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日常の大切さは終わった時に気づくもの  作者: KINOKO
第5章 ようこそ、国立神対策高等学校へ
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原点回帰

原点回帰(オリジンモード)

 

 岩導の周りには、魔力が漂い始め、それに呼応するかのように大気は鼓動する。押さえつけていた何かが、まるで解放されるのを喜んでいるかのようだ。


「オリジンモード………? オマエ、()()()()()カ!!」


「おぉ、お前知ってんのか。原点回帰をできる奴らは、少ないと思っていたんだがな」


 原点回帰、俺様はこれを知っているし、目の前で見たことがある。原点回帰は、ある条件を満たした妖獣しか使うことのできない技であり、その条件とは、純血であるということだ。

 もう少し詳しく語ると、妖獣にも人間と同じように種族の違いがあり、例えるならアジア人と欧米人のようなものだ。そして、自分の血に他種族の血が一切入っていないことが条件であり、妖獣が誕生してからはるか長い時が立っている現在では、その条件を満たすのはかなり厳しい。簡単に言うと、歴代の祖先に多種族が一人でもいると、その時点でアウトになってしまう。

 

 いや、それよりも原点回帰を使うことができるということは岩導は………


「………妖獣だったのか?」


「別に隠すつもりはなかった」


「なら、どうして!!」


「いやー……… 自己紹介の時に言うの忘れてて、そのままタイミングが見つからなくてだな………」


 振り返った時に見えた岩導の顔は、何とも言えない苦笑いを浮かべていた。この顔、本当に言うのを忘れていたようだ………


「なんだよ、それ………」


 緊張感と殺意に満ち溢れていた空気が、岩導の何とも言えない苦笑いが壊す。そして、岩導は俺様に向けていた視線を、スレイプニルに移す。


「さぁ、ひと暴れといこうじゃないか!」

 

 だが、岩導の顔が再び真面目になると、辺り一面に再び緊張感と殺意が充満する。一瞬、辺りを眩い閃光が包み込む。そして、その光を生み出した女は、そこにはいなかった。


「カギラレタ、ヨウジュウノミガ、シヨウデキル、オリジンモード。ソノスガタ、マサシク、ケモノダナ」


「オレの本当の名前は()()()()。よく覚えておけよ? 何がなんでも、お前を殺す女の名前だ」

 

 その姿、まさしく獣。身長は、3メートルほどで、その肌の色は青色。そして、その青肌には身体全身に、鈍い赤色に輝く荊模様の刺青のようなものが、ビッシリと張り巡らされている。

 眼光は赤く輝いており、その視線の先には憎き敵、ただ一つ。


「ミニクイ、スガタダナ」


「お前よりは幾分かましだとは思うぞ? 与えられた力で調子に乗っているお前よりはな」


「ヨウジュウフゼイガ! オーディーンサマ、ヨリ、チョウアイヲ、ウケシ、ワタシヲ、ナメルナッ!!」


 岩導の拳とスレイプニルの大角がぶつかる。凄まじい衝撃が大気を震わせ、その衝撃は天を割る勢いだ。


「贄喰なしで同格…………… いや」


「ク、ソガアッ………………!」


 押している! 確実に、誰が見ても岩導の方が有利だ!


「おらぁ!! 吹き飛べっ!!」


 岩導の拳に負け、スレイプニルの二本の大角は一本が根本から折れ、遂に押し返される。

 そして、その隙を逃すほど彼女、いや鬼は甘くはない。グラッと体制を崩したその隙に、スレイプニルの顔面に右拳の一撃を放つ。


「ガハァッ………………!」


 人を、そして妖獣を蔑んでいた仇は、ついに初めて地面に膝をついた。

 先ほどまで、天から見下ろすかのように俺様達を見ていたスレイプニルは、そこにはいなかった。

 そう、岩導がスレイプニルを天から見下ろしているからだ。


「そっくりそのまま返すぜ? 醜い姿だな」


 凄まじい威力の一撃をモロにくらったスレイプニルの左の顔面は深く抉れており、無数に並んでいた目玉は幾つか潰れていた。


「ワタシノ、ウツクシイカオニ、キズガァァァァァ!? オーディーンサマヨリ、イタダイタ、コノニクタイガ!」


 かなり深刻なダメージを負って辛いはずだが、スレイプニルはオーディーンの事ばかり口にする。


「オーディーン、オーディーンうるせぇな。()()()()()、早く終わらせるっ!!」


 そう言うと、岩導は空高く跳躍する。再び拳を握り固め、狙いをスレイプニルに定める。


「そのウルセェ口、潰してやんよ」


「コノ、ゴミカスガァァァァァ!!」


 まるで隕石かのような一撃は、大きく地面を吹き飛ばし、それは本物の隕石かのようだった。


「口だけ言っておいて、避けるんだな。情けねぇなぁ?」


「ハァハァ…………………」


 砂嵐が落ち着き、その全容が視界に映る。どうやら、スレイプニルは間一髪で避けたらしい。

 だが、その息は大きく乱れ、その目は僅かだが恐怖を含んでいる。


「どうした? まるで被害者みてーな面してやがるが、お前は何人の被害者を産んだ?」


 パキポキと指の骨を鳴らしながら、鬼は駄馬へと近づく。


「ッ………………!」

 

 そこにいるのは、俺様の知る岩導ではなかった。教壇では軽快に、戦闘訓練では全力、そんなメリハリのある岩導は此処にはいない。


「スレイプニル、お前が被害者になってくれるなら、オレは全力でテメェの加害者になってやるよ」


 そう、そこにいるのは憤怒の暗き炎に焦がれた鬼。

 憎しみと憎悪を薪にし、身体という名の炎を灯す鬼が1人いるのだった。

お久しぶりです! 社会人、こんなにも辛いんですね・・・・

もう、ピエン超えてパオンって奴ですわ


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