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日常の大切さは終わった時に気づくもの  作者: KINOKO
第5章 ようこそ、国立神対策高等学校へ
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七の力

「ハァハァ……………… フーッ! ハァハァ……………」


 何故だ!? 息が続かない! まるで、川底に沈んで、口から泡を出して踠いているかのようだ。


「神崎さん! 気付くのが遅くなって申し訳ありません!」


 視線の先、地に膝をついて止血をしようと、失った右腕を押さえつけているトールより、左側にいるミツレに目を向ける。


「六の力は、攻撃を当て続けると攻撃速度、動体視力、攻撃の威力などが大幅に上昇します」


 過呼吸で満足に声が出ないので、俺はミツレに向かってコクリと頷く。


「強力な力です。攻撃を当て続ければ、格上の相手をも凌駕することも出来ます」


 ああ、そうだ。当てれば当てるほど、いや正確に言ったら20回攻撃を当てた時に、双剣が光り輝き出したから、今の俺では20回が限度なのか?

 

「ですが! 攻撃を当てれば当てるほど、六の力に吸収される魔力量が比例するかのように増大していたんです!」


「なん…………だと? ゴホッ!」


 魔力探知が得意なミツレが言っているんだ、間違い無いだろう。

 九つの力は、自信を強化する契約魔力だ。例えば、一の力を使おうとしたら、消費魔力を1と仮定しよう。すると、一の力を使っている間は、それ以上の魔力は消費しない。自動販売機で、ジュースを買うイメージだと思ってもらって問題ない。

 だが、ミツレが言うには六の力は少し違う。他の力と同じように、発動する時に魔力を少し使う。そして、そこから()()()()()()()()()()()()、比例するかのように魔力を消費していたと言う事だ。イメージとして、カラオケの延滞料金みたいな感じだろう。


「ハァハァ……………… ミツレ、俺はあと何回、九つの力を使うことができる?」


 少し落ち着いたので、やっと声が出せるようになった。それでも、肺の中に剣山があるのように痛いが。


3()()です。あと3回、六の力以外の何かしらの九つの力を使うと、神崎さんは牛刀荼毘を使った時のように、完全に動けなくなります」


 ミツレは、歯軋りをさながら、少し下を俯く。


「まじかよ………………」


 牛刀荼毘、一の力を応用した技で、全魔力を霊炎に変えて炎の大剣を作る技だ。凄まじい威力と引き換えに、一定時間魔力を全て使ったので、動けなくなるというデメリットがある。

 それと同じ状況になると考えたら、俺は間違いなくトールに殺される。


「話は終わったかぁ? ゴホッゴホッ! まずは、腕を返してもらおうかぁ……………」


 止血が終わった、いや血は溢れる事をやめていないから出来ていない。トールも限界だ、神が自身を回復するには魔力が必要であるから、回復できる魔力すら残っていない。

 だから、これ以上血を流さないためにも、俺が斬った右腕を回収したいのだろう。


「俺の…………右腕を返しやがれ!!」


 トールは、フラフラと立ち上がりながら、ゆっくりと俺の方、いや正確に言えば俺の後ろに転がっている右腕に向かって脚をゆっくりと進める。


「頑丈なやつめ……………! 最終ラウンドだ!!」


 両頬を叩き、俺も立ち上がる。あくまで魔力を使い過ぎたので目眩がするだけで、一度全回復したので、身体はトールに比べたらボロボロではない。

 まだ、俺の方が有利だ! ここで、アイツを仕留める!!


「ウオオオオオオオオオ! 我は、北欧神王国が神王、オーディーンの息子、トールである!! ここで、倒れるわけにはいかないのだ!!」


「ッ!? アイツ、何を………………?」


 トールは、自身を鼓舞したかと思うと、最後の力を振り絞り全身に雷を纏う。

 こいつ、まだこれだけの魔力を!?


「神崎悠真、俺はお前を舐め過ぎていた。今の俺が放てる最高の一撃でお前を潰す」


 全身に纏った雷は、ゆっくりと左手に持っているミョルニルに集まる。

 だが、全てミョルニルに集まったわけではない。うっすらと、体全体にも雷が纏っている。


「いくぞ」


 バチバチと髪を逆立て、トールはミョルニルを構える。そして、ミョルニルは纏った雷により光り輝く。


雷鳴終末(らいめいのラグナロク)!!」


 その瞬間、凄まじい速さで俺に向かう。だが、今までと違って間に合えない速さではない。

 今わかった事だが、トールの魔力の雷は、纏えば纏うほど、スピードが上がるのだろうか?


「クッ……………!」


 どうする!? 刀では受けきれない! 一の力を纏っても吹き飛ばされそうだ。三の力で一時回避? いや、避けたところですぐに追いつかれる。

 そうだ! 二の力の大剣で一度受け止めて、そこから反撃…………… いや、二の力が吸収して、勢いよくジェットで吹き出すために必要なのは物理的な衝撃のみだから、魔力を強く纏っているミョルニルでは相性が最悪だ。


「七の力…………起動」


「神崎さん!? 七の力は、どんなのか分かりません!!」


 ミツレの言うとおりだ、普通はしないだろう。だが、何故かわからないが、俺はどんな力かも分からない七の力を起動した。六の力と同じ時に、使えるようになった七の力。

 今思えば、これまでの解放してきた力たちは、ピンチを打開するような力ばかりだった。No.(ナンバーズ)の時の二の力、そして今回の六の力。どれも強敵を倒す時に解放されてきた。

 それなら、賭けではあるが、六の力と同時に解放された七の力だっていけるはずだ!!


「これは……………」


 右手が光り輝き、そこに現れたのは2メートルはある大きな槍。赤と青の糸が捻じれるように出来ているその槍は、まるで六の力と兄弟かのような配色だ。

 

「なっ!?」


 見た目は、派手なただの槍。だが、それが完全に顕現した時、俺は違和感を感じた。


「なんっだ、これは…………… 持ち上がらない!?」


 そう、()()()|る《・のだ。シンプルな答えだが、二の力の大剣よりは細いはずなのに、それとは比べられないほど重すぎる。

 

「ハッハァ! 自分の武器すら持たないとは! 情けないぞ、神崎悠真ァ!!」


 トールが、完全に間合に入った。光り輝くミョルニルが、横から俺の頭目掛けて振るわれる。

 どうする!? 三の力を起動して……… いや、間に合わない! こうなったら、コイツで………………!

 

「ウオオオオオオオオオ!!」


 俺は、全身の力を振り絞って槍を振るう。全身をプルプルと振るわせながら、トールのミョルニルを受ける。


「ハッハァ! そんな、ナヨナヨした一撃、槍ごと貴様の体を潰してやる………… は?」


「え?」


「は?」


 場にいた、3人全てが驚いた。トールのミョルニル、それと俺の七の力の槍がぶつかった時、威力的には俺が吹き飛ぶはずだ。

 だが、宙を舞い、はるか上空に吹き飛んだのはトールだ。


「何故だぁ!? どうして、俺が空を舞っている!!」


「何が起こった!? 俺は、ただ槍を当てただけだ!!」


 トールはミョルニルで受け身を取ったので、ただ上空に吹き飛んだだけだ。


「ん…………? これは?」


 そして、俺は再び違和感に気づく。いや、どう言う事だこれは?


()()()()()()()()()()()()()()?」


 そう、それでもかなり重いが、払えないほどではない重さに変わっているのだ。

 色も六の力と似ており、同時期に発現した七の力。

 攻撃をすればするほど威力や速さは増すが、魔力を常に喰われる六の力。

 それに対して、最初から凄まじい威力だが、扱うのは困難なほど重いが、攻撃を当てれば軽くなる七の力。

 似ているが、まるで逆だ。これは、もしかして…………


「神崎さん! 七の力はもしかして」


「いや、言わなくてもいいぜ、ミツレ! 俺でも分かるほど、この二つの力はシンプルだっ!!」


 俺とミツレ、2人の考えが正しいのであれば、七の力の使い方はただ振るうのではない。正しい使い方は………


「神崎悠真ァ! 空は、俺のテリトリーだぁ!! この一撃、貴様は避けられないっ!!」


 はるか上空に吹き飛ばされたトールは、ミョルニルを横20メートル、縦も20メートルほどにし、上空から降ってくる。


「避ける? 安心しろ、そんなつもりはない!」


 あれ程の質量の物が上空から降ってきたら、受け止めることはできない。虚空から降ってきた隕石のような物だからだ。


「三の力、起動っ!」


 俺は、三の力のナイフを起動すると、それと同時にトールの方に投げる。


「ハッハァ! 確か、ワープするナイフだったよなぁ? そんな物、避けてやるわぁ!!」


 トールは、三の力のナイフをひらりと躱す。そして、三の力のナイフはさらに上空に向かう。


「ワープしたとしても、貴様あと一回しか魔力を使えない! 空中で潰してくれるわ!」


 ああ、トールの言う通りだ。今の三の力で、おれは後一回しか九つの力を使えない。遠隔起動したとしても、空中でトールに潰されるのがオチだ。


「トール! お前は何か勘違いしてるぜ? 俺は、三の力を使う気などない!」


 俺は、トールの背中目掛けて落下する三の力に右手を向ける。


「何を訳の分からないことを! 吹き飛べぇ!!」


「七の力、起動!!」


 トールの背中に近づいた三の力は、再び輝きながら七の力に変わる。


「なにぃ!?」


 強大な殺意に気づいたトールは上空で振り返る。そこには、自身が落下するよりも遥かに早く下降を始める暴れる猛虎が如く、一つの槍がある。


「七の力、暴虎馮河(ぼうこひょうが)!!」


「クソがあああああ! 俺は、俺はぁ!! 神王になるべき男なのだぁぁぁぁぁ!!」


 ミョルニルを、槍に向けて構える。だが、それは誰が見ても無謀だと分かる。上空から現れた、その一撃は、今のトールでは防ぎきれない。


「ゴボァッ…………… 神吸の野朗を殺す前に、こんなガキに……………」


 腹を貫かれ、空中で臓物が飛散する。そして、そのまま落下し、凄まじい土埃と共に地面に突き刺さる轟音が辺りを響かせる。


「トール…………… 立場が違えば、生まれが違えば、俺とお前は共に高めあってたかもしれないな………………」


 これは情けなのではない。実際、トールは神だし、人間を殺しまわっている許されないやつだ。だが、もし生まれが違えば………………


「いや、ミツレを攫いにきた時点でお前は俺の敵だ。大人しく、倒れてくれ…………」


 魔力を使い切って、フラフラとした足取りでミツレの方に向かおうとしたが、尻餅をついてしまう。

 視界がぼやけてよく見えないが、これでミツレは……………



約2ヶ月ぶりの更新です! 就職活動やら何やらでかなり忙しくて申し訳ないです!

いやー、行きたかった企業に落ちてしまって萎えてるんですよね・・・・

皆さん、こう言う時はどうやって立ち直っていますか? 教えてくださると嬉しいです笑



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