元帥
フンドシの男は俺と九尾に名前を聞いてきた。しかし、名前を聞くよりも服を着てほしいんだが・・・・
俺は覚悟を決めて
「俺の名前は神崎 悠真です。こっちは契約者の九尾です。よろしくお願いします」
元帥は葉巻に火をつけると煙を吹かし
「ふむ、神崎君と九尾さんか・・・・ それは、そうと例のアレはどこだ?」
元帥は葉巻を灰皿に置くと俺達を手招きした。どうやら、元帥の机の前に向かい合ってある2つのソファに座れって事だろう。俺は坂田に手引きされ座る。
「お、おい九尾。元帥さんが言ってるぞ」
俺は九尾の耳元で囁いた。九尾はよっぽどショックが大きかったのか今やっと我に返った。
「は、はい! こちらです」
九尾はポケットから杖を取り出す。それを元帥に渡すと
「これが、オシリスの・・・・ ふぅむ・・・・ では、神崎君、九尾さん」
元帥は丁寧に杖を眺めると俺らの方に視線を移した。
「は、はいなんでしょう!」
九尾は緊張してるのか動きがカクカクしている。思わず笑ってしまったが九尾に思いっきりつねられたので俺も顔がひきつる。
「つまり、君たちがコレを持っているって事はオシリスと対峙したって事だな? オシリスはどういう奴だった?」
「うーん、そうすね・・・・」
俺は少し考えた。頭の中でオシリスを思い出す。思いだしたくもない血で染まった記憶だ。思いだすたびに腹の奥から何かが出そうだ。
「オシリスは杖がないと何も出来ません。それと、オシリス自体がかなりメンタルが弱いので精神的に攻めるとかなり有利な状況になり、命を1つ奪えました」
俺の思いだしたくもない記憶を思いだす事に気を使ってくれたのか九尾が言ってくれた。
命を1つ奪って事を知った元帥は
「ほぉ! 素晴らしいな。神の命を1つ奪うとはな。坂田、
オシリスのレベルは?」
タバコを吸っていた坂田はタバコを灰皿で揉み消すと
「そうですね、オシリスのレベルはっと・・・・ えーっとレベル3ですね。神の中では低い方でしょうかね」
坂田は手帳をめくるとそう言った。
神の中では低いという坂田の言葉で俺は驚いた。あのオシリスでさえ神の中では低いだなんて・・・・ そういえば九尾も言ってたような気もするな。
「レベル3か、まぁそんな事はどうでもいい。神を撃退し、さらに命を1つ奪った事に意味があるのだよ。ありがとう、神崎君、九尾さん。」
元帥の威圧感のあるがどこか優しい声に俺と九尾はホッとした。
「ありがとうございます!」
俺と九尾は同時にお礼を言った。
「では、この杖を分析しようかね。ぬらりひょん、頼む」
元帥がそう言うと床からすうっと白髪で長髪の自分と同じくらいの杖を持ったお爺さんが元帥の横に出てきた。
「うわ!? ビックリした!? なんすか!?」
「ぬらりひょん様? ですよね! ぬらりひょん様ですよね!」
九尾が目をキラキラさせている。なんか、アイドルを見ているファンみたいだ。
「お主、妖獣界の者か・・・・ すまないなぁ、ワシがこっちの世界に来ている間にこんな事になるとは・・・・」
ぬらりひょんと言われた老人の顔が暗くなる。それを見た九尾は
「大丈夫ですよ! さとりさんが妖獣界の人達に脳内に語りかけて指揮を出して抵抗しつつ死んだフリをしろって指揮をしてくださいました! なので、みんな1つの命を失いましたけどみんな無事ですよ!」
ぬらりひょんは腕を組むと
「そうか、なら大丈夫なのか・・・・」
「では、ぬらりひょん解析を頼んだぞ」
元帥はぬらりひょんにオシリスの杖を渡した。ぬらりひょんはそれを受け取ると一礼して
「かしこまりました、柳葉元帥」
そう言うと床の中にすうっと消えた。
「それはそうと坂田、その子達に仮想現実戦闘をさせてあげたらどうだ? 解析には時間がかかるだろう? 」
元帥がそう言うと
「そうですね。元帥が言うのならばやらせてみましょう」
元帥はニカッと笑うと
「そうか、頼んだぞ」
坂田は一礼すると
「では、失礼します」
と言い、俺らにも頭を下げるように目で合図すると部屋を一緒に出た。
俺らがエレベーターに向かっていると九尾が
「それにしても驚きました・・・・ フンドシの人が元帥だなんて・・・・」
九尾はトラウマだったのかゾクっと体を震わせた。
「まあ、あんな人でも有名な柳葉一族だ。あ、ちなみに柳葉一族ってのは50年前の大襲撃の後に神対策局を建てた一族だ。」
「柳葉一族・・・・強そうっすね!」
俺が関心していると
「確かに強いと思いますよ。あの、総大将のぬらりひょん様と契約をしている感じでしたしね!」
「ぬらりひょんってそんなに凄いのか?」
俺がそう言うと九尾は口をむうっとすると
「ぬらりひょん様は妖獣界の中のトップの方です! 王とも言われています」
王ねぇ・・・・あんなヒョロヒョロな爺さんがなぁ。これはさすがに九尾に言ったら殺されそうなので言わない事にした。
「ほら、エレベーターに乗るぞ」
坂田がそう言い、五階を押す。
しばらくの沈黙の中でピンポンっていう音がして五階についた。
エレベーターの扉が開き視界が変わる。
「こ、これは!凄いです! 」
九尾が凄いというのも分かる。人1人が入れそうなカプセルが部屋に沢山ある。五階の広さはとても広く一本道だけがありその道の横にカプセルがしき詰められており高さもかなりある。
「ほら、行くぞ」
坂田が先に進むので俺と九尾もついて行く。
坂田は一本道の突き当たりに着くと1人の女の人に話しかけた。その女の人は坂田を見ると
「こんにちは坂田大将、お久しぶりです。今日は何用で?」
女の人は冷静な声で坂田に話しかけた。
「この2人のアカウントを作ってくれないか? 2人とも元帥の許可はとっている」
女の人は少し驚くとパソコンを起動し何かの準備をしている。女の人はパソコンの手を止めると
「5分ほど時間をいいでしょうか? 新規は久しぶりなもんで・・・・」
女の人は頰を少し赤らめるとそう言った。坂田はニコっとすると
「ああ、大丈夫だ。ゆっくりしてくれ。じゃ、俺らはそこのモニターでも観てるか」
坂田がそう言い指差した先には大きなテレビが1つあった。少し遠くなので近くによって観て見る。
そこには凄まじい光景が広がっていた。
黒いローブに包まれた男が角の生えた人をナイフを投げて苦しめている。
「な、なんすかアレ・・・・ あれじゃまるで拷問じゃないすか!」
坂田は頭に手をやり
「来る時間を間違えたか・・・・アレは・・・・」
坂田の声を九尾の悲鳴が遮る。
画面を見ると角の人は爪が全て剥がされ目も潰されている。辺り一面に血が広がり、その光景はあの時を思い出す。
俺は見るに耐えなくて目をそらす。
すると、
「神崎さん・・・・あの人は・・・・!」
九尾が指差す画面の中にはローブのフードが剥がれ顔を返り血で染めた1人の白髪の男がいた。
「死川さん・・・・?」
その見た目はまるで悪魔そのものだった。
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