表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日常の大切さは終わった時に気づくもの  作者: KINOKO
第5章 ようこそ、国立神対策高等学校へ
158/167

贄として喰われ、岩の如し力は目覚める

「さてと、話はこれで終わりだ。お前をぶっ潰す」


「ワタシヲ? ワガアルジ、オーディーンサマヨリ、チカラヲ、サズカリシ、(ナンバーズ)であり、№2ノクライヲ、サズケラレタ、ワタシヲカ?」


 特攻服を身にまとい、仁王立ちをする岩導、そして彼女の前には惨状を生み出した原因の一つであるスレイプニルがこちらを睨みつける。


「№…… 報告によれば、エキドナが連れてきていたやつか………?」


 №、ある特定の条件下のみで、複数の妖獣の肉体と魂を一つにして生まれる強力な兵器だ。エキドナの命を削った作戦で、前回出現した№は、構成されていたであろう妖獣三体に元に戻った。


「エキドナ…… アァ、№3ノコトカ」


「知っているのか?」


 №3は、確か悠真が追い詰め、そして倒したという。昔の悠真が倒せた№を、授業を通して強くなった瓔珞が倒せないとは思えない。

 しかも、かなり一方的だったようだ。つまり、№2、スレイプニルの強さは№3とは比較になさそうだ。


「タッタ3タイノ、ヨウジュウデ、ツクラレタ、デキソコナイ。№ヲ、カンスルコトモ、オコガマシイ」


 エキドナは、普通の神であったが、オーディーンは神王だ。製作者の力量によっても、№の強さは変わるのだろうか。


「ワタシハ、200ノ、ヨウジュウノイノチデ、コウセイサレテイル」


「200……… エキドナが作ったやつとは別物なわけか」


「イノチダケデナク、ワガアルジノ、マリョクモ、スコシイタダイテイル。キサマノヨウナ、ムシケラガ、カテルアイテ、デハナイノダ!!」


 岩導の頭めがけ振り下ろされる、スレイプニルの二対の巨大な角。先ほどの戦いで分かったが、この威圧感、神王とまではいかなくても、上位の神と同等の戦闘力はありそうだ………!


「岩導!!」


 ぶっちゃけ、俺様は、人の心配をするほどいい性格を持ち合わせていない。自分でも、この言葉が出るのは予想外だ。

 まぁ、あれだけ痛めつけられ、格の違いを思い知らされた相手が目の前にいて、そしてその相手に俺様の数少ない知り合い……… いや、仲間が立ち向かっている。心配ぐらいする。


贄喰(にえぐい)……… 持ってけ、オレの両手の爪、全部」


「クタバレ!!」


「ハァッ!!」


 スレイプニルの大角と、岩導の右手の拳がぶつかり合う。辺りの空気は歪み、地面は激しく鼓動する。上位の神と同等の力はあるスレイプニル、それの攻撃に対して一閃の拳は抗う。

 岩導の右手のこぶしは、青黒い光のような靄が揺らめき、悪しき駄馬とぶつかり合う。


「クソガッ!!」


「ちっ!!」


 二人の攻撃は、両者反発するかのように弾く。攻撃の威力だけで見たら、岩導とスレイプニルは互角だ。俺様では、あそこまで感情が荒ぶっているスレイプニルを見ることはできなかった。


「キサマ、ナニモノダ? ワタシノ、イチゲキヲ、ムキズデ、フセイダ。ソレホドノ、ジツリョクシャ、カミカイデ、シレワタッテイナイノガ、フシギダ」


 岩導のことは、神の世界では知れ渡っていないらしい。俺様では傷一つ付けることはできず、そして完膚なきまでやられた相手と、ほぼ互角の実力の持ち主だぞ? それに、神崎と俺様の攻撃を指二本で仲裁して見せた女だ。

 なぜ、そこまでの実力者の名前が知れ渡っていない? 岩導は、かなりの実力者のはずだ。


「無傷か……… それは少し違うな」


 少し苦笑いを浮かべるその様子は、まるで自分には実力者といわれるほどの実力があることを認めていないかのようだ。

 そして、岩導の両手の爪は出血している。まるで、爪が最初からなかったかのように、綺麗に無くなっていた。


「岩導!! お前、その指………!」


「あぁ、オレの魔力、贄喰に食われた」


「食われた? どういうことだ?」


 契約魔力ではなく()()という言い方が少し気になるが、両手の爪が無くなった事と関係があるらしい。


「自身の肉体の一部を生贄に、指定した部位を硬化する魔力。生贄に捧げた部位が自身にとって重要なほど硬くなり、また指定する部位の範囲が小さければ小さいほど、硬くなるという魔力だ」


 岩導の魔力が判明してことにより、俺様と神崎の攻撃を指二本で止めた謎が解決した。あの時、岩導が何を生贄にしたのかは分からないが、指定した部位を両手の指二本に狭めることで、あそこまで軽々と攻撃を止めたのか。


「仮想空間だったら、現実とは反映されないから、()()()()()も可能なのだが、現実だとそうはいかないなぁ………」


 無くなった両手の爪を見て、そして後ろにいる俺様の方を見て、困ったような笑みを浮かべる。どうやら、俺様と神崎の攻撃を止めた際は、かなり大きな生贄を捧げたらしい。それが何なのかは分からないが………


「とはいっても、このままだと、オレの体から捧げるものが無くなっちまうな………」


 右手にまとわれていた、青黒い光の靄は少しずつ小さくなっていき、今にも消えそうだ。贄喰によるものだと推測はできるが、硬化には制限時間があるのか?


「瓔珞、動けるか? もう少し離れてくれ」


 大きく深呼吸をし、再び岩導と目が合う。()()()、俺様は見たことがある。俺様を、命を呈した守ってくれたアイツらと同じ……!


「岩導! 何をするつもりだ」


「心配するな、あのバカ馬はオレがぶっ飛ばし、お前も無事に家に帰らす」


「だが、おま」


「つーか、さっきから、お前お前って連呼しすぎだ!! オレは、お前の先生だぞぉ?」


 岩導は、俺様の額に再びデコピンをし、俺様を担ぎ上げて、少し離れたところまで放り投げる。


「ったく、帰ったら説教だ!!」


「岩導……先生」


 歯を見せながら、笑うその姿、まさしく生徒を導く教師の鑑。俺様は、気づいたら、岩導のことを先生と呼んでいた。


「おい、駄馬!!」


「ハナシハ、スンダカ?」


「あぁ、大切な生徒との話が終わった。これで、お前をぶちのめせる」


 俺様からは、岩導の背中しか見えない。だが、その背中は強者の背中。憎しみ、憎悪、様々なものを背負い、そこに立っていた。


「久しぶりだが、お前を倒すには、これしかなさそうだ………」


 岩導の周りに、マリョクが漂い始める。抑え込んでいた何かが、少しずつ漏れ出しているかのようだ。


原点回帰(オリジンモード)

お久しぶりです!

 

さてさて、岩導とスレイプニルの戦いは、あと一話、もしくは二話で終わるかと思います(多分だけど)

そして、あの二人とワルキューレの戦いも佳境へと向かいます。


私の予想だと、あと五話でこの章は終わるかと・・・・

ほんっっっっとうに、筆が遅い私ですが、最後まで付き合ってくれると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ