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日常の大切さは終わった時に気づくもの  作者: KINOKO
第5章 ようこそ、国立神対策高等学校へ
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北欧神王国 神王、オーディーン

「まったく、情けない。ワシの血が混じってるとは思いたくないものだ」


 実の息子、それが奪われたというのに、オーディーンは特に慌てる様子はない。

 それどころか、呆れ果ててすらいるようだ。


「オーディーン!!」


 道化と雷、二つの脅威がさり、上空には、その二体すらを軽々と超える者の声のみが響く。

 だが、その者の声はすぐに、怨嗟を抱えた少女の怒号によって遮られる。


「ほぅ……………」


「アナタだけは、絶対に許さない! 霊炎、陽炎!!」


 俺たちの横を、凄まじい勢いで通過する一筋の銀色の光。

 そして、その光は高く跳躍し、仇に向けて蒼き焔の剣を放つ。


「ミツレ!!」


 どうやら、トールが操神の手中に落ちたことにより、ミツレは雷の牢獄から脱出できたようだ。


「久しいな、九尾(キュウビ)よ。失敗作のはずのお前だが、急遽必要になったのだ」


 ミツレは、何度も陽炎を放つ。だが、スネークの周りには結界のようなものが貼られており、びくともしない。


「ハァハァ…………… どういうことですか? 失敗作? 私が? アナタの言っている意味が、何一つ理解できない」


 オーディーンは、トール達にミツレの生け取りを命じていた。

 そして、そのオーディーンは、ミツレの事を失敗作と言っている。まるで、作られたかのようだ。


「……………… まだ、全てを話す時ではない。だが、これだけは事実だ」


 何か隠したいことがあるのか、オーディーンは少し黙る。


「どういうことですか?」


「今回の北欧神王国による、大規模な人間界侵略。その大部分の目標は、九尾、お前の回収だ。最優先事項が、お前の生け取りであり、他の人間どもからのソウル回収はオマケでしかない」


 あぁ、やはりそうだったんだ。薄々気づいていたが、やけにトールはミツレに執着していた。つまり、今回の人間界侵略の原因は………………


「そんな…………… 私が、今回の原因なのですか………………?」


 ミツレは、膝から崩れ落ちる。今回の襲撃で、数多くの人が傷つき、そして殺された。その原因が、自分自身だと言われたのだ。落ち込むのは無理もない。


「それは違う。九尾(つづらお)さんを狙うお前たちがいなければ、こんな事は起きなかった。人をたくさん殺しておいて、まるで自分たちがやっている事は正しいと思っているのに、ミコは反吐が出る」


 膝から崩れ落ちたミツレに、神々廻は手を差し伸べて立ち上がらせる。


「神々廻さん……………」


 神々廻の言っている事は正しい。オーディーン達の目的がミツレの生け取り? そんなの知った事ではない。人殺しをしたという事実は覆らない。


「そうだ! お前らが、人間界に来なければ、こんな事は起きねーんだよ!!」


「九尾とやら、いちいち神の戯言に耳を貸すな。見ていて情けなくなる」


 操神も口調は厳しいが、ミツレを心配しているのだろうか。

 いや、どちらかと言うと神に対しての憎悪の方が勝っていそうだが……………


 「皆さん………………」


 ミツレは、神々廻の右手を取り立ち上がる。そして、上空に佇む仇を見つめる。


「私を生け取りに来たのが目的だとしても、数多の命を奪ったという結果は残っています」


 そして、ミツレは仇がいるであろう、スネークに向かって指を刺す。


「降りてきなさい、オーディーン。私が、この戦いと復讐に蹴りをつけます」


 北欧神王国の神王であるオーディーン。少なくとも、俺たちが遭遇した神より遥かに強い存在に、ミツレは宣戦布告をする。


「おい、相手は情報に一切ない神王だ。神々のいる国を統べている存在だぞ? 何を訳のわからないことを言っている」


「九尾さん、それは危険。ミコ達が手を合わせても、勝算があるのかすら分からない」


 傀儡という強力な契約魔力を持っている操神、神をも屈服させる猛毒を司る神々廻、その二人の強者ですら神王に恐れている。

 確かに、この二人は正しい。俺よりも強いし、実に合理的だ。

 でも、俺はミツレの事は、この二人より知っている。こういうやつだ、ミツレは。


「やってもないのに、怯えるのは違う。それこそ、七聖剣保持者の恥ってやつじゃないか?」


「神崎、お前」


 恥、という言葉に腹立ったのか、操神は俺の胸ぐらを掴もうとする。


「待って」


 だが、その手は俺に届くことなく、神々廻に止められる。


「神崎くんは弱いけど、言っていることは正しい。せっかく、一国の王が近くにいるのならば、討つチャンスだと思うけど?」


「チッ…………… 分かった、手を貸そう。だが、厳しいと判断したら、撤退だ」


 神々廻の手を、操神は振り解く。なんかバカにされた気がするが、この二人が一緒に戦ってくれるのならば、心強い。


「さぁ、オーディーン! 私たちが、アナタを倒します!」


 準備は整った。あとは、王が来るのを待つだけだ。


「ふむ…………… 貴様らは、一瞬で殺す事は可能だが、操神よ、先ほど援軍を要請したであろう?」


「バレてたか……………」


 舌打ちをし、胸元からトランスシーバーのような物を取り出す。電源はついており、常にこちらの声が、トランスシーバーも持っている他の人に聞こえていたようだ。


「貴様が、現れてたからかなり時間が経った。援軍を呼ばれては少々面倒だ。神王であるワシがいるとなれば、東京神対策局の連中が来そうだしな………………」


 コイツ、そこまで知っているのか。東京神対策局に所属している人達は、神が攻めてきても基本は、最強の神対策局として、各地の四頂家の守護にまわっているのだ。

 だが、神王や、それと()()()()()が現れた場合は、最優先事項である四頂家の護衛よりも優先するという決まりがある。


「それに、残りの燃料も少なくなっているな」


 今、この人間界でオーディーンを殺せる可能性が高いのは、東京神対策局の人達だ。まだ、来ないのか!?


「あら? 神王のくせに、たかが人間や妖獣に怖気付いているのですか? 情けないですね」


 ミツレが、オーディーンを煽る。いや、ミツレの事だから、少しでも時間を稼ぐためだろう。


「トールと同じような煽りで、ワシが乗ると思うのか?」


「流石に無理みたいですね」


 ミツレの煽りは、オーディーンに一蹴される。さすがは、一国の頂点に君臨している王ということだろう。


「だから、貴様ら……………… いや、全人類に神とは何かを再び教えてやろう」


 その瞬間、凄まじい悪寒がした。だめだ、奴を止めないと、とてつもなく嫌な予感がする!


「神崎! 九尾! オーディーンに何もさせるな! 奴を、スネークから引き摺り落とせ!!」


 俺が気づくよりも、早く操神は気づく。そして、俺とミツレに指示を出す。


「は、はい! 霊炎、陽炎!!」


「二の力、起動!」


 先ほどまで、神王が現れることを懸念していた操神だが、それよりも最悪な予感がしたのか、口調を荒げる。


「神々廻っ! 僕とお前は飛べない。だから、僕が急いでスネークを出すから、それまでは僕の背後を見てろ!!」


「了解」


 操神の手から、勢いよく赤い糸が出る。そして、とソウルハンターであるスネークの形ができてくる。

 だが、大型であるスネークを作るには、少し時間がいるようだ。


「遠隔起動っ! うおおお!!」


 スネークに向かって、二の力のナイフを投げる。そして、スネークの背中に着陸する。

そして、斬りつけようとするが、スネークの周りを覆う薄い謎のバリアに弾かれる。


「攻撃が一切通らない! なんだこれ!!」


「ハアアアア!! 私もダメです! 傷一つ付けられません!!」


 俺とは違い、真下からスネークの腹部を攻撃しているミツレだが、同じように塞がれる。


「ふははは! 貴様ら如きの攻撃で、ワシの魔術を突破できるわけがないだろう! 振り落とせ! スネーク!!」


 オーディーンがそう言うと、スネークは体を激しく、くねらせる。


「バランスが取れない! くそがっ!!」


 そして、俺は落下してしまう。空中に放り出された俺は落下する。


「神崎さんっ!!」


 ミツレは、落ちていく俺に視線を移したので、攻撃を止める。


「ミツレは攻撃を続けろ! 俺なら、二の力があるから大丈夫だ!」


「わ、分かりました!!」


 俺の言葉が通じたのか、ミツレは再び攻撃を続ける。そして、俺は宣言通り、二の力で綺麗に着地する。


「操神さん、どう?」


「もう少しだ、もう少し………………!」


 俺の後ろにいる神々廻と操神。どうやら、まだスネークを呼び出せていないようだ。


「ふむ、術式の準備が整ったようだ。さぁ、見せてやろう」


 オーディーンが静かに言う。そして、それと同時に、俺の、いやミツレ達の目の前にも光の板、ホログラムのような物が浮き出る。


「なんだこれ!?」


「これは、大分……………?」


「間違いない。これは、大分県」


「何をするつもりですか!」


 そのホログラムの中には、神民やソウルハンター達と戦闘をしている、大分を担当している神校の生徒や対策局の局員達が映し出されていた。


「大分にいる人間や妖獣以外の、九州地方にいる人間や妖獣共にプレゼントだ」


 つまり、大分県にいる人達以外の九州地方に今いる人達全員に、この映像が見えているということか?


「そして、さらにサービスだ」


 そして、オーディーンは指を鳴らす。しかし、何も起こらない。


「おい、何をした? そして、この映像を僕たちに見せて何の目的だ?」


 操神は、スネークを作る手を止めないで、左手で映像を払う。

 だが、何度払っても再び映像は現れる。


「たった今、全世界の映像端末を掌握した。貴様達が見ている映像と全く同じ物が、全世界の映像端末で流れている」


「なんだと? 馬鹿げた力だが、それが本当だとして、お前は何がしたい?」


 いや、だが本当に何が目的だ? 操神の言うとおり、映像を見せて何をしようとしているのだ?


「それは、今からのお楽しみだ」


 また、この悪寒だ。やばい、やばい、背筋が凍りそうだ!!


「よしっ! スネーク完成だ。神々廻、それと九尾と神崎も乗れっ!!」


 どうやら、スネークが完成したらしい。真っ黒で、目に赤い布を巻いたスネークが、俺たちの前に現れる。

 そして、俺たち4人がスネークの背中に乗った瞬間、その悪寒は最大限になる。


「No.2、ワルキューレ。その身体を構築する100の妖獣の命、そのうちの99個を贄に災禍を齎せ」


 遥か遠くの上空にて、一つの巨大な魔法陣が展開される。


「No.1、我が愛馬 スレイプニル。その身体を構築する200の幼獣の命、そのうちの199個を贄に喝采を」


 そして、ほぼ同時刻にさらに巨大な魔法陣が、その隣に展開される。


「間に合えっ!!」


 俺たちは、その強大な声音を遮ろうと上空にいるスネークに近づく。


「さぁ、災禍と言う名の喝采を!!」


 だが、それよりも早く。その災禍は地に降臨する。






「なんだ、あれは?」


 同時刻、災禍が振り落ちようとしている地で、四つの王の血を引く少年が、その二つの魔法陣を指差すのであった。


少し時間が空いてしまい申し訳ないです! 明日、第一希望の企業の二次面接があるので緊張している作者です。


それにしても、この章、もう少し長くなりそうですね・・・・

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