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日常の大切さは終わった時に気づくもの  作者: KINOKO
第5章 ようこそ、国立神対策高等学校へ
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蛹は破れ、彼は未来を舞う

 あの惨劇から二週間が経った。その間、神高は当たり前ともいえるが休学になった。

 けが人は、治療に専念し身体を休める。もちろん、心に深い傷を負った人たちも…………


 場面は、千葉県の少しさびれたスーパーに移り変わる。そして、その視点は彼の両目に宿される。


「さてと、これで終わりか」


 ロリ、じゃなくて、女将さんから預かったメモの一番下に記載されていたトマトを手に取る。今は五月、まだトマトの旬ではないが、今でも十分に旨そうだ。


 トマトの表面、その鏡に映った自分の顔は、数か月前の自分とはずいぶん違うな。

 それにしても、あの惨劇の後、いろいろなことがあった。神高の生徒や対策局たちの人たちの安否確認、神王の出現による人間界の大混乱、小さいことも含めれば数えきれない。


「神崎悠真、野菜と肉は揃ったか?」


 黒の短パンに黒のスポーツタイツ、薄手の白いジャージを身にまとった少女が、小走りで近づいてくる。


「あぁ、全部そろった。流風、魚と調味料は?」


「もちろん、全部集めた。じゃんけんで負けたのが運の尽きだな」


 両手に持ったプラスチック製の緑のかご、そこにはあふれんばかりの魚介類と、しょうゆなどの調味料が入っていた。


「まぁな。でも、じゃんけんで負けたんだ。従うしかねーよ」


 二人で肩をすぼめながら、俺たちはお会計に進む。一週間分の食材の買い出し、そのじゃんけんが千葉神対策局では恒例行事だ。


「お会計、13,534円っすぅ~」


 金髪のチャラそう、いや確実にチャラい男の店員に、茶封筒の中から取り出した一万円札と二千円札を二枚取り出す。


「おつり、466円っす~ ありやした~」


 チャラ男から、おつりを受け取り俺らは店を後にする。溢れんばかりに食材を入れたエコバックを俺は両手に、流風は米袋を両手に抱え込みながら歩く。


「…………いつ見ても、この世界の金は趣味悪いな」


「そうかぁ? 昔は気にしていなかったが、今の俺なら同意見だ」


 この世界の紙幣は一万円札、五千円札、二千円札、千円札の四種類だ。値段が高い紙幣から順に、一神家から順々に肖像画が印刷されている。一万円札なら一神、千円札なら四川家みたいな感じだ。


「歴代当主が変わるたびに変わるんだろ? もったいないな、紙も人件費も」


「四頂家が考えることなんて、わからんさ」


 四頂家の考えや思想は分からんが、あの一族の中でも、一神は良い奴だ。だが、それでも、あの人の奥底に何があるのかは分からなかった。

 三門家の連中は親子共々、欲まみれで分かりやすい奴らだった。二皇家と四川家は関わったことがないから分からんが、三門家と似たようなものだろう。


「そうかもな、だが一神は流風、結構好きだぞ。なんか、良い奴って感じがする」


「ん、まぁな。良い人だよ、あの人は」


 流風が言っていることは決して間違いではない。ひねくれた考えだが、()()()なんだよな、一神は。底が知れない、国、世界の頂点の男だ。分からない、俺は一神という男の本質が見えない。


 ある意味、一神以外の三つの家の連中は、生まれながらに圧倒的な権力を手にして、欲深くい()()()()()()()。一神は、それに当てはめたら、人間らしくない。


 俺たちは、横並びになりながら海沿いを歩く。時刻は午前十時。お昼前、太陽の光が心地よい時間だ。


「お、千葉神対策局が見えてきた。ん? あれは……」


 千葉神対策局の前、旅館のような見た目の建物の隣に、黒塗りの大型車が止まっていた。あの車の持ち主は…………


「あ、坂田だ。それに……………」


「あれ、全員外に出てる。どこか行くのか?」


 ボンネットに腰掛けるように座りタバコを吸っている坂田、そして車内にはミツレと氷華が見える。

 ドクさんは黄色い菊の花束を片手に坂田の隣に、女将さんは助手席で本を読んでいる。


「悠真、流風!」


 俺たちに気づいた坂田はタバコの火を消し、こちらに手を振る。


「どうしたんですか? 車なんか出して」


「予定より早いがな、アイツらの墓ができたんだ。皆んなで挨拶に行こうかと思ってな」


 あの四人の、英雄たちの墓。確か、今日の午後に完成すると聞いていたが、前倒しで完成したみたいだ。


「予定より早く完成したんすね。もちろん、俺たちも行きますよ」


「うん、流風も行く」


「そうと決まったら、買い出ししてきたものを一度しまってから向かうか」


 ひょいと、氷華が持っていた米袋を坂田は軽々と奪い取る。そして、俺達三人は、一度荷物をしまうために対策局に入る。


「実はな、契約書の手続きで、俺は一時間前ぐらいに現地に行っていたんだ」


 生鮮食品は冷蔵庫に、そして賞味期限が近いものは、冷蔵庫の手前に整理する。そんなことをしていると、坂田がぽつりとつぶやく。


「あ、そうなんですね」


「ちなみに、場所はどこなんだ?」


 氷華の問いに、坂田は手を止める。そして笑顔で、ほんの少しだけ寂しそうな顔を浮かべながら、口を開く。


「もちろん、みんな同じ場所だ」





「よし、みんな乗ったな。シートベルト、ちゃんとしろよ~」


 運転席には坂田、助手席には女将さん。その後ろには俺とドクさん、さらに後ろには女子三人組だ。前は、全員で出かけるときはドクさんがレンタカー出してたっけ。

 車内は雑談の賑やかな声が響き渡る。俺も相槌を打ったりはしているが、少し広くなった車内が寂しいな………


「…………ドクさん?」


 何かに気づいたのか、ドクさんは俺と肩を組む。革ジャンの下にある骨が直接当たって、少し痛い。


「はは、そうですね。ありがとうございます」


 ドクさんは喋れない。それでも、誰よりも人の気持ちに気づいてくれて、最適解を導き出してくれる。少しモヤモヤしていた暗雲を、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と、心の声で振り払ってくれた気がした。

 そうだな、いろんな人の思いおかげで俺は生き残った。亡くなった人を憂うことは大事だ、でも下を向いてはいけないな。


 それにしても、ドクさん暑くないのかな。長袖の革ジャン、黒手の皮手袋に白のニット帽、更にサングラスとマスクを着けている。まぁ、ドクさんは骸骨の見た目だし、目立たないためにも仕方はないか。


「ん………?」


「おし、着いたぞ。さぁ、降りようか」


 何か一つの違和感に俺は気づいた。いつも身近にあり、違和感の波から逃げていたソレに、俺は一瞬だけ気づいたが、坂田の声によってそれは再び逃げる。


 俺たちが乗っていた車は、お墓の隣にある駐車場に止めた。俺たち以外には、真っ赤な大型のバイクが一台だけ止まっていた。




「ん? どうやら、先客がいるみたいだな。あいつらの親族ではないと思うが」


「あら、本当ですね。神高の同級生かしら。でも、隣にいる人は成人のように見えますが…………」


 花束を持ち、一番前を歩く坂田と女将さん。その二人が、視界の先にいる二人を指さす。少し遠いが、目を凝らしてみてみると、見覚えのある人影が見えてきた。


「っ………! 神崎さん、あの人って……………」


「隣の長身の人は分からないけど、あの人が来るのは意外だね」


「何故、あいつがここに…………」


 とんでもない光景を見たかのように目を丸くするミツレと氷華。流風は少し警戒をしており、身構える。


「二皇 瓔珞……… なんで、あいつが先輩たちのところにいるんだ!?」


 周りの墓よりもピカピカな墓、あの四人の墓の前にいた二人だったが、俺たちの存在に気づき、こちらに足を進める。


()()………… そうか、あいつが」


 一応、試験でも坂田は瓔珞を見ていただろう。だが、四頂家のうちの一つ、二皇の名前が出た瞬間、少し眉間にしわが寄る。


「坂田……大将だな?」


「間違いございませんよ。俺は千葉神対策局局長、坂田修。位は最上位の大将を任されています」


 坂田の前に、瓔珞は立ちふさがる。その一歩後ろには、従者のスーツに身を包み、白いマフラーを身に着けた人がいる。一度遠目で見ただけだが、近くで見たらでかいなこの人。190はあるんじゃないか。

 それにしても、四頂家と話すときの坂田は少し怖い。言葉遣いは丁寧だが、その奥底には鋭い牙が見え隠れする。


「あの四人の葬儀は、問題なく終わったか?」


「えぇ、問題なく。一週間前に滞りなく終わりましたよ」


「そうか…………」


 瓔珞の様子が少し変だ。少し困ったような表情を浮かべながら、制服のポッケに両手を突っ込み、下を見る。

 そして、ゆっくりと口を開く。まるだ、思い呪いを吐き出すかのように。


「あの四人は俺様が殺した」


「は………?」


 その一言を吐き捨てた瞬間、胸ぐらを掴みかかりそうになる坂田。そして、それを阻止するドクさん、瓔珞を庇うようにして坂田の前に立ちふさがる従者。

 まさに、一瞬の出来事だった。瞬きをした刹那、その光景が現れる。


「坊ちゃん、言葉足らず過ぎます。昨日、顔がすごい怖い坂田局長対策の言葉を考えていたではないですか」


「ソラァ!? だって、ここまで怖い顔とは思わんだろ!」


「俺、そんな顔怖いか?」


 やれやれと首を横に振る従者。秘密の特訓をばらされて、顔を赤く染める瓔珞。少し涙目になりながら、俺たちの方向を振り向く坂田、そして俺たちは目線をそらす。

 なんだ、さっきまで殺気づいていたのに、ソラと呼ばれた従者の一言でカオスな空間に様変わりする。


「坂田大将、いや局長? まぁ、それはどっちでもいい。あの時、何があったのか、あなたには伝えたかったんだ。聞いてくれるか?」


「もちろんですとも。一体、何をお話に?」


「ありがとう。それと、敬語は辞めてくれ。実は、あの時………」


 瓔珞の口から語られた物語は、想像を絶するものだった。突如現れた№、それよる地獄の業火、その巨悪の強さと、それを打ち破った岩導のこと………

 そして、身を挺して瓔珞を守った四人のこと………


「これを」


 下を向いたまま、瓔珞は何かをポケットから取り出す。そして、震える手で取りだした何かを坂田に渡す。


「これは、千葉神対策局のバッジ? 熱でかなり変形しているが……… まさか」


 あのバッジは、千葉神対策局に所属する人だけが持てる物だ。入局試験に合格した人たちしか持てず、先輩たちは全員合格済みだ。

 ちなみに俺たち四人は、バッジを持っていないので、今現在は居候みたいなもんだ。試験は確か………


「本当に申し訳ない! 俺様を守って、あの四人は………………!!」


 急に大声を出した瓔珞によって、俺が考えていたことは遥か彼方に吹き飛ぶ。そんなことりも、彼は頭を下げ、肩を震わせ、大粒の涙を流している。

 これが、あの二皇 瓔珞なのか? 俺が知っている男はそこにはいなかった。プライドが高く、誰よりも野心があるアイツが…………

 一体、誰がこいつを変えたんだ? 


「あいつらには未来があった! 大切な仲間や友がいた! これから先、数多の脅威を薙ぎ払い、時代に名を遺す実力だってもっていたんだ!! それなのに、俺様なん」


「それ以上言うな。あいつらが、何を思って君を守ったのかは分からない」


 何かを言おうとした瓔珞の頭の上に、坂田は手を置く。そして、しゃがみ込み、瓔珞の目線に自らの視線を合わせる。


「でもな、君は守られたという事実は変わらない。守られた大切な命、君の口から出そうとしている言葉、それは君自身だけでなく、あいつらも否定してしまうことになるぜ?」


「でも、あんたに、いや、()()()()()()()()()()()()()()()()()()!! あんた達の、家族を………… 俺様には責任が………… それを失う辛さは、俺様が一番わかっているんだよ………!!」


 顔を上げた瓔珞は、涙と鼻水でグシャグシャだった。瓔珞は、あの四人によって変わったんだ。いや、変わったっていうよりも、先に進んだの方が正しいかもな。


「…………君はまだ子供だ。そんな責任だなんて。今は、その命を」


「でもっ! それだと、俺様は、あいつらに顔向けでき」


「ならっ!! くよくよするな!! 試験で見てたが、()()は強い! 誰かに守られ、自分だけが生き残るという地獄を味わった! それなのに、お前は………」


 頭を再び優しくなでようとした手を坂田は止めた。そして、瓔珞の両肩をがっしりと掴み、真正面から大声を浴びさせる。それは、励ましなんて生易しいものじゃない、激昂だ。


「ここにいる。その守られた命の対価に対して十分すぎるほどだ」


「う、あぁ…………!!」


「俺が、お前の立場だったら、俺達に会うのは凄い怖かったはずだ。それでも、お前は自らの足でここにいる」


 瓔珞は、更に大粒の涙を流す。ボロボロと、それは滝のように。赦しを得られたかのように、そう感じたのはなぜだろうか。


「責任を感じるなとは、お前のことを思って、もう言わない。でもさ…………」


 坂田はこぶしを握り、軽く瓔珞の胸に当てる。ポカンとした顔を浮かべる瓔珞に、坂田はニカッと笑い、その口をゆっくりと開く。


「胸張って生きろよ。お前は凄い奴なんだからさ」


「っ…………!! あぁ、ありがとう、本当に…………! 残された俺様の命に意味を付けてくれて…………!!」


「そんなに、かしこまらなくても………… まぁ、言っても聞かないか」


 

 その後、坂田は膝立ちしている瓔珞に手を差し伸べる。だが、瓔珞はその手は取らずに、自らの足で立ち上がる。


「少し情けないところを見してしまったな………………」


 同年代、同じクラスメイトの俺達は坂田の少し後方に横並びにいた。瓔珞と、今日初めて俺たちは目が合った。

 そこにいた瓔珞の目は、涙で少し赤く腫れていた。だが、どこか重荷が外れてかのような目をしていた。

 それまで外界から閉ざさしていた蛹は、かたい殻を破り捨て、新たな姿へと生まれ変わる。


「坊ちゃん、そろそろ…………」


「あぁ、もうこんな時間か」


「では、私たちはこれで失礼いたします」


 制服のポッケからスマホを取り出し、時刻を確認する。そして、坂田を含めた俺たち全員に軽く会釈して、俺たちの横を通り過ぎる。


「あ、そうだ」


 瓔珞は、歩みを止めて俺たちの方向を振り向く。そして、少し笑いながら口を開く。俺は、この表情と似たような顔をどこかで見た頃がある。


「坂田()()、俺様は分家の人間だ。だから、変に気を使わなくて大丈夫だ、普通に接してくれたら嬉しい」


 坂田()()、瓔珞は坂田のことを敬っているのか。あのプライドが高く、傍若無人な二皇瓔珞という男が。


「分家…………」


 その()()という単語と、瓔珞の苗字で坂田はすべてを理解した。そう、二皇家は直系の血筋だけでなく、万が一の予備として分家を幾つか作っている。

 直系の血筋の人間が跡取りになるのは分かり切っているのに、二皇家の当主は一般女性との間に子供を今も作っているらしい。正直、気持ちが悪いな。

 

「そうか……………瓔珞! また落ち着いたら、遊びにでもきてくれ」


 顎を触りながら坂田は少し考える。そして、ニカッと快活な笑みを浮かべながら瓔珞に手を振るう。


「あぁ! 千葉神対策局に、またお邪魔させてもらう」


 瓔珞、坂田は彼のことをそう呼んだ。四頂家に対してのタメ口、それだけではなく呼び捨てなど本来であれば、到底許されることではない。

 だが、坂田に名を呼ばれた瓔珞は、とてもうれしそうだった。まるで、永遠と続く暗雲が幾らばかりか打ち消されたかのような、そんな感じだった。

 彼の暗雲が、どこまで続いているのかは分からない。だが、坂田の一言のおかげで、その暗雲が少しは払われたのだろうな。


「……………お前らにも、色々と迷惑をかけたな。まぁ、今後とよろしくな」


 何とも言えない、少し申し訳なさそうな顔を彼は浮かべる。こいつ、こんな顔できたんだな…………


「じゃ、またな」


「あ………」


 俺たちが言葉を発するよりも先に、瓔珞は俺たちに背中を向ける。そして、その背中は遠のいていく。俺たちは、そんな彼に声を再びかけることは出来なかった。




「さて…………… 俺たちも行くか。あいつらのとこに」


「はい!」


 瓔珞の姿が見えなくなり、俺たちは先輩たちのいる場所に向かう。そして、俺の目の前に、真新しい墓が四つ並ぶ。


「杏先輩たちの隣にしたんですね」


「あぁ、いつも一緒にいたんだ。あっちでも隣にいられるようにな」


 先にお墓に入った杏たち四人の隣に、新たに四つの墓が並ぶ。愛染、黒上、一ノ瀬、白土、新たに四つの墓が並ぶ。


「神崎さん、これって………」


「え、これは…………」


 一ノ瀬たちの墓、そこにはラップに包まれた手作りのおにぎりが並べられていた。手作りと分かったのは、何もラップに包まれていたからというわけではない。


「一人しかいないだろ。こんなことをするのは」


「見かけによらず、かわいいとこあるんだね~」


 流風と氷華は、顔を見合わせながらクスクスと笑う。確かに、()()()が、こんなことをするのは予想外だな。


「良いおにぎりですね。少し不格好ですが」


「あぁ、暖かいな。とても気持ちが込められている」


 女将さんは、おにぎりをのぞき込むようにしてみる。そして、坂田とドクさんは頷きながら、持ってきた花を添える。もちろん、あの四人だけでなく、杏たち四人、いや杏の母親の分も含めて五人分の花を。


「……………不器用な人ですね」


「あぁ、本当にな」


 そんな俺たちの背中を、暖かな風が包み込む。あぁ、この風は…………


「先輩たち、俺もう少し頑張ります」


 もう涙は出ない。訃報を聞いた時と、葬式の時に先輩たちに手向けた涙で、もう俺の涙は出尽くしていた。


「っ…………! 悠馬………」


「だから、見守っていてください……………!」


 情けないな、出尽くしていたのかと思っていたのだがな。やっぱり、大切な人が死ぬのは、何時までたっても慣れない。


 俺は、もっともっと強くなりたい。この世界の全ての人々を神の脅威から守るのは俺の役割ではない。でも、手の届く範囲の人たちを守りたいんだ。



 悠真たちの場面から、すさまじい速度で走り抜ける二人に移り変わる。


「なぁ、ソラ…………」


「どうしました、坊ちゃん」


 深紅の大型のバイク、山道を颯爽と駆け降りる姿は、まさしく流星。ソラが運転をし、その後ろに瓔珞が乗っている。


「やっぱり、所属するなら、あそこしかない」


 確信に変わった。俺様の夢に近づく、いや達成するには、あの対策局に所属するほかない。


「…………坊ちゃん、確かにあなたの夢に近づく最短ではありますが」


「わかってる。最短の道であり、最も険しい茨の道」


「あと少しで行われる()()()()。そこで坊ちゃんは…………」


「あぁ、俺様の夢、世界を統べる王になるために……………」


 通常通りであれば、あと少しで行われる入局試験。一つの県に一つある神対策局、俺様たち一年生は試験に合格し、入局しなければならない。


「最強の神対策局、()()()()()()に挑む」


「…………そうですか、()()()に挑むのですね。茨の道、いやそれ以上の……………………」


「何をいまさら。俺様……………いや、俺様たちの道のりは、いつも厳しかったじゃないか」


「ふふ、そうですね………………」


 俺様たちの人生は険しい道のりだった。いや、今もその道のりは続いている。でも、俺様はその歩みを止めない。


「母上、俺様さ、もう少し頑張ります」


 その一言はポツリと口から洩れた。あぁ、つらいな。でも、なんか重荷が以前より無くなった気がする。いや、嫌な重荷ではなくなったに近いか。


「坊ちゃん………………」


 バイクはまっすぐに進み続ける。そう、風にあらがうように。でも、そん時だった、一陣の風が俺様の背中を包み込む。


「…………愛染、黒上、一ノ瀬、白土。俺様、お前らに恥ずかしくないように生きてやるよ」



 たった一人の子供が抱えるには、大きすぎるものを少年は負っていた。その大きすぎる運命を、彼は打ち破ろうとしているのだ。

 

 それが叶うのは、もう少し先の話なのであった。







 

えー、ついに5章終わりました! いやさ、4年間ですよ? 4年間!! 自分の執筆が遅すぎるってのもありますが、本当にお待たせして申し訳ない・・・・


この章では、四頂家の深掘りもそうですが、神王の圧倒的力などもイメージして執筆しました。まだ謎が多い四頂家ですが、徐々に明らかになっていきますので、期待してくれたら嬉しいです。


ちなみに、6章に入る前に番外編を挟もうかなと考えております。

エキドナの番外編は長すぎる!って声をいただいたので、2万字未満にしようかなって思ってます。

番外編の主人公は、もう決めています。でも、出す順番に悩んでるんですよね〜

6章の前にするか、6章の後にするのか・・・・ 2人のうちのどっちを先に出すか、悩みに悩んでます。


さてさて、少し長くなっちゃいました。では、皆さん、へっぽこ作者ですが、これからも気長に読んでもらえると嬉しいです・・・・

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