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日常の大切さは終わった時に気づくもの  作者: KINOKO
第5章 ようこそ、国立神対策高等学校へ
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ロキ

「ねぇ! どうして、こんな事をしたの!?」


 神や神民、そしてソウルハンターは、人間なら誰しもが持っているソウルという未知のエネルギーを、回収するために襲来しているはずだ。

 だが、ロキが行なっていることは命を弄んでいる行為だ。ソウルを回収しているのは、部下の神民だけであり、ロキ自身は、ショベルカーで人間をグチャグチャにして遊んでいる。


「んー、それは難しい質問っすね〜」


 ロキは、貼り付けたようなヘラヘラ顔を浮かべて、ミコの攻撃を弾く。


「難しい………………?」


「だってさぁ〜 君たち人間だって、小さい頃に蟻を潰して遊んでたっすよね? 何匹殺したとか考えたことあるっすかぁ? 無いっすよねぇ?」


 ロキは、ジャックナイフの刃の部分を下で舐めながら、そう答える。


「はぁ、そう………………」


「おお〜! 納得してくれたっすか! 白衣の姉ちゃん、良いやつじゃないっすか〜!!」


 人間を家畜、いや、それ以下でしか見ていない生物に質問したのが間違いだった。


「良かった、遠慮なくお前を殺せそう」


 ニコッと笑みを浮かべて、ミコは鞘から刃を引き抜く。ピンクの刃には、うっすらと切り伏せた神民達の血が付いている。


「あーあ、分かり合えると思ったんすけどね〜 そうしたや、一瞬でハンバーグにしてあげたっすのに……………」


 ハァとため息を吐き、ロキは背伸びをする。背伸びをやり終わると首の骨をパキパキと鳴らす。

 そして、それまではヘラヘラした笑みを浮かべていたが、急に真顔になる。そのあまりの変貌に、ミコは一瞬だけゾッとした。


「行け。再起不能にしろ」


 ロキが、人差し指でミコを指差す。すると、それまではソウル回収作業や、ミコとロキを遠巻きで見ていた神民とソウルハンター達が、一斉に動き出す。


「はっ! 行くぞ!!」


「はい!」


 神民が5人、ソウルハンターのリザードが八体、一気にミコの方に走ってくる。

 そして、ロキは逃げるわけでもなく、瓦礫の上に座り、ニヤニヤとコチラを見ている。


「そう、あくまでも()()()()()()ってわけね」


 まず、最優先はロキ。アイツを仕留めれば、戦況はだいぶ変わるはず。ロキの実力は分からないけど、ここで逃したら、更に犠牲者が増えてしまう。


「落ち着け、ミコ……………………」


 呼吸を整えろ。大きく息を吸って、大きく吐く。そして、ゆっくりと手に力を加える。


「四方から囲め! ロキ様は、再起不能にしろとの事だ! 腕の1本や2本は構わん!!」


「了解!!」


「モクヒョウホソク。プランCデ、イキマス」


 リザードは全員、逃げないようにするためなのか、ミコの背後に回る。神民は、正面に一人、左右に二人ずつ並び、槍と盾を構える。


「申し訳ないけど、外道を斬るのに、あなた達は邪魔!!」


 勢いよく右足を地面に叩きつけ、右から槍で突き刺そうとしてきた神民の攻撃を刃で受け流して背後を取る。


「なっ!? コイツ、速」


「一人目」


 背後を取られたら、誰であろうと不安になって振り向いてしまう。その隙をついて、神民の喉笛を掻っ切る。


「怯むな! 行け、行けぇ!!」


 隊を仕切っているのか、正面にいた神民が怒号を上げる。そして、それに鼓舞されたのか、倒れた神民の後ろから、もう一人、槍先をこちらに向けて突進してくる。


「うおおおおお!!」


「鈍重、それではミコは倒せない」


 再び、槍を受け流す。そして、神民の身長分ほどの巨大な槍を踏み台にして跳躍する。


「しまった! 避け」


「二人目」


 神民の脳天目掛けて、刃を突き刺す。そして、刺した瞬間に、刃を引き抜いて、横から首を落とす。


「く、くそおおお!! 3人がかりで行くぞ! ソウルハンター共よ! 奴の背後を取るのだ!!」


「りょ、了解!!」


「は、はい!」


 残り3人の神民は、一斉に槍を構える。そして、背後からは、ゆっくりと確実に逃げ道をなくすように、ソウルハンターが近づいてきている。


「3人は少し面倒。でも、行ける」


 ミコは、再び呼吸を整える。落ち着け、ロキを倒すためだ。仕方ない、そう仕方ないんだ。

 命を奪うという行為を正当化するために、自分自身に言い聞かせる。我ながら、情けない。


「行くぞっ!!」


「「はい!!」」


 3人の神民が、一斉にこちらに向かってくる。背後には、ソウルハンター、逃げ場はない。


「………………ミコは、突き進む」


 3人一斉に槍を構えて、攻撃してきたので、再び跳躍して避ける。3人の攻撃は、息もぴったりで連携が取れていた。

 だが、息がぴったりすぎる過ぎる攻撃というものは、外れた時に一瞬の隙が生まれるものだ。


「くそ! また避け」


「3人目」


 ミコは、空中で鞘から刀を抜き、両手で力を込めて神民の脳天から股まで真っ二つに叩き斬る。


「隊長ぉぉぉ!! くそおおお!! 隊長の仇を」


「お、おい! 連携を忘れ」


「4人目、5人目」


 左から半狂乱になって襲ってきた神民は、肩から首を落とす。そして、右にいた神民は、上半身と下半身を真っ二つにする。


 完璧な連携というものが、どうして外れた時に隙が生まれるなのかは簡単だ。

 それは、完璧過ぎるから。イレギュラーな事が起きて、ソレが外れてしまった時、対処するのが難しいからである。


「ソウテイガイ、ソウテイガイ。ダガ、ヒクワケニハ、イカナイ」


 ソウルハンターは六体。神民ほどの強さはないとはいえ、数の暴力は恐ろしいものだ。


「あららら……………… ここまでの手練れとは思わなかったっす。オイラが行くっすから、君たちはステイっす」


 ミコに、襲い掛かろうとしていたソウルハンター達は、歩みを止める。 

 そして、瓦礫に座っていたロキが立ち上がる。ロキの履いている靴は、歩くたびにプップップと音が軽快に鳴る。


「良かった。余計な体力は使わないで、お前を殺せそう」


「殺せそうっすか〜 酷いことを言うっす」


 力強く右足を踏み込み、刀を抜刀する。そして、間合いを一気に詰める。


「ミコの契約能力を使う。制毒(せいどく)……………」


「へぇ、本気をまだ出してなかったんすねぇ」


 抜刀した刀の刃に、左手を添える。そして、左手から滲んで出てきた、いや汗腺から滲み出てきた液体を刃に付ける。

 

 人間をソウルに回収することでさえ許されないことだ。だが、ロキは神の仕事でもあるソウル回収をせずに、ただ無惨に殺して遊んでいた。

 そんな奴には、死にたくなるような痛みをプレゼントしてあげなければ。


()()()()()()()


 そして、ロキの首、いや少しでも身体に当てればいい。この距離、確実にいける!


「ロキ、お前は遊び過ぎた。死よりもツラい痛みをあげる」


「ええ!? 痛いのは嫌っす! じゃ、オイラも力を見せるっすよ〜! 嘲笑う道化師(リディキュール)!」


 ミコの刃が、ロキの右腕に当たろうとした瞬間、一瞬だけロキが光る。


「え?」


 おかしい、ミコは確実にロキに攻撃を当てたはず。それなのに、ミコの刃は先程殺した神民に突き刺さっている。


「アッハッハ! 危なかったっす〜 あー、でも死体にやっても君の能力がどんなのかわからないっすねぇ〜」


 そして、殺した神民の位置、そうミコから少し離れた背後にロキはいた。

 仲間の死体を利用した道化師が、戦場で高笑いをしているのであった。

お久しぶりです! リアルな用事が少し忙しくて投稿できませんでした!

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