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日常の大切さは終わった時に気づくもの  作者: KINOKO
第5章 ようこそ、国立神対策高等学校へ
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昼休憩と屋上

「…………………崎! ……………………崎!」


 どこからか俺の名前を言う声が聞こえる。女の声だと言う事は分かるが、その野太い声は荒々しい印象を与える。


「神崎! オレの授業で居眠りするなぁ!!」


 一際、大きな声が耳元から入り、俺は夢の世界から、ボンヤリとだが解放される。


「ん…………? 痛えええええ!?」


 だが、夢の世界から解放された俺に待ち受けてたのは、鮮烈な一撃だった。岩導が全力で投げたチョークが、俺の額に直撃したのだ。


「まったく、オレの授業で良い度胸してんじゃねーか? あぁ? 神崎ぃ?」


 額に血管をピクピクと浮かばせ、指をポキポキと鳴らしながら鬼、もとい岩導は俺の元にゆっくりと来る。


「ひ、ひいいいいい!? か、勘弁してください!!」


「問答無」


キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン………………


 俺の頭上目掛けて放たれようとしたゲンコツは、四限目の授業を知らせるチャイムに阻止された。


「………………命拾いしたな、神崎。よーし、今から昼休憩だ! 授業終わるぞ〜」


 岩導は、教科書で軽く俺の頭を叩くと、教室を後にする。そして、岩導が教室を去った瞬間に、教室全体は昼休みの空気に包まれる。


「あぁ……………… 危なかったぁ!」


 俺は、安堵して胸を撫で下ろす。いやー、危なかった。岩導のゲンコツはマジでヤバいからなぁ。


「危なかった、じゃないですよ神崎さん。居眠りはいけませんよ」


 ハァと、ため息を吐きながら一人の少女が俺の席に来た。銀髪の少女は、お弁当を片手にやって来た。


「はははは………… ミツレは手厳しいなぁ。でも、体育の後の国語の授業は地獄だぜ」


「まったく、情けない男だな神崎悠真。チョークを投げられた瞬間の顔は酷かったぞ」


 ミツレと同じようにため息を吐きながら、もう一人やってきた。


「る、流風…………… 容赦ねーなぁ……………」


 深い青髪が特徴的な短髪の少女が、ゴミを見るような目で見てきた。

 相変わらず、俺に対してだけ容赦なくないか?


「まぁまぁ、授業中は眠たくなるものだよ〜」


 ミツレと流風とは違い、俺を擁護してくれる少女が現れた。


「氷華! そうだよな、うんうん、眠たくなるよなぁ」


「まぁ、でも寝るのは良くないけどね」


 セミロングの茶髪の少女こと、氷華は急に真顔になる。普段は優しいけど、たまに見せる表情が怖い。


「さ、昼ごはん食べましょうよ。お腹ペコペコです!」


「ミツレの言う通りだ、食べるぞ」


「うん! 今日の女将さん手作り弁当はどんなのだろう〜!」


 瓔珞とのプチ騒動から、ちょうど2週間が経った今日。新しく始まった高校生活という日常を楽しんでいた。

 そして、いつものように三人がお弁当を開け、その後に俺も続こうとした時、俺は視界の隅の光景で箸が止まる。


 毎回、昼休みが始まると神々廻 光理はどこかに消えるのだ。売店で昼飯を買っているのだと思うが、いつも一人だ。クラスで誰かと話しているのは見たことがない。


「ん? 神崎さん? どうかしましたか? 今日は、オムライス弁当ですよ」


「ごめん! 先に食べててくれ!」


「か、神崎さん!?」


 俺は、開けようとした弁当箱を閉じて教室を後にする。別に、ひとりぼっちの神々廻を哀れに思ったとか大層なことではない。

 きっと、アイツは一人が好きだろうし、他人が干渉する事を嫌うだろう。


「それでも、気になる! アイツは昼休みは何してるんだ?」


 ただの興味本位だ。俺と同じ七聖剣の持ち主であり、同じクラスメイトだ。少しぐらい、関わっても良いはずだ!


 俺は校内を走り回る。道ゆく人に、神々廻の目撃情報を聞いて、遂に目的の場所に辿り着いた。


「ハァハァ……………… ここか……………」


 ()()()()()()と赤文字で書かれた貼り紙が、貼られた扉を俺は開ける。

 

「す、すげぇ………………」


 人工的に作られた島の上に建てられた、超高層ビルにも負けない建物である神高。

 その頂上である、この屋上から見える景色は、いわゆる絶景とやつだろう。360度全てを見渡しても、終わることのない水平線が広がっている。


「……………ここは、立ち入り禁止のはずだけど?」


 ボサボサの腰まである紫髪、スポッチをカチャカチャとやり、エナジーゼリーを口に咥えている少女がいた。


「ふっ、神々廻、それはお前には言われたくないぞ?」


「う……………」


 いわゆるブーメラン発言がクリティカルヒットしたのか、神々廻は俺から顔をそらす。


「はぁ、何しに来たの? 先生に言いつけるの?」


「いや、そんな事はしねーよ。単純に、お前がいつも何処かに行ってるから気になっただけだ」


「ふーん……………」


 俺の話を興味なさそうに聞き、神々廻は再びスポッチに目を向ける。


「お前、いっつもスポッチしてるけど何やってんだ?」


「別に関係ない。ミコの勝手でしょ」


 神々廻は、いつもスポッチをしている。体育と神対策訓練の二つの身体を動かす授業以外は、いつもスポッチをしている。

 俺は、こいつが何のゲームをしているのか気になった。


「そんなこと言うなよ〜 一体、何をやってるんだ?」


「な!? 隣に座らないで!」


 俺は、神々廻の隣に座った。そして、前髪で隠れているが、嫌そうな表情をしているであろう神々廻のスポッチの画面を覗く。


「お、大合戦か」


 神々廻がやっていたのは、大合戦という対人用格闘ゲームだった。

 大合戦、このゲームは世界中でやられている大人気ゲームだ。世界中の武人が出ているゲームであり、先に体力が無くなったら終わりというシンプルなゲームだが、それゆえにプレイスキルの差がよく出ると言われている。

 俺がお世話になっている千葉神対策局では、皆んなこのゲームをやっており、普段から俺もよくやっているのだ。


「………………大合戦、やっているの?」


 その瞬間、神々廻の声のトーンが変わった。まるで、敵と鉢合わせた武士みたいだ。


「あ、あぁやってるぞ。これでも、先輩やミツレ達と毎日やってるからな」


 神々廻の雰囲気に、一瞬だけ怖気付いてしまったが、すぐに体制を戻す。


「ふーん、じゃあ、やろっか」


 そう言うと、神々廻はカバンの中からスポッチのコントローラーを取り出して、俺に渡す。


「え、神々廻? 急にどうした?」


 ポカンとしている俺をよそに、神々廻はスポッチを携帯モードから大画面モードに切り替える。

 大画面モードは、空中にスポッチの画面が映し出されて、テレビではなくても大画面で複数でプレイできるものだ。


「ミコ、このゲームでは手加減はできないから」


 な、なんか一緒にゲームする流れだけど、俺何か言ってしまった!?

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