表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日常の大切さは終わった時に気づくもの  作者: KINOKO
第5章 ようこそ、国立神対策高等学校へ
122/167

入学式、終演

「こ、国王!? 何でそんな大物が、神高の学長に就任したんだ!?」


 妖獣界の国王、いや壊滅したと言われる妖獣界なのだから、元国王と言った方が良いのだろうか。

 だが、何でそんな大物が、わざわざ神高の学長とか言う面倒なことをしているのだ?


「私に聞かれても分かりませんよ! しかも、あの姿、きっと誰かと契約をしています」


「何だと!? それは、本当かミツレ!」


 ミツレが、()()という言葉を出した瞬間に、坂田が食いついた。


「えぇ、サトリとしてのあの人の姿は、真っ白な雪のような肌をし、目が三つありました。ですが、その特徴的な三つ目の眼が無いと言うことは、私や流風と同様に契約をして、人間界で馴染める姿を手に入れたという事です。まぁ、私も声と青髪でサトリだと気づいたのですが…………………」


 ミツレも、初めて会った時は九本の尻尾を生やし、キツネのような耳が頭に生えていたな。

 そして契約とは、人間は神に対抗する力を身につけるのに対して、妖獣は人間界で住めるような姿を手に入れられるというものだ。

 つまり、今のサトリは何者かと契約をしているという事だろう。


「うぅむ、契約をしているとなると神対策局の本部に登録をしなければならないはずなのだがな…………… しかも、サトリ程の大物が契約をしたとなると、噂話にもなって良いはずなのだがな」


「うん、そうだな。いつ、何処で、何のために契約を、したのかは本人しか分からないが、契約をしたとなると噂話ぐらいは持ち上がるはず」


 確かに、坂田と流風の言う通りだ。国王であるサトリ、彼のような大物が契約をしたとなると、嫌でも噂話になるはずだ。

 だが、現実はどうだ? そう、噂話すらはならなかったのだ。契約をした事を秘密にするのは、重罪だと坂田から聞いたことがあるし、サトリの立場上、犯罪を犯すとは思えない。


「ゴッホン! あー、静かにしてくださいよぉ…………… ちゃんと、話をしますから。まぁ、私からでは無いですけどね」


 サトリの咳払いと、泣き真似をする仕草で辺りは静まり返る。何だろう、この人には謎のカリスマ性みたいなものがある気がする。


「では、次は四頂家の方達からの挨拶です」


 ()()()という単語で、辺り全体がピリついた。

 事前に配られておいた、入学式の日程表にもちゃんと書かれてはいたが、その名を聞くだけで背筋に嫌な感じが流れる。

 だが、この感じは会場にいる全ての人が感じるものだろう。その証拠に、誰1人とせず騒いだりしていないからだ。


「では、どうぞ!」


 サトリがそう言うと、体育館の奥の扉の音が開く音が聞こえた。それと同時に、辺りからは拍手が飛び交う。もちろん、俺やミツレも拍手を送る。

 ずっと、前を向いているので、後ろの扉から入ってきた四項家の顔は見ることができない。

 だが、足音で徐々に近づいてきていると言うことがよく分かる。


「皆さま、お忙しい中、集まっていただき大変ありがとうございました」


 サトリがそう言うと、会場にいる人たちの拍手は鳴り止む。そして、俺たち生徒や保護者が座っているパイプ椅子ではなく、フカフカで触り心地が良さそうな椅子に、座っている3人の男の姿が視界に入ってきた。


「フン! ワシは行くのはめんどくさかった。せやけど、一神がやかましいから来てやったんや」


 深い緑色の和服を身につけ、がっしりとした体型の白く長い髭を顎に蓄えた老人がそう言う。

 片手には、()()と書かれた扇子を持っており、それをパタパタと仰いでいる。


「それは、僕も同感だ。二皇(じおう)の気持ちはよく分かる。正直、こんな奴らの入学式だが何だかは知らないが、めんどくさすぎる」


 黒スーツに丸メガネをしている細身の男が、ため息混じりにそう言う。

 丸メガネの素材が、金属製のシルバーだからか、冷たい印象を辺りに与える。


「ガハハハハハハハ! 四川(しかわ)、ワレとは話が合うわい! 三門の奴は、病欠らしいが羨ましいのぅ!」


 二皇と四川の2人は、この場所には今はいないが三門と一緒で、俺たちを低い身分の生き物だと思っているような口ぶりだ。

 まぁ、四項家らしいとは言えるけどな……………


「二皇、四川、ここは祝いの場なのだから、少しは慎まないかい?」


 二皇と四川が、俺たちに聞こえるかのように、下民がどうだとか言っていた、その時だった。

 低い、いや深海のように深いその声が辺りに広がった。その声音は、マグマのような激しい怒りではなかった。

 だが、深海のように深く、そして突風が吹いたかのような一瞬の怒りの声だった。

 

 この瞬間、俺は何故か目を伏せてしまった。分からない、分からないが、生物としての本能的に()には勝てないと思ってしまったのだ。


「ぬ………… 一神、オノレが言うなら黙ろう」


「少し騒ぎ過ぎてしまった。申し訳ない」


 二皇と四川は軽く咳払いをして姿勢を正す。そして、彼、いや()()は2人のように椅子に座るのではなく、壇上に上がる。


「で、では、四項家を代表して、一神家当主、一神様の挨拶です!」


 少し、ドギマギしながら雪落はマイクを一神に手渡す。そして、マイクを受け取った一神は、会場に集まったすべての人たちの目を見る。


「初めまして、神殺しの卵たち。私は、四項家の一つ、一神家の当主を務めている一神胡椎(こづち)だ。」


 ニコっと笑う一神は、まるで太陽のようだ。他の四項家である二皇、三門、そして四川とは違って、この人だけは四項家なのに、俺たちの事を下民とは言ったりしない。

 この人が、国のトップであるだけ、まだマシなのかもしれないな。


「私から話す事はあまり無いが、これからの時代を担う君たちには、私はとても期待しているよ」


 一神、彼は何て素晴らしい人なのだろうか。普通、四項家という何不自由のない身分で生まれ、四項家以外の人間は下民だと幼い頃から教わってきたのなら、腐れ外道になるはずだ。

 なのに、彼はここまで真っ直ぐで太陽のように明るい人だ。四項家とか以前に、彼は人間として素晴らしい。


「じゃ、私の話はこれで終わりかな。はい、マイク」


「あ、ありがとうございます。では、皆さん! 四項家の方達に盛大な拍手を!」


 雪落が、そう言うと辺りから拍手が飛び交う。一神は、少し照れてるのか顔を少しだけ赤らめて、手を振りながら壇上から降りる。


「では、次は本学の学習形態についてです」








 そうして、説明や来賓の挨拶などで、入学式は終わった。明日、クラスが発表などされるらしい。


「ふぅ、明日からは高校生か………………」


 今、俺は自室の窓からボーッと夜空を眺めている。入学式は午前で終わり、その後は先輩や坂田達と入学パーティをしたため、身体が疲れてしまった。


「それにしても、ここまで来るのには長い道のりだったなぁ」


 神という存在を知ってから、俺の人生は大幅に変わったと思う。


「神と出会ってからツライ事ばかりだった………………」


 あの日、オシリスが来なかったら仁や俺の家族は助かっていたかもしれない。

 もし、俺は神と出会わなければ、俺の未来は変わっていたのかもしれない。


「いや、ツライ事ばかりではなかったかもな」


 ツライ事や痛い事などが思い出されたが、それと同時に楽しい事も頭によぎる。

 ミツレや流風、氷華、そして先輩達や坂田との出会い。これらは、神と出会わなければ絶対に起きなかった出来事だ。


「これから、俺はどうなるんだろうな。なぁ、仁………………」


 俺は、仁から貰ったストラップをギュッと握りしめる。


「フッ………………あまり、考え過ぎるのも俺らしく無いかもな。明日は早いから、もう寝よう」


 先のことは、誰にだって分からない。考えるぐらいなら、考えない方がマシだろう。

 気づいたら、俺の瞼はゆっくりと閉ざされて、夢の世界に飛ばされていた。


 

 ここから、日常を取り戻す物語の始まりだとは、少年は何も知らない。


 新章、着々と頭に構想が練られてきましたっ! ここからどうなるかは、登場人物達に丸投げの作者ですが、彼らの行く末には着いていきたい所存です。


 それはそうと、ジョジョ6部のアニメ化決定しましたね! いやー、マジで嬉しいです


 では、皆さん、アリーデヴェルチ!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ