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日常の大切さは終わった時に気づくもの  作者: KINOKO
第1章 悲劇の始まりと終わり
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風呂での悲劇

「じゃあ、そこで靴を脱いでから俺についてきてくれ」


 坂田はそう言うと革靴を脱いで、向きを揃えると、歩き出した。ドクさんもその後に続く。


「じゃあ、俺たちも行くか」


「そうですね、広そうですので、迷子にならないようについていきましょう」


 こいつは、俺の事をヨチヨチ歩きの赤ちゃんと思ってるのかよ……………

 広い玄関で靴を脱いで、急ぎ足で坂田を追う。坂田とドクさんは、扉の前で止まった。


「じゃあ、入ってくれ。とりあえず、合わせたい奴らがいるからな。変人の集まりだが気にしないでほしい」


「は、はい…………………」


「それと、ここから先は動物園みたいなとこだ。死ぬなよ」


 俺は、ゾクっとした。なんだよ、ヤバイじゃん! 何がいるんだ!?

 すると、ドクさんが俺の肩に手を当てた。


「ドクさん……………?」


「大丈夫、根はいい奴らだってよ」


 坂田が、ドクさんが体で表している事を訳した。ドクさんって、やっぱり心優しくて良い人だな。


「じゃ、開けるぞ」


 キイーっていう、古い木製の扉を開ける音が俺の耳に入ってくる。


「あ! 坂田さん! おかえりなさい! みてくださいよ! 俺の新しいギター!! かっこいいっすよね!」


 片手に黄色のエレキギターを持った坊主頭の男が、出てきた。身長は俺よりも少し高い。

 坊主頭のその男は、坂田の手を強く握っている。


「俊介、お前うるさいぞ。ったく、外まで聞こえてたぞ。あれ? 喧嘩してたのは美香じゃないのか? 美香がいないぞ?」


 男は、坂田の手をパッと離すと、


「あいつなら風呂に行きましたよ。プリンを食べられたぐらいで殴ってくるなんて、ただの暴力女っすよ!」


 少しだけ赤色になったほっぺを抑えている。よっぽど痛かったのだろう……………


「ん? そこの2人は誰っすか? 片方は見た目的に妖獣の人っぽいすけど」


 男は、キュウビに軽く会釈する。そして、俺は男と目があった。

 見た目は野球部系ヤンキーみたいだが、その透き通った目は優しい心の持ち主である証拠だ。


「ああ、この2人は神崎 悠真とキュウビ。しばらくは、ここに泊めてやる事にしたんだ。避難所がもう無いらしくてな。仲良くしてやってくれ」


 坊主頭の男は、目を輝かせると俺の手を握ってきた。がっしりとした手から想像できていたが、力強い。


「俺の名前は財前 俊介! ギターが趣味の高校1年だ! 仲良くしてくれよな!」


 鼓膜がビリビリするほどの大声を財前はあげる。俺も、負けじと大きな声をだす。


「俺の名前は神崎 悠真っす! 特にこれといった趣味は無い中学3年生っす! よろしくお願いします! 財前さん!」


 すっと、キュウビが俺の前に出てきた。挨拶をするらしい。


「妖獣界出身のキュウビです。よろしくお願いします、財前さん」


 財前は、指を横に振っている。何か気に食わない事でとあったのだろうか。


「チッチッチ…………財前さんは硬い! 俊介でいいぞ!」


 うーん、年上なわけだし呼び捨ては気が引けるな。 

 俺は悩んだが、一つの解決策を思いついた。


「じゃあ、俊介さんでお願いします!」


「私も、よろしくお願いします。俊介さん」


「おう! よろしくな、悠真とキュウビ!」


 ニカッと大口を開けて俊介は笑みを浮かべる。太陽のように眩しい笑顔だ。


「あれ? 他の奴らはどこにいった? お前と美香しかいないのか? やけに静かだ。」


 首を傾げた坂田が、財前に聞いた。財前は、ソファに腰を下ろすと、


「俺と、女将さん、美香以外は少し前に買い出しに行きましたよ。あ! 電話しときます?」


 俊介は、ゴソゴソとポケットからスマホを取り出して、坂田に見せる。

 赤色のスマホで、ギターのストラップが付いている。


「いや、大丈夫だ。じゃあ、少しゆっくりするか。ほら、お前達も座れ」


 坂田と一緒に、茶色のソファに向かう。ソファは4個あり繋がっており、一つのソファに5人は楽に座れそうなぐらい巨大だ。


「それにしても、凄いっすねここは。まるで旅館みたいじゃないっすか! 玄関は広いし、なんかロビーみたいなのあるし!凄いっすよ!」


 ここまで広いとは思っていなかったので、俺が感激していると、


「実はな、ここは元旅館らしいぞ! だから三階建てで温泉までもある! マジで良いところだぞ!」


 俊介が、ウンウンと頷きながら言っている。


「マジで旅館だったんですか!? それなら納得です!」


「それよりもお前、フェリーに乗った時に、風呂に入ったのか? なんか汚れてないか? 」


 坂田から言われて俺は、あ!と思った。今思えば、まだ風呂に入っていない。疲れすぎて寝てしまっていたのだった。


「あ、入ってないです………」


 俺が、申し訳なさそうに言うと、


「やっぱりか。女将さん、変えの服ありますかね?」


 お茶を運びに来た、例の座敷わらしに聞いた。


「うーん、そのサイズの服はないですね……… あ! でも着物ならありますよ。それで良いですか?」


「ああ、それでお願いします。悠真に貸してやってください。」


 座敷わらしは、凄い微妙な表情をすると、俺の方を見た。


「あなたにですかぁ……………ハァ」


 俺は、今の溜息を見逃さなかった。


「ちょっとぉ! 今の溜息は何ですか! ロリさあん!………嘘です。座敷わらしさん……………」


 愛しの息子目掛けてロックオンされ、蹴りの準備をされたので、急いで撤回した。


「それと! 私の名前は、確かに座敷わらしですが! 紅葉っていう名前がありますので、紅葉って言ってください。それか、女将さんでお願いします!」


 顔を真っ赤にしてきて言ってきた。よっぽどロリって言われるのが嫌なんだろう。


「分かりましたよ。紅葉さんでお願いします」


 紅葉は、プイッと無視をして何かを持ってきた。布状の袋を持ってきて、それを俺に投げ渡す。


「よろしい! では、貸しますよ」


 袋の中身は紺色の着物だった。勿論、男物だ。


「ありがとうございます! じゃ、風呂に行ってきます! 場所はあっちすか?」


 俺の、指差す方に風呂と書いている看板が見えたからだ。


「ああ、ゆっくりしてこい。まだ、全員帰るまで時間がかかりそうだからな。」


 坂田が、テレビを見ながら言っている。


「分かりました! 行ってきます!」


「気をつけてくださいね、神崎さん。石鹸で転びそうです」


 キュウビが、変な事を聞いてきた。いや、だから俺は赤ちゃんじゃないぞ!


「んな!? そこまでドジじゃねーよ!」


 笑い声が響いた。なんか、馬鹿にされてる気がする。

 まぁ、そんな事は置いといて、俺は風呂に向かう赤い色ののれんと青色ののれんが見えた。

 そして、入り口の前にはマッサージチェアが3つと自販機が2つある。風呂から上がったら、マッサージしよっと。

 青色ののれんの方に入った。男とかは書いてないけど普通、青色が男なイメージがあるからだ。

 

 のれんをくぐるとロッカー式の服を入れるところがあった。ロッカーを開けて、服を脱ぐ。紅葉から借りた袋の中には、タオルが2つと着物が入ってたので、タオルを1つ風呂に持っていく。

 そして、素っ裸になり、風呂の扉を開ける。ムワッとした湯気が体にまとわりつく。とても広い露天風呂だ。テニスコートぐらいあるんじゃないか?

 湯気のせいで視界が悪いが、お湯は見えたので入った。


「ふぅ、 極楽だぁ…………それにしても今日一日でいろんな事があったな。俺、これからどうなるんだろ」


 そんな事を考えながら空を見上げる。星がとても綺麗だ。今日は、綺麗に見える。


「みんな、大丈夫かな………クラスメイトや先生達、それに近所の人達も………うう…………!」


 心に思っていた事が、言葉に出た。目から涙が出てくる。今日は、めっちゃ泣いたのにまだ出るのかよ!


「ハァ………それにしても気持ちいなぁ………」


 俺が、湯船に浸かっていると、パチャリという音が聞こえた。何かが水から出る音だ。


「え? まって………俺以外誰もいないはずだよな?」


 全身の毛穴から汗が出てきた。ペッタペッタと何かが歩く音が近づいてくる。

 ヤバイ、怖い! なんなんだ! 出るならでろ!

 

 ペッタペッタという歩く音が止まった。俺は、ホッとして目を開ける。


「なんだ、気のせいかな……………?」


「気のせいではないよ。ほら!」


 何かが俺に抱きついた。俺の両肩に柔らかくて大きな物が当たる。

 俺は、反射的に叫んでしまった


「うわああ!! 出たあ!」


 俺は、水の中に逃げる。なんなんだ!? 今、人の声聞こえたよな!?

 しかも女!? おいおい!! ここは男風呂だぞ!? ってことは女は入ってこれないはず!

  つまり、幽霊? そんな事を考えていると、ヤバイ! 息がもたない! 苦しい!


「プハァ!! ゴッホゴッホ!!」


「うーん、1分ぐらい? 結構入ってたなぁ。凄いなぁ! てか、君誰?」


 俺が、湯船から顔を上がると、目の前に女がいた。 

 タオルで体を隠している事は分かるが、湯気のせいで視界がよくない。


「ええ!? 女!? 助けてください! 坂田さん!! 女の人がいます! 幽霊です!」


 俺は、叫んだ。ヤバイ、幽霊だ! 幽霊のくせにタオルで体を隠すなんて!

 いや、でもチラリズムが……………… って、そんな事考えてる場合じゃねえ!


「ちょっとお!? 私、幽霊じゃないんだけど!?」


「うわァ!? やめてぇ!? 幽霊は怖い!!」


 俺は、逃げた。テニスコートぐらいある大きさの露天風呂の周りをひたすらに逃げる。

 しかし腕を掴まれて、押し倒されてしまう。


「ったく! 幽霊じゃないって! ほら!」


 女が、俺にのしかかってきた。胸が顔に当たり、タオル越しでも分かるがでかい。


「どうした!? 悠真!? どこにいる!?」


 坂田の声が聞こえた。隣の女子風呂の方からだ。え? どういう事? ここって男子風呂じゃないの!?


「ほら! 私は幽霊じゃないでしょ! 幽霊だったら胸に顔を入れる事なんて出来ないもん! 坂田さん! こっちです!」


ヤバイ、幸せだが苦しい!女が何かに気づいた。


「ん? 何か硬い物が………?」


 うわァァァァァァ!! ヤバイ! 体が起き上がれない! 誰か! 助けてぇ!

 女は、俺の顔を覗き込みながらニヤニヤしている。


「悠真!? なんで、女子風呂に入っている!?」


 目の前に坂田がいた。どうやら今来たらしい。

 そして、女が起き上がった。良かった…………!腰にタオル巻いてて良かった!


「坂田さあん、この子なんかいたんですけど、誰ですか?」


「ああ、九州から来たんだ。もう1人いる。こいつは神崎 悠真だ。てか、悠真なんで女子風呂にいたんだ?」


俺は、ドキッとした。女風呂という単語は、童貞には効果抜群だからだ。


「いや、あの! の、のれんが青色だったから! 男子風呂かなぁって思って! すいません!」


 俺が、頭を全力で下げると、


「いやいや、いいよ! 悠くんの恥ずかしい所も見れたし!」


 俺は、その瞬間、顔が真っ赤になった。ええ!? この人見たの!? マジかよ!?


「なんだか、よく分からんが、ここでは、のれんが青色の方が女子風呂、赤色が男子風呂だ。次からは頼むぞ。さぁ、風呂から上がるぞ。そろそろ、あいつらも帰ってくるだろう」


 坂田が、ため息をついて、扉を開けて出て行った。


「じゃ、私達も出ようか!」


「は、はい……………」


 俺が湯船から上がり、出ようとすると、女はクルリと俺の方を振り向く。


「あ! 私の名前は、一ノ瀬 美香っていうの! よろしくね! 美香でいいよ!」


「え!? じゃあ、美香さんでお願いします」


「アハハハハハ!! よろしくね! ゆ・う・く・ん!」


 美香は、笑いながら出て行った。美香が風呂場を出る音を聞いてから俺も着替えて出る。

 とんだ災難で、何かを失った気がするが、いい湯だった。

 さっきの、フロントみたいな所に向かう。


「気持ち良かったですか? 神崎さん」


 キュウビが、聞いてきた。キュウビの格好は巫女姿から着物に変わっていた。紅葉が、貸してあげたのだろう。


「ああ! 気持ち良かったぞ!」


「気持ちいって、まさかアレの事じゃないよね?」


 心臓の鼓動が一気に速くなる。声の聞こえた方を恐る恐る見ると、美香がいた。


「美香さん!? いや、あの! その…………!」


 俺が、あたふたしてると隣から殺気を感じた。


「神崎さん…………? また、変態さんな事をしたんですか?」


 キュウビの方を恐る恐る見て見る。ヤバイ、怖い………


「いや、その! キュウビ!? またって言いかたはやめてくれ! なんか、俺が変態になるから!」


「マジかよ! 悠真! 変態だったのか!?」


 俊介まで言ってきた。もう、勘弁してくれ………


「俊介さんまで! 違いますよ!」


「ヘェ〜、常連さんってやつかなぁ?」


 気がついたら、美香が隣に座っていた。左腕に、胸が少し当たってる。


「違いますよ! 俺は、変態じゃないっすよ!」


 すると、美香が抱きついてきた。ヤバイ! 胸の感触がダイレクトに………


「おい! 美香! 悠真が困ってるだろ! 離してやれよ!」


 俊介が、美香に指を刺して怒鳴る。


「なあにぃ? 童貞君のくせにぃ? 調子に乗んないでよ」


 美香に言われた、男の尊厳を抉るような言葉にムッとしたのか俊介は、眉をピクピクと動かす。


「はあ!? 童貞じゃあねえし! この、腐れビッチが!」


「はあ!? 年齢イコール彼女無しの奴に言われたくないんだけど?」


「なにぃ!?」


 ニ人が睨み合っている。ヤバイ、てかそれよりも俺から離れてくれないかな………

 キュウビの殺気が怖いんだよ! 目の輝きが無くなって、なんかブツブツ言ってるんだけどぉ!?


「あのぉ、お二人さん、喧嘩はやめてくださいよ!」


 一刻も早く、仲直りしてもらわないと色々とまずい! 二人は、俺の方を向いて口を揃える。


「悠真は黙ってろ!」


「悠くんは黙ってて!」


 ダメだ、手に負えない………

 そこに、救世主が来た。坂田さんとドクさんだ。しかし、喧嘩には触れずに


「おい、そこらへんにして続きは夕飯食ってからにしてくれ。そろそろあいつが帰ってくるぞ。」


 玄関の扉が開く音がした。


「ただいまー!」


 何人かの声が聞こえる。俺の、これからの生活は、どうなるんだ…………

下手クソです!

ご不満の方は、どんどん言ってください!

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