トール
―――――ロキと神々廻の場面から、悠真の視点に再び移り変わる。
「一度殺されただと!? どう言う事だ?」
トールの槌と俺の刃が、高音を立てて激しくぶつかる。
「そのまんまの意味だぁ! フンッ!!」
だが、身長が2メートルはあるであろう男と、男子高校生の平均的な身長の俺では、身体から繰り出せられる力の大きさが違いすぎる。
「グァッ!? くそっ……………」
そして、俺は再び後方に吹き飛ばされて、背中を地面に叩きつけられる。
「くそ……………… 火力が違いすぎる」
「ハッハァ! まぁ、俺は火力よりも速さの方が自信あるんだけどなぁ……………… っと、忘れるところだったぜぇ」
そう言うと、トールは気絶しているミツレの方に左手を向ける。
「おい! 何をするつもりだ!」
「安心しろぉ。殺したらはしねぇよ」
トールの左手から放たれた電気の球は、ミツレの方に向かう。
そして、ミツレに触れたかと思うと、電気の球は網目状の球体に変化して、ミツレを包み込む。
「キュウビが目覚めて、お前に加勢したらダルいからなぁ。捕縛させてもらうぜぇ」
トールの目的は、ミツレの生捕り。確かに、目覚めたら面倒臭いから、檻に閉じ込めておくのは理に適ってるな。
「キュウビを回収して、俺は親父に神王の継承者として認めてもらうんだぁ」
首をゴキゴキと鳴らしながら、トールはその場で小刻みにジャンプをする。
「そのためにもよぉ、神崎ィ、お前は邪魔だ!」
一瞬、トールの全身が青白く光ったかと思うと、その時にはもう遅かった。
俺の間合いにトールが入ってきたからだ。まずい! この距離、避けられない!
「くそっ!!」
俺は、反射的に刀を抜刀し、トールの槌を受け止める。そして、凄まじい力で再び吹き飛ばされる。
「うわあああああ!!」
槌を刀で受け止めたのは良いものの、衝撃を流していなかったので、俺の身体は空を舞う。
「ゴハァッ! こ、ここは………………?」
トールによって吹き飛ばされた俺は、どこかの大きな建物のガラスを突き破って、建物中に入った。
長い廊下と石造りの手洗い場、そして内装が同じような無数の部屋。
「ここは、学校か。そして……………」
身体中に付いたガラスのカケラを落としながら、俺は外の様子を確認する。
契約起動していなかったら、ガラスで流血は避けられなかっただろうな。
「俺がいるのは三階か」
外を見て、自分がいるのは3階だというが確認できた。
「しまった! ミツレと離れてしまった! 急いで戻らな」
「おーいおいおい、その必要はないぜぇ?」
ミツレのいた場所に戻ろうとした瞬間、学校の外から俺を吹き飛ばした奴の大声が聞こえてきた。
「トール!!」
「ハッハァ! 良い顔すんじゃあねぇか! その恐怖を貼り付けた顔、もっと近くで見させてくれよぉ!!」
「その必要はないぜ。今から、お前の元に行ってやるからよ!」
良かった。俺が吹き飛ばされたから、ミツレをトールに回収されたかと思った。
あの場には、トール以外の神や神兵、ソウルハンター達はいなかったから、ミツレは大丈夫だろう。
ミツレをトールに回収されると言う、最悪の事態だけは避けられた。
「いや、お前は来なくて良いぜぇ?」
俺が、破れた窓ガラスから身を出そうとした時、トールは不敵に笑う。
「その学舎を破壊するからなぁ!!」
そう言うと、トールの持っていた小さな槌が光り輝き出す。
そして、小さな槌は一瞬にして、巨大な槌に変化する。横幅は何メートルだ!? 分からない!
だが、確実にこの学校を丸ごと潰せる!!
「ハッハァ! 潰れろぉ!!」
「くそ! 間に合え!!」
迫り来る巨大な槌。圧死してしまうという恐怖の感情よりも、俺は外に向かってナイフを放り投げていた。
「死ねぇ! 神崎悠真ァ!!」
全てを無に返すであろう巨大な槌が、学校を潰す瞬間、俺は叫んだ。
「遠隔起動ぉ!!」
そして、ギリギリのところで三の力のおかげで、外に脱出する事ができた。
いつもだったら、着地点も予想して三の力を起動するが、今回はそんな暇はなかった。空中に放り出された俺は、隙だらけの状態になる。
「た、助かった!」
「助かったぁ? そんな丸腰でよく言えたもんだなぁ!!」
その声が聞こえて、俺は後ろを振り向く。だが、俺が振り向いた時には、声の主は高く跳躍し、俺よりも少し高い位置にいた。
「しまっ」
「ハッハァ! 遅すぎるんだよぉ!!」
そして、声の主であるトールは、俺を真横から思いっきり槌で叩く。
凄まじい衝撃が横腹に加わり、俺は再び吹き飛ばされる。
「グハァッ! ハァハァ……………………」
瓦礫に突っ込んだ俺は、フラフラとしながらも立ち上がる。
「ミツ、レ………………」
どうやら、吹き飛ばされた先はミツレがいた場所だったらしい。
再び、同じ場所に偶然かは知らないが、吹き飛ばされたようだ。
「おーいおいおい、また同じ場所かよぉ!?」
俺が、ミツレの場所にフラフラとしながら向かおうとした時、トールも再び戻ってきた。
だめだ、力の差があり過ぎる………………! 俺一人だと勝てない!!
お久しぶりです! 最終レポートや期末テストなどのリアルの用事で死にかけてました!(ゲームしてたなんて言えない)
来月末に資格のテストがあるので、更新頻度は下がりますが、テストが終わったら投稿頑張りたいと思っておりますので、どうかよろしくお願いします!!