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日常の大切さは終わった時に気づくもの  作者: KINOKO
第5章 ようこそ、国立神対策高等学校へ
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雷鳴が如く

「ミツレ! 飛炎で行くぞ!」


「はい!」


「ハッハァ!! 血気盛んなのは悪かぁねぇ! そういう奴らは大好きだ!」


 上裸の男は、口を大きく開いて笑う。完全に、舐め腐っている。


「だが、まずはコレを見てくれや」


 速攻で蹴りをつけるために、1番機動力のある飛炎をしようとしたが、男の一声で俺たちは足を止める。


「じゃじゃーん! コレ、なぁーんだ?」


「なっ!?」


「ッ………………!」


 俺たちは、男の首を斬ることしか考えてなかったので、左手で持っているものに気づく事ができなかった。


「こうするとよぉ、良い感じにソウルの量が増えるんだよなぁ。ま、()()()()()()()調()()するのが難しいんだけど」


 男が片手で持っているものは、変わり果てた姿の少尉だった。四肢は潰され、全身から血が吹き出している。


「嘘だろ……………」


「少尉!」


 俺たちのエリアを担当していた少尉は、見るも無残な姿に変わり果てていた。

 今日初めて会った人だったが、経験の浅い学生や、他の対策局の人たちに的確に指揮を出せる人だった。

 それに、なにより……………


「ミツレ、少尉ってかなりの実力者だよな?」


「はい、神対策局の階級制度だけ見ると、階級としては一番下です。ですが、()()()()()()()()()()()()()()ですし、階級を持っていると言う事だけで、その実力が認められた人だという事が分かります」


 神対策局の階級は、トップから元帥、その次に大将、中将、少将、大佐、中佐、少佐、大尉、中尉、そして少尉である。

 これだけ見ると、一番下の階級だが、ミツレの言う通りで階級を貰えること自体が凄い事なのだ。

 例えば、対策局の隊長をしているが、階級は持っていない人などもいるからだ。隊長や副隊長になるには単純な強さだけと言われているが、階級は強さだけでなく、人望など様々なものが求められるので、もう一度言うが、貰える人はかなり少ない。


「あー、やっぱりコイツ、階級持ちだったのか。やけに正義感強くてよぉ、周りにいた奴らを守りやがるから手こずったぜぇ」


 四肢を切られた少尉を地面に落とす。一瞬だけ、身体がビクッと動く。


「ま、コイツが守ってた奴ら全員、回収したけどなぁ! ハッハァ!!」


「……………ろ」


「あ?」


 地面に倒れていた少尉が、歯を噛み締めながら、こちらを見る。

 身体は、ボロボロでもう戦う事も、立ち上がる事も出来ないが、その眼だけは生きていた。


「少尉!」


「神崎! 九尾(つづらお)! 今すぐ逃げろ! 応援が来るまで、別のエリアの担当者の元に行くのだ!」


 少尉と目線が合った瞬間、俺たちは少尉の元に行こうとした。

 だが、少尉の鬼気迫る眼力と声で足を止める。


「で、でも……………」


「早く行け! それに、コイツはただの神じゃ」


「あー、そろそろうるせぇ」


 少尉が、何かを言おうとした瞬間、落雷が少尉目掛けて落ちる。


「グハァッ………………」


「少尉!」


「あ、あぁ……………」


 落雷が身体に落ちた瞬間は、海老のようにビクンッと動いたが、それを最後に少尉はピタリと動かなくなった。


「おいおい! まさか…………」


 男は、動かなくなった少尉の髪を乱暴に掴み持ち上げる。

 そして、ジーッと少尉を見つめて、ため息を吐く。


「あーあ、もう死んじまったよ。お前らのせいだからなぁ!? ったく、せっかく良い感じにソウル高めてたのによぉ………………」


 死んでしまった少尉を、男は踏み付ける。そして、まるでサッカーボールを蹴るみたいに、乱雑に蹴り飛ばす。


「貴様ぁぁぁぁ! よくも少尉を! いや、皆んなを!!」


 怒りという感情は、戦場においては一番無駄な感情だ。物事を冷静に判断できなくなる怒りという感情は、無駄でしかない。

 でも、目の前で仲間が殺されて怒らない人間なんていない。


「ミツレっ!」


「はい! いきます!」


 俺は、三の力を発動し男の方にナイフを投げる。そして、完全にナイフが間合いに入ったところで、


「遠隔起動っ!」


 と叫ぶ。すると、俺はナイフの位置まで瞬間移動し、刀を鞘から引き抜く。


「一の力、起動!」


 そして、瞬間移動した瞬間に、一の力を起動して霊炎を刃に纏わせる。


「もらった!」


 初見の相手には、この技のコンボが一番効く。受け止められたとしても、背後からミツレの援護攻撃をしてもらえる。そうしたら、確実に相手に攻撃が当たる!


「中々に早い、いや瞬間移動かぁ? もしかして、お前らが……………」


「なっ!?」


 この技のコンボは、仮想空間での瑠紫との演習でも受け止めるしかなかった。まぁ、防がれたは防がれたが、避けはしなかった。

 いや、間合いを急に詰められるのだから、()()()()()()と言った方が正しいだろうか。


「ハッハァ! だが、速さで言ったら俺の右に出るものは、そうそういねぇんだよなぁ?」


 俺の背後から、やつの声が聞こえる。何故だ!? この技のコンボは当たらなかったとしても、防ぐのが関の山で、避けるなんて不可能だぞ!?


「何故」


「遅い遅い遅い遅い! 遅すぎるんだよぉ!」


 俺が振り返るよりも早く、男は右手に握りしめた槌を天に掲げる。


「我が槌、()()()()()よ、弱き者に万雷を!」


 だめだ! 間に合わない! やつの攻撃の方が速い!


剛勇雷霆(ごうゆうらいてい)!」


 ミョルニルと言われた男の槌は、男の叫びに呼応し光り輝く。

 そして、天から雷がミョルニルに向かって降り注ぎ、その雷はミョルニルに纏わりつく。

 身長は2メートルはある大男によって、振りかざされる落雷が如く一撃。その一撃は、完全に俺の頭目掛けてだった。


「神崎さんっ!!」


 その時だった。俺の頭目掛けて振りかざされた落雷、直撃するまでの一瞬の隙をついて俺と男の間に一人の少女が割って入る。

 そして、俺の身体を体当たりで突き飛ばす。一瞬だけ、その少女と目があったが、その少女は静かに笑っていた。

 だが、次の瞬間には少女の身体には落雷が直撃し、30メートル先の瓦礫に突き飛ばされた。


「ミツレェェェェェ!!」


 頭から血をポタポタと流したまま、動かなくなった少女。

 身を挺して大切な人を守った少女、それに対して、少年は叫ぶ事しかできなかったのだ。

またまた連続投稿です! やっぱり、盛り上がりシーンは執筆の速度とモチベーションが爆上がりですね!

ここからは、三つの視点で物語が進んでいく予定なので、そこにも注目していただけたら幸いです!

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