか?


「いやー、照れるぜよ!」


 俺の考え事にも気を止めず、仁は頬を赤らめて照れている。

 そして、俺らは仁が助けた人にお互い生き残る事を約束して別れを告げた。

 30分ぐらい走ると高台が見えてきた。


「あ! 見えてきたぜよ!」


 俺も、見るとそこには何回か見たことのある立派な高台があった。


「よし! 早く登ろうぜ!」


「もちろんぜよ!」


 俺と仁は、壊れかけた高台に登った。途中崩れそうになって危なかった。

 なんとか、上まで登ると、そこには凄い光景が広がっていた。

 見渡す限り、全てが崩壊している。そして、遠くからでも見えるほどに、あのバケモノも沢山いる。

 どうやら、こっちはバケモノが少ない方だったらしい。そして、あちこちで煙があがっている。


「なんなんぜよ………隣町も、その隣町も同じ光景ぜよ…………」


俺は、その時思った。ああ、これが()()()()なのだと。

まだまだ、下手くそですいません。

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