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日常の大切さは終わった時に気づくもの  作者: KINOKO
第5章 ようこそ、国立神対策高等学校へ
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二皇瓔珞

 俺は、二皇瓔珞がいるシュミレーション室とやらに向かう。幸い、廊下の至る所には、フロアマップが表示されているので、シュミレーション室が、この階の端にある事はすぐにわかった。


「よし、行くか」


 固唾を飲み、俺はシュミレーション室へと足を進める。

 だが、何かがおかしい。俺一人しかいないはずなのに、凄い数の足音が背後から聞こえる。


「いや、あのさぁ………………」


 もちろん、分かってた。てか、教室を出た瞬間に分かってたんだけどな?


「なんっっっっで! 付いてくるんだよ!?」


 そう、俺の後ろには、クラスメイト全員が付いてきていたのだ。その奇妙な光景に、俺は思わず全力のシャウトをしてしまう。


「まぁ私たちも気になりますし……………」


 ミツレ、及びクラスメイト全員が苦笑いを浮かべる。


「せっかく、俺がカッコつけて教室を出たのに、これじゃ意味ないじゃん!」


 あれだけカッコつけて教室を去ったのに、これは恥ずかし過ぎないか!?


「まぁまぁ、神崎さんが空回りするのは、いつもの事ですので気にしませんよ」


「いや、さらっと酷いこと言ったな!? おい!!」


 廊下が笑い声に包まれる。おいおい、せっかくの高校デビューが、無惨に散ったんだけど……………





 俺、いやクラス全員は、瓔珞が待っているシュミレーションルームと書かれた部屋の前にやって来た。


「遅かったな、神崎。諸々の設定は済ませてある。痛覚無しに設定しておいたから安心しろ」


 そう言うと瓔珞は、勢いよく部屋の扉を開けて、室内にあるカプセルの中に入る。どうやら、準備万端みたいだ。


「じゃ、行ってくる」


 そう言って、俺はカプセルの中に入る。ミツレ達は、部屋の中にはいるが、仮想現実の様子を見れるモニターの前にいるようだ。


「よし…………… シンクロ!」


 目を閉じて、俺がそう唱えると、カプセルの中にいたはずの体は、二次試験と同じようなところに飛ばされる。


「来たか」


 俺の向かい側に、瓔珞は立っていた。契約起動はまだしてないらしく、 学ランのままだ。


「あぁ。正直、お前が何をしたいのかはよく分からない。最後に言うが、あの紫の甲冑は出さないからな?」


 あの力は強力だが二度と出さないと決めているからだ。アイツの力を借りるのは癪だし、アイツ自身が何をしでかすか分からないからな。


「ふっ、それは始めないと分からないだろう? 契約起動!」


「くそっ、やらなくちゃならないか………… 契約起動!」


 二人の少年の身体は、一瞬だけ眩い閃光に包まれる。そして、瞬きを終えたぐらいに、彼らは別の姿に変貌する。


「それが、お前の契約起動後の姿か」


「あぁ、そうだ。どうだ? 美しいだろう?」


 深緑色の煌びやかな装飾の身についた軍服、厚底の真っ暗な革製の靴、腰に刺した西洋の剣と言い、普通だったら中世の軍人のような風貌だ。

 だが、瓔珞は赤色のマントを羽織っており、それは軍人というよりは、まさしく()と呼ばれる者であった。


 一瞬、どこぞのピンク髪の神様みたいな事を言ってたような気がするが、聞かなかったことにしておこう。


「俺は、お前と戦う理由は別にない。さっさと終わらせてもらうぞ!」


 いわゆる先手必勝というやつだ。俺は、瓔珞に向かって走り出し、刀を腰から引き抜く。

 瓔珞は動く気配がない。それどころか、腰に刺している鶴がも抜かない。

 ただ、不気味なほどに堂々と立っているだけだ。


「取った! 悪くは思うなよ」


 瓔珞との距離は、1メートルもない。この距離なら、首を断ち切って即終了だ。


「王に近づくな。無礼だ」


 また()()だ。あの強者のオーラのせいで俺は一瞬だけ手が止まってしまった。

 もちろん、その一瞬の隙を瓔珞が逃すわけがない。


王の狂飆(おうのきょうひょう)。吹き飛べ、無礼者が」


 右手を天に掲げた瓔珞がそう言うと、瓔珞を中心として凄まじい風が巻き上がる。

 いや、それは風というよりは嵐のようなものだ。


「く、くそおっ!!」


 瓔珞の半径1メートルを爆風が包み込んだせいで、俺の刀はヤツには通らない。

 そして、俺は無様にも後方に吹き飛ばされてしまった。


「いたたた………………」


 幸い、受け身を取ったので視界の右上隅に見える体力バーは減っていない。

 体力バーがあるという事は、現実世界の体力とは違って、あらかじめ設定された体力だという事だ。

 痛覚無し、なおかつ体力制限ありという今回のシュミレーション、瓔珞は本気の戦いは望んではいないということか?


「それにしても、凄まじい勢いの風圧だな。アイツの契約魔力は風系か」


 ここまでの威力の技を、出し惜しみなく放てるという事は、瓔珞はかなりの魔力を保有しているという事だろう。

 

「同じ風系の流風とは違って、どちらかと言うと氷華みたいなタイプのようだな」


 流風や俺みたいに、自身を強化するタイプではなくて瓔珞は、ミツレや氷華といった魔力を放出して攻撃するタイプのようだ。


「聞き捨てならんな。()()()()だと? 俺様を舐めるなよ」


 瓔珞の周りで渦巻いていた嵐は収まっていた。そして、瓔珞は俺に剣先を向ける。


「悉く滅せよ、王の殷雷(おうのいんらい)!」


 その瞬間、俺の頭上目掛けて一筋の雷が落ちて来た。


「なっ!?」


 ギリギリ何とか避けることに成功したが、雷が落ちた後の地面は深く抉れており、黒く焦げていた。


「何て威力だ! あんなのに当たったらヤバいぞ!? いや、それよりも」


「おい、惚けていて良いのか? 王の殷雷!」


 俺が言おうとした言葉を、瓔珞は容赦なく遮り、再び雷を天から放つ。


「くそっ! 連続で行けるのか!」


 かなり高威力の技だが、雷が地面に落下する時に、一瞬だけ地面が青白く光るので、何とか避けれている。


「中々やるじゃないか! コイツはどうだ? 王の白雨(おうのはくう)!」


 瓔珞は剣を鞘に収めて、今度は左手をこちらに向ける。すると、手のひらから水で出来た弾丸のようなものが、まるでマシンガンかのように、こちらに向かってくる。

 いや、マシンガンというよりは、手のひらから放たれる豪雨か?


「風、雷、そして今度は水かよ!? くそっ! 意味が分からない! 一の力、起動!」


 確か、契約魔力は普通は一つの属性、例えばミツレなら青い炎である霊炎、そして坂田なら自身を強化したりする黒骨と言ったメインの物しか出せないはずだ。

 イレギュラーも極稀にいるとは聞いたが、それがまさか、こんな形で会うことになるとはな!


「いや、今は考えている場合じゃねぇ! うおおおおおお!!」


 俺は、霊炎を刀に纏わせる。そして、次々と襲ってくる無数の水の弾丸を断ち切る。


「だめだ、埒があかない! 本体を叩かないと!」


 瓔珞が、どれぐらいの魔力保有者なのかは分からない。だが、連続で大技を何度も繰り出している事から、かなりの魔力を持っているということだけは分かる。


「うおおおおおおおおお! 瓔珞ぅ!!」


 俺は、走りながら無数の水の弾丸を断ち切る。

 もちろん、全ての弾丸を捌き切れるわけがない。幾らかは、身体をかすってしまい、体力バーが徐々に減っている。


「この天をも統べる二皇瓔珞に歯向かうか! この無礼者がぁ!!」


 瓔珞は、俺との距離が近づき遠距離性の弾丸では不利だと判断したのか、再び剣を引き抜く。

 そして、その剣に先程の凄まじい風を纏わせる。


「瓔珞ぅ!!」


「神崎ぃ!!」


 俺と瓔珞の怒号が辺りを響く。砂吹雪があたり一面を駆け巡る。

 そして、剣と刀がぶつかろうとした時、まるで岩にでも打ちつけたかのように両者ともピタリと止まる。


「おーいおい、勝手に教室抜け出して喧嘩かぁ?」


 砂煙が立ち込める中、俺でも瓔珞でもない女の声が聞こえる。


 そして、砂煙が収まって女の姿と今現在の現状が明らかになった。深紅の特攻服を見に纏い、深紅とは正反対の鮮やかな青髪、そしてエッジの効いたカールヘアは彼女の性格を表しているかのようだ。

 そして何よりも、この状況がおかしい。悠真と瓔珞は全力でぶつかっていたのに、そこに急に現れた謎の女が、人差し指と中指で二人の刃を挟んでいるのだ。

 まさに、岩に挟まって抜けなくなった剣のように、二人の剣はびくともしない。


「なっ!? アンタ」


「貴様っ! 邪魔を」


 俺と瓔珞が、ハッと我に帰り、口を開いた時にはもう遅かった。

 女の右拳が俺の顔面に、そして女の左拳が瓔珞の顔面に激突する。

 ほぼ満タンに近かった体力バーは、一気に無くなり、l()o()s()e()という文字が視界いっぱいに広がる。


「お前ら、戻ってきたら覚悟し・と・け・よ?」


 女が、そう言ったのを最後に、俺の意識は消えていく。

いやー、最近暑過ぎませんか? もう、冷房ギャンギャンに付けてます笑



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