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日常の大切さは終わった時に気づくもの  作者: KINOKO
第5章 ようこそ、国立神対策高等学校へ
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毒を司る契約魔力、その名は制毒

――――時は遡り、神々廻とロキが対峙する福岡県のAエリアに場面は戻る。


「イッテエエエエエエ!? 久しぶりに深手を負ったっす〜!!」


 左肩から腹部にかけて完全に切り伏せたつもりだったが、少し甘かったらしい。ただの切り傷、まぁ深手だから少しはマシ。


「まぁ、神の再生力があれば、これぐらいの傷はなんともないっす〜」


 ロキは、少し痛がる素振りを見せたが、傷口を撫でながら、再びヘラヘラとした顔つきに戻る。


「本当に甘すぎて、反吐が出る。自分の能力、そして神の身体だからって油断しすぎ。少なくとも、ミコ相手に、その傷をつけられたらアナタの負け」


 チッと舌打ちをしながら、ミコは刀についた汚い血を振り払い、鞘に戻す。


「はぁ? 一体、何言ってるんすか? こんな傷、神の再生力があれば………………アレ?」


 ようやく、このバカは、自分の身体に起きている異変に気付いたらしい。


「な、な、な、なな!? なんで治ってないんすぁ!?」


 ロキの左肩から腹部の切り傷、確かに神であれば、すぐに止血され徐々に回復していくだろう。

 だが、今のロキの左腕は真紫に変化しており、切り傷が回復していない。腹部の方は、かなり遅くだが回復しているが、左腕はボタボタと血を溢れさせている。


「全体に毒を含めてつもりだったけど、左腕に多く注入しすぎたみたいね。我ながら情けない……………」


 いつもだったら、満遍なく切り傷全体に毒を注入していたのだけれど、少し感情が昂りすぎたみたいね。


「一体、何をしたんすか!?」


 先ほどまでの余裕綽々な表情とは真逆で、顔を青く染めながら、ミコを睨みつける。


()()()()()


 ミコは、傷口を押さえつけているゴミを見ながら、その毒鳥の名前を口にする。


「は、はぁ? その人間界の鳥がどうかしたんすか?」


「ピトフーイ、世にも珍しい羽に毒を持つ鳥。その毒は、神経系と運動能力に作用する効果を持っている」


 猛毒の名前は、ホモバトラコキシン。神経麻痺や筋萎縮を引き起こし、その毒はフグ毒で有名なテトロドトキシンの約4倍。命に関わる猛毒だ。


「いや、でも人間界の鳥如きの毒が、神であるオイラに効くなんておかしいっす!」


 ロキの言っていることは正しい。基本的に神には、人間界の毒なんて効かない。

 神を倒すには、人間の場合だと契約をして得ることのできる契約魔力や、魔力を込めた兵器でしか殺せない。

 まぁ、魔力を込めた兵器で倒せるのは神民やソウルハンターぐらいだとは思うけど。


「うん、普通は神には、人間界の毒なんて効かない」


「っ!! だったら、どうしてオイラは効いている!?」


 あぁ、ここまで無能だとは思わなかった。まぁ、あんなカスみたいな行動する男だから無理もないか。


「ミコの制毒は、ミコの身体に接種した毒を()()()()()()()()()()()()契約魔力なの」


 センセーと契約してから、毒では決して死なない()()()()になったミコ。

 そして、その特異体質だからこその契約魔力である制毒。この契約魔力は、摂取した生物の毒を汗腺から滲み出させる事が出来る。

 また、その生み出された毒は神にも効くようになり、そして契約解除しても永遠に毒自体は残ると言う特徴がある。


「厄介な能力っすねぇ!? ん? あ? 左腕が動かない………………?」


 毒は確実にゆっくりとロキの身体を蝕む。ピトフーイの毒は、運動能力に作用するから、特に毒を多く含んだ左腕は解毒するまでは動かせない。


「あれ? 顔色が悪いね? さぁ、散々バカにしてた人間界の鳥に苦しむ気分はどう?」


 ロキはやっと気付いたようだ。傷を負った時点で、自分の負けだと言う事に。


「さぁ、これで終わり。制毒、ブレットアント」


 刀身を鞘から引き抜き、左手の汗腺から滲み出た毒液を刃全体に付ける。


「やっぱり、キミは中々強いっす! でも、一箇所に毒を注入したのが間違いだったっすね!!」


 歯軋りをしながら、ロキはバタフライナイフを左肩に当てる。


「っ!? まさか!!」

 

「その慌てよう、やっぱりそうっすね!? 即効性まで毒に付与する能力には慌てたっすけど、毒は注入された部位にしか効かない!!」


 気づかれた。ミコの制毒は、普通は遅効性の毒でも即効性に変化される。すぐに効果が現れるのは強みだが、普通は全身に症例が出る毒とは違って、ミコが生み出した毒は、()()()()()()()()()()()()()()()

 だから、今回は全体に注入するのではなく、左肩に多く注入してしまったから、あくまでも左肩にしか毒の症例は出ない。


「でも、もう遅い! アナタはミコの間合いに入っている」


 早くロキを殺さないとまずい! 神にも効く毒とは言え、時間をかけられたら回復してしまう。


「痛いのは嫌っすけど、こうするしかないみたいっすねぇ!!」


 そう言うと、ロキは自身の左肩、紫色に汚染された左腕全体をバタフライナイフで切り捨てる。


「しまった!! でも、まだ間合に入っている!!」


「キミもオイラの魔力を舐めすぎっす。ここは、王子と合流して一時撤退っす! 嘲笑う道化師(リディキュール)!!」


 ロキの身体は一瞬光り、ミコが斬ったのは下半身がグチャグチャに潰された神高の制服を着た生徒、しかも同じクラスの女生徒の死体だった。


「ああっ!?」


「アハハ! 最後にその苦悶の顔を見れただけ良かったっす! じゃ、バイバイっす〜」


 ここから、少し慣れてる場所で高笑いをし、ミコに背を向けて走っている道化師の姿が見える。


「ロキィ! 逃げるな!!」


 思わず叫び、そして刀を鞘に納めてミコはロキを追おうとする。

 だが、足元に転がっている女生徒の死体と目が合う。


「制毒、ブレットアント解毒」

 

 ミコが操る毒だから、患部に触れれば、もちろん解毒は一瞬でできる。死体だから意味はないかもしれない、それでも毒を身体に含めたまま天国に行くのだけはダメだ。


「…………………ごめん、堀尾さん。毒は解毒したから。あと、もう少し待ってて」


 瞳孔を開いたまま、苦悶の表情を浮かべて死んだ彼女の目を右手でそっと覆う。

 そして、顔の土汚れを払ってミコは立ち上がる。


「アナタに、いやアナタ達にこんな事をした外道はミコが殺すから」


 激昂した感情を深呼吸で落ち着かせ、ミコはロキに向かって走り出す。

あと少しで、この章が終わるから少しやる気が起きた+雨で暇だったので筆が乗った作者です!


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